ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ICTで入試が変わる?東洋大学のWeb体験型入試について

Twitterには少し紹介したのですが、ICT関連で少し興味が惹かれる記事があったので、二つほど簡単に紹介します。

ict-enews.net

東洋大学がネット環境を用いて、自宅受験を選択肢に挙げてきたというニュースです。

受験を大きく変えるきっかけとなるか?

上に紹介した記事では、以下のようなことが紹介されている。

東洋大学は1日、2017年度に開設する新学部「情報連携学部」「国際学部」の公募制推薦(AO型推薦入試)に、試験プロセスを一貫してインターネットで行う「Web体験授業型入試」を実施すると発表した。事前課題の視聴から面接までの試験プロセスを一貫してインターネットで行う入試は日本初という。(2016/09/01/21時確認)

一体どういうことなのかを詳しく調べてみると、東洋大の以下のサイトに要項がアップされていた。

www.toyo.ac.jp

これを見るとわかりやすいが「指定されたWeb体験授業を視聴」→「課題の解決法を調べ、考察する」→「試験当日は、自宅or大学で自らの考えを発表」という流れで受験が行われるそうだ。

実際に、上記のサイトにアクセスしてもらうと、受験生でなくても入試の課題動画について見ることができるので、興味がある方はぜひ見てもらいたい。

おそらく東洋大学はスーパーグローバル大学指定校であるため、その事業の一環として行われているのだろうと思うが、この入試が始まったことには、非常に大きな意味があるように感じる。

知識を詰め込みの入試からの脱却

この入試は授業動画を視聴した後に、その内容について指示された課題を回答するという内容のものだが、これは明らかに「正解のある問題」に答える力を試すものから「正解のない問い」を考える力を試すものへの転換である。

今までも、国公立のAOや推薦入試では、このようなかなり準備させる入試を行っていた大学もあるが、私立ではここまで徹底して「考える力」を試す入試はほとんどない。

そのため、母体の小さい国公立大学の受験者数に対して、それなりの数が受験するであろう東洋大学で、このように一人一人を丁寧に評価して、合否を決めるという入試を始めたことに非常に大きな衝撃を受けている。

数年前に京都大学の入試で携帯電話を使ったカンニングが世間を騒がせたが、この入試ではそもそもカンニングというものは存在しない(剽窃は…ありえるでしょうが、さすがに弾くだろう)。

高校の現場の教員がともすれば「まずは基本的な知識を覚えろ」「覚えること覚えないのに探究とかない」というような言い方をするのに対して、大学のほうが「こういう人材が欲しい」という意思表示をしてきたということです。

大学が変わろうとしている以上、高校の教員はどの方向に舵を切っていくことになるのだろうか。 

2020年の大学入試問題 (講談社現代新書)

2020年の大学入試問題 (講談社現代新書)

 

アドミッションポリシーに基づく入試の現実化

このような入試を行うためには、どうしてもアドミッションポリシーを定めなければ、欲しい人材を選ぶことはできない

したがって、このような入試を行うということは、現在の高大接続の中で出てきている「アドミッションポリシーに基づく選抜」の先駆けとなるとなるのだ。ある意味で、今後、このような入試に続く大学が出てくる可能性もあるし、ある程度、今回の入試がモデルケースとして広まっていく可能性もある。

たとえば、英語の授業を視聴させて、それについて課題に答えさえるということは、明らかに「英語をある程度使える生徒が欲しい」という大学側のメッセージであるし、それぞれの講義の動画についても、学部の特色がよく出ているもののように感じます。

このような大学側のメッセージに対して高校教員はどのような指導をするのだろう?

こうなってくると、アドミッションポリシーだけではなく、カリキュラムポリシーやディプロマポリシーまで読んで、さらにはこの課題動画にや課題に対して教員なりの答えを出してから指導に臨まなければ、大学の要求するような水準の指導はできないのではないか

でも、実際の教員は、生徒の課題の添削だけして満足しそうな人が多(自主規制)。

本格的なICTの活用→場所の超越

今回の入試の売りの一つに「自宅ですべて受験できる」ということがあるようですが、これは表面的に見れば、地方の学生を受験生として獲得するというような経営上の戦略にも見えますが、一方で、インターネットの性質を考えれば、もっと大きな意味があるように感じます。

インターネットの本領は、場所を超越する、グローバルに展開することができるということにあるわけですから、日本国内に限らず、海外からの受験生も集めることができるようになるということです。

つまり、この入試は、日本人だけを相手に大学の門戸を開くのではなく、全世界から学生を集めるために必要な入試の形態のプロトタイプとしての意味があるように感じます。

技術的な面がクリアされ、選抜のノウハウが蓄積されていったとき、このような入試を実践している大学は、少子化の中での競争から抜け出すことができるわけです。

これは優秀な学生を集めたい私立としては、一石二鳥の戦略になるわけですから、東洋大学の入試が上手くいったときには、この形態の入試に続く大学は、一流大学ほど増えるのではないかと感じます。

そうなったら、日本人の子どもは、いよいよ、グローバルな入試競争にさらされることにもなるのです。

そのような状況が目の前に迫りつつあるように感じるのですが、それは単なる言いすぎでしょうか?また、もしそのような状況になったとき、高校の教員は子どもになにを教えられるのだろう?

大コケするかもしれないけれども

実際、新しいものを嫌う人が多いので、どのくらい受験生が集まるかも不明ですし、受験生を集めてみたけれども、数年後の出口の段階で期待外れの結果に終わるかもしれません。

しかし、スーパーグローバル大学の東洋大学がこのような入試を始めたことは、高大接続改革の流れを受けているように考えざるを得ません。

どのような結果になるかは、やってみるまで分からないというのが正直なところでしょう。しかし、たとえば、去年の学研主催の高校教育フォーラムで首都大学のゼミナール入試についてのご講演がありましたが、そこでは首都大学のゼミナール入試での入学者の能力の高さが強調されていました。

大きな入試改革の流れを受けて、今後、どのようになっていくのかが楽しみなところです。

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