ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

生きる道を見失わないために学ぶのです

Careers Key

GW後半戦。疲労回復がてら、気楽に読める本を一冊読みました。 

働く大人のための「学び」の教科書

働く大人のための「学び」の教科書

 

一時間位で読める気楽さでありながら、内容としては非常に刺激的な一冊です。ぜひ、今からでもamazonで注文してもいいような(笑

学び続けることが必要な人生に

紹介するまでもないかもしれませんが、著者はキャリア研究で最近話題の中原淳先生です。

www.nakahara-lab.net

上のブログでも何度も話題になっていますが、人生100年時代になろうとしている今、たとえ大人であっても、自分の人生を考えて学び続ける必要に迫られている時代なのです。そんな時代に、いかにして「大人が学ぶか」ということに焦点を当てて書かれているのが本書です。

本書の中では人生のキャリアにおいて、新人として学び始める段階を「登山」とたとえ、ピークを超えてからのキャリアを「下山」に、そして再び学び直してその後の人生を進むことを「再登山」とたとえていますが、人生100年時代にその一連の流れがうまく言っていないことの指摘から本書は始まります。

仕事人生の長期化という未曾有の事態に面食らってしまい、下山途中に遭難する人であったり、再登山に躊躇する人が増えている(P.23)

まだまだ自分は登山の入り口にいる人間ですから、こう言われるとなかなか気の遠くなる話ですが、以前にも紹介しましたが、苅谷剛彦先生の『階層化日本と教育危機―不平等再生産から意欲格差社会(インセンティブ・ディバイド)へ』などでも、「否応がなく学び続けさせられる社会」になったのだという指摘はされており、現実的な話なのだろうと感じます。

さて、そんな時代に「失敗」する人間について、本書では鮮烈に一刀両断して、次のように定義しています。

学びなおすこと、変化することから逃げてしまった人(P.24)

学ぶことが「強制」されつつ世の中で、「学ぶことから逃げてしまう」ことがうまく行かなくなってしまう要因になるというのも恐ろしい話です。

誰にとっても変化は決して居心地のよいものではないのは事実でしょうし、学ぶためにかかる時間や費用は決して簡単なものではありません。しかし、本書ではそのコストについても、大人の学びを実践した人たちの感想をまとめて

「大人の学び」は「これまでの自分の常識を壊すもの」だからこそ「痛みをともなう」(P.131)

とはっきりと述べています。

他にも

大人が、新世代の子どもレベルに堕してしまわないためには、来し方を振り返り、未来を構想し、次のステージに自らを振り向ける。つまり、学び続けていくことが必要になる(P.45)

などのように、語り口は優しくても、要所要所に妥協のない厳しさが垣間見られるのが本書です。

大人の学びとはなにか

そんな「厳しい」本書が定義している「大人の学び」とは次のとおりです。

「大人の学び」とは「自ら行動するなかで経験を蓄積し、次の活躍の舞台に移行することを目指して変化すること」と定義します。(PP.28-29)

そして、この定義を満たすための方法論として「3つの原理原則」と「7つの行動」という考え方を紹介しています。

  • <原理原則1>背伸びの原理
  • <原理原則2>振り返りの原理
  • <原理原則3>つながりの原理

 

  • <行動1>タフアサイメント=タフな仕事から学ぶ
  • <行動2>本を1トン読む
  • <行動3>教えられて学ぶ
  • <行動4>越境する
  • <行動5>フィードバックを求める
  • <行動6>場をつくる
  • <行動7>教えてみる

それぞれの内容についてはぜひ本書をお読みください。例えば「本を1トン読む」などをはかなりインパクのある見出しだと思いますが、これは実は理詰めで考えていくと恐ろしく現実的な行動になっているんです。

一個一個がこれまでの中原先生の研究の知見を丁寧にわかりやすくまとめたものであるため、きちんと読み通すことで、かなり自分のキャリアについて考えることが増えるのではないでしょうか。

一箇所だけ、紹介しておきましょう。

まったくの思慮なく、押し寄せる雑事に自分の生き方を任せてしまうのは、不確実な世の中にあっては、「漂流」に他なりません。(P.73) 

この言葉にピンとくるのであれば、本書の「原理原則」と「行動」の解説に必ずピンとくるはずです。

行動こそが自分を作るのだ

本書の末章は実際に「大人の学び」によって自らのキャリアを大きく変えた人の「学びの履歴書」が紹介されています。

その中で最も印象に残った言葉を紹介します。

卒業した大学院で毎年、学びのフォーラムがあるのですが、後輩たち向けのスピーカーを頼まれるようになりました。学生の立場だった頃は「あちら側の人間だ」と感じていた立場になったのです。なってみて思うのは、「こちら側・あちら側」の違いは、能力的な差ではないということ。「決めて、動いたかどうか」だけです。(PP.167-168)

能力ではなく行動。

これだけでも自分が今すぐに行動することについて躊躇する必要がないと思いませんか?

また、本書では「越境」という言葉もよく出てきます。学ぼうとするときに、自分の今いる場所だけではなく、もっと遠くへ、本当に自分が学べる環境を得ようと行動することができるかどうか。

「越境」という意味では、今は非常によい時代です。オンラインの時代ですから、いくらでも自分の物理的な制約を超えて学ぶことができるはずです。

昨日、たまたまこんなツイートしましたけど、実は、ブログを書いていることで「越境」してつながりを得ることが出来たので、こんなツイートをしてみたのです。

本当に、自分さえ行動すれば、あっという間に何かを学びに向けることができるのだなぁと思います。

保護者会にもおすすめかも?

この本は大人であれば誰にでもおすすめですが、学校の教員としては保護者会で紹介してみても面白いかなぁと思います。

つまり、今の子どもたちが、将来どのような社会を生きていくのかということをうまく描いている側面があるので、そこのイメージを共有してもらい、学校での勉強のあり方や子どもたちの進路のあり方について、「固定概念」を超えていくビジョンを共有できないかなぁと思うのです。

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