ならずものになろう

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【授業の小ネタ】「女か虎か」は続き物語の創作の題材に使える

tiger

授業の小ネタシリーズ。「羅生門」の指導実践を見ていると「続き物語」を書かせる実践が結構あるので、「続き物語」の授業について少し書きたくなった。

今回は、あまり周囲に知っている人がいないけど、やってみると面白い題材として、ストックトンの「女か虎か」という作品を紹介します。 

謎の物語 (ちくま文庫)

謎の物語 (ちくま文庫)

 

実はネットで検索すると日本語訳されたものがあったり……。リンクは貼りませんが、気になる方はお探しください。

授業として楽しい「続き物語」の創作

「続き物語」を創作する「書くこと」の実践は校種や学年を問わず、結構、色々と紹介されている。

例えば高校であれば次の本に「羅生門」の続き物語を書くことの実践が紹介されている。 

高等学校国語科 授業実践報告集 現代文編I: 小説編

高等学校国語科 授業実践報告集 現代文編I: 小説編

 

他にも2015年の国語教育学会国語教育全国大会のテーマ別分科会で筑波大学付属高校の赤松幸紀先生が報告されている*1のを見たりしているので、実践としてはなじみがある。

総じて「続き物語」の実践報告で言われるのは「書くことが楽しいという反応が得られる」ということだ。

確かに「どのように読むのか」ということを細かく言われる授業や「書くべきことがよくわからない」という作文の授業などに比べると、物語を自由に自分で読むことができ、色々な想像を膨らませることは生徒にとって楽しいことだし、「書くべきこと」が物語を題材にして見つけ出すことができるから、完全に放任される作文とは違って書きやすいので、ぱっと提示されたときに生徒からの反応はよいことが多い。

どんな題材でやるか

では、続き物語の創作をやってみようかと思うと、意外と続きが書けそうな題材は多くない。たとえば、困ったときの国語教育総合事典*2を見ると、続き物語の実践例としては「ごんぎつね」の続きを書くということしか載っていない。

まあ、どんな物語でもやろうと思えば自由にできるのだけど、やっぱりそれなりに文章自体に続きを書きたくなるような要素がないと生徒が食いついてこないのも事実である。

そこで自分がお勧めしたいのが「リドルストーリー」と呼ばれる種類の文章だ。上でも紹介した謎の物語 (ちくま文庫)はリドルストーリーのアンソロジーであるので、この本の中から好きなものを選んでやってみていいとは思うが、その中でも自分は「女か虎か」をおススメしたい。

なぜ「女か虎か」がおススメなのか

リドルストーリーとは、続きが明示されないで読者の想像に結末が委ねられている物語の型のことだ。例えば、芥川龍之介の「藪の中」はリドルストーリーの例として挙げられることが多い*3

まず、続き物語を書くのであれば「続きを想像することが自然な文章」を読ませて書かせる方が指導としては自然だ。完結しているものを無理やり続きを書こうというのはやや蛇足な感じが否めないし、生徒にも「なぜ書くのか」という思いを抱かせやすい。

しかし、リドルストーリーであれば、「結末を想像する」ということは自然なことであり、各人が「どのように結末を想像したのか」を文章に起こし、交流したいと思うのは自然なことだ。

だから、続き物語を書くということであれば、リドルストーリーを素材にすると授業の組み立てとして非常にスムーズになる。

また、数あるストーリーのうち、「女か虎か」を自分がおススメする理由としては、物語の長さが手ごろであることやストーリーが面白いことも勿論あるのですが、それとは別にこのストーリーが「クラスの中で男女での意見の差が大きくて議論が盛り上がる」ということがある(笑)

ジェンダーとしてどうなのかというご批判はよく分かりますので、その点については一切反論の余地はありませんが、やはりストーリー自体が男女の恋愛観の違いということもあって、生徒に読んでもらったときに男女で考えていることや書いてくることが大きく違うのは、やはり議論として盛り上がる。

話し合いたいと思わせる力がある素材は貴重なので、ぜひうまく使いたいところです。

実践例

自分が「女か虎か」を使ってどのようなことを授業したか簡単に書いておくと…

その①

初発の感想を一切交流させないで、いきなり創作に入ってもらい、書いてきたものを交流。その上でお互いの考えの違いや本文の根拠を確認し合い、リライトして提出したものを冊子にする。

その②

本文の内容について「疑問点」や「面白かったこと」などをワールドカフェ方式で交流させ、出来上がった模造紙の内容を見ながら、続き物語のプロットをグループで考え、物語を創作。

こちらは読む力が高くないクラスで協働して書くことを経験してもらうためにやった方法。

どちらの方法でもそれなりに楽しく生徒は取り組んでくれました。授業の組み立てというよりも、物語が読んでみたい、書いてみたいという力があるのがよい。

あとはジグソー法などでたとえば「男の立場から見えること」「王女の性格」「女の態度」などをエキスパート活動させてジグソー活動させてみても面白い。

ただし「続く物語」を書くことは…

これだけ持ち上げておいて落とすようなことを言って申し訳ないのだけど、続き物語を書く……という作業は、案外、上手くいかないことが多い。

というのも、食いつきはいいのだけど、実際に物語を書き始めると情景描写のネタが尽きたり文末が単調になったりと書いているうちに生徒は飽きてくる(笑)

また、実は「続き物語」を書くためには物語世界をかなり踏み込んで理解していないと本家本元の文章のほうがある意味がなくなったり、結局、蛇足な話で終わったりと書きあげるまで仕上げるのがなかなか大変になる。

だから、自分が「女か虎か」をやるときは一時間完結の考査後のつなぎの授業など、あっさりと終わらせることにしている。あくまで書くことを楽しんでもらったり意見を交流してもらうのを楽しんでもらったりと、場づくり的な意味が大きい。

本気で「書くこと」や「読むこと」の指導としてやろうと思うのであれば、上で紹介したような雑な交流の方法でやると途中で詰まるので、そのあたりはお考え下さい。

*1:日本国語教育学会主催第78回日本国語教育全国大会 校種別分科会18高等学校「書くこと」「自己・他者評価を活かした「書くこと」の学習 ―生徒が意欲的に作文に取り組む場作りの試み―

*2:通称「人を殴り殺せそうなアレ」

*3:逆に言えば「羅生門」はリドルストーリーとはあまり言われないで、あの結末で完結しているとも言えるだけに、続き物語書かせる実践は多いけど、個人的にはいいのかなと思う節はある。

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