ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

「普通」を疑う力

Mignot, New York Historical Society

今日から授業再開。なぜか生徒がだるそうにしているのが不思議でならないけど、とにかく授業再開です。

高校三年生の現代文の授業となれば、「当たり前」を次から次へと破壊されていくものなのです。

普通に居直らないこと

普通を、当たり前を見直すことに強力なツールが社会学である。

「あたりまえ」を疑う社会学 質的調査のセンス (光文社新書)

「あたりまえ」を疑う社会学 質的調査のセンス (光文社新書)

 

この本はフィールドワークでの「研究される」側と「研究する」側の二元論に真正面から楔を入れることから始まる。そして、フィールドワークで色々な情報を集め、向き合っていくことで、人びとの「生きられた場」に絡めとられていくことの意義を説く。

そうして、客観性を標榜しながらも、実はその「生きられた場」の部外者として、その「研究対象」を固定概念で見たり見下したりしかねない態度を穿っているのである。

そうしてそれぞれの場に「はいりこむ」とは何か、「聞き取る」とはどういう行為なのかなど、様々な側面から説明していき、人間が完全に独立して誰にも影響を与えない「透明人間」のような人間像はありえないのだと説く。

そうして、その「社会学」が可能とする視点は、我々が普段の生活において「普通」であることに固執し、「普通でない」ことに対して無自覚に冷酷であることを指摘する。

そして最終章で「「普通であること」に居直らない」ということを、それぞれの読者に語りかけるのである。

どれだけのものが見えるようになるのだろう

言葉が世界のあり方を規定するなんて言語論的転回のようなことを持ちだすのも雑な話であるけど、高校三年間の現代文を通じて言葉や概念を知ることで、子どもたちが見えるようになることは少なくない。

というか、現代文という科目を教える時に、用語や概念を教えることを避けられない部分はある。こういう問題集があるくらいだしね。

読解 評論文キーワード:頻出225語&テーマ理解&読解演習50題

読解 評論文キーワード:頻出225語&テーマ理解&読解演習50題

 

現代文の授業を通じて、言葉や概念を獲得していくことで、自分たちの生きている用の中に対する見方が問い直されていくのである。

しかし、その過程は決して簡単な話ではない。授業者の方が偉そうに「これって近代合理主義だよー」なんて教えたところで、実感のない言葉は上滑りしていき、結局、当事者として社会の中に入り込むことができない。

どうか、彼らの勉強が、受験勉強であっても、社会に対して距離を置き、他人事のように無味乾燥な意味を覚えていくだけのような勉強にならないことに十分に留意して、授業をしなければいけないと感じる。

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