ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

教員が読書案内を作ると…

The Poetry Shelf

個人的な趣味の授業ネタ。

この長期休業前には生徒向けの「読書案内」を作成して配布しています。

もちろん、狙いとしては、時間があるときに多少でも本を読んで欲しいという願いからなのですが、その一方でこの作業を続けていることで自分にとってもメリットがあるのです。

教員の薦める本を生徒は読むだろうか

まず、前提的なお話として、労力をかけて読書案内を作ったところで生徒はその読書案内で薦められている本を読むだろうかということについて明確に答えておこう。

もう、答えは単純で「労力に見合うほど生徒は薦めた本を読みはしない」ということで間違いないだろう。

ちなみに、自分はOffice Publisherを利用して作っています。Publisherが一番、レイアウトを簡単に調整できるので好きですが、別にWordやPowerPointでも作れます。例えば次のようなサイトにテンプレートがあります。

www.matsuo-print.com

テンプレートを使えば、作成自体の手間はそれほどかかりませんが、「生徒に薦める本」を選んだり紹介文を考えたりするのは、それなりの手間がかかります。

しかしながら、それだけ手間をかけても生徒は薦めた本を読んではくれません。選んだ本が悪いとか紹介文が悪いとかの問題はあるかもしれないけど(笑)

もちろん、興味は持ってくれますが、実際に図書室に行って借りて読んでみたり本屋で買ってみたりはなかなかしてくれません。

なぜ、教員の薦める本を読もうとしないのかを考えると、いくつか理由があるように思う。第一に、「わざわざ」本を手元に手に入れるための努力のハードルが高いということだ。薦められて面白そうだとは思うものの、その興味関心が授業の外まではなかなか持続しない。逆に言えば、教室にすぐに手元にとれるように準備しておくと、こちらが意外に思うような生徒までもチャレンジして紹介した本を読もうとしてくれる。

第二に、物理的に忙しすぎて本を読んでいる暇がないということがある。聞いた話によるとこの年末にわざわざ合宿をするような部活もあるそうで……一日中部活で拘束されては何も自分のことはできないだろうよ……。

第三に、宿題に追われている…。本を読む余裕すらも奪う量の宿題を課すのってどうなのかしらね…。

まあ、のんきに趣味的に読書案内を作って渡しても「そんな暇はねえよ!」と生徒の方から襲われそうな感じではあるが、それでも、読書案内を作ることにちょっとした意味はあると思っている。

読書案内を作るメリット

せっかく薦めても読んでもらえないのに、読書案内を作る意味はあるのだろうか。

これについては「ある」とはっきりと答えておきたい。

第一に、「選書」は生徒にとってはハードルの高い作業であるだけに、今は、読まれなかったとしても継続的に読書案内を渡し続けることで、時間があるときに生徒が本を読もうとしたときの助けになるかもしれないということだ。

第二に、いろいろなジャンルの本があることを知らせることで、生徒の興味関心を広く持たせることができるということだ。生徒が手に取る可能性が高い本はどうしても小説や新書に偏りがちだ。でも、実際には単行本などもあるし叢書なども場合によっては読むことになる。様々な種類やジャンルの本があることを伝える機会は多くないので、読書案内がきっかけになるといいなぁと思ったりもする。

第三に、こうやってまめに読書案内を出そうとすることで、「今、子どもたちがどのような本を読んでいるのか」ということを知ろうとすることや「どんな本であれば生徒が読んで楽しんでくれるのか」ということをかなり考えることになる。本を薦めるのは手間がかかる……とは言ったが、別にどんな本でもいいから書評を書いてパンフレットを作れと言われてもそれほど困らない。どんな本でもいいのであれば、読んでいる本の数はそれなりにあるから、適当に穴を埋めればいいだけだし。でも、子どもたちが読むかもしれない、手に取った時に意味がある本は何か、面白いと思ってもらえるか、今、読ませるべき本なのかということを考えるのは、生徒を直接指導しているからこそできる仕事だ。

第四に、そうやって生徒のアンテナにひっかかるような本を定期的に薦める姿を見せることで、大人が読書をしていることを子どもに示すことになっている。教員、大人自身が読書家としての手本を見せることで、読書に対して興味を持ってもらおうというのである。特に、生徒にあった本を選んでいくことで、一方的に押し付けるような読書をさせたいわけではなく、面白いから本を読むんだよというメッセージを伝えている……つもりである。

どの程度、効果があるかは調べたことがないし、調べる気がないからわからない。数字ベースで、貸出件数だとか見ると別に影響がないという結論にはなってしまうんだけど……それでも、読書をしているという姿勢やあなたたちの読書に興味があるんだよというメッセージを発し続けることととして、読書案内を作ることを続けていきたいと思う。

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