ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

文科省「放課後等の学習支援活動におけるICT活用事例集」を読んで

ICT教育が話題として盛んに出ていますが、今日も文科省から出された「

放課後等の学習支援活動におけるICT活用事例集 (PDF)」が各所で話題になっています。早速、自分も読んでみたので、その内容について、自分の見聞きしていることと併せて感想を書いておこう。

 導入の経緯と狙いが重要

こういう資料を読むと、どうして「どういう成果が出たのか」とか「費用はどの程度かかったのか」とか「今日ンの負担はどうか」などに目が行きがちなのだけど、やはり、事例の効果や意義を正確に理解するためには、導入の経緯や狙いを見る必要があるだろう。

今回の資料については、7つの事例が挙げられているが、その事例の導入の経緯を読んでみると大きく分けて二つに分けられそうだ。

一つ目が「山間地などであるため遠隔地の学習支援が必要だった」ということ。

地方であるため、指導をするのが教員だけでは手が足りないため、ボランティアの指導員に頼ることになるが、やはり専門家でないボランティアの指導の質を保つことは難しい。しかし、ICTを活用することにより、時間や場所を問わずにプロの授業の動画を見たり質問ができたりすることでそのような問題の解決を狙うというものだ。

二つ目が「各種調査で学力低下や勉強時間の短さの対策が必要だったから」ということ。

この観点は、ある意味、一番、世間の耳目を集めることだろう。ICTを導入することで、子どもの学力の改善や学習習慣の定着が図れるかどうか、改善が狙えるとすれば、どのような方法が有効であるのか、そのような観点である。

この二つのうち、前者については、地域的な問題点の改善と直接的に結びついているために、狙いや運営の方法についても比較的明確である。

しかし、二つ目については、どこかの地域に限定される話題ではなく、ICT導入のお題目として掲げやすいものである。そのため、ややもすると「ICTによって学力向上する」という言い方にすり替わりやすいことには注意が必要だろう。

どんな効果があるのか

親切なことに資料のP.4を見ると次のようなことが書いてある。

まず、狙いの一つ目にかかわるものが以下の通り。

指導経験がない支援員でも学習支援できます

児童生徒の学力レベルを判定する診断機能や
学習履歴管理機能、プロ講師による講義動画等を
活用することにより、指導経験がない支援員が
中心でも学習支援を行うことができます。

また、二つ目の狙いにかかわるものが以下の通り。

学習状況の把握が容易になります

管理者用の画面で学習履歴やつまづきのポイントなどが確認できる教材もあり、児童生徒の学習状況を一元的に把握することができます。

これはICTの強みであるのは間違いない。単純なテストの結果の記録の蓄積ということに始まり、勉強時間の類型や教科ごとのバランスなども簡単に見える化されるため、教員のほうも一目瞭然であるし、勉強するほうもモチベーションが上がりやすいだろう。

また、間違った問題を中心に復習問題を繰り返し出題するなどの機能もあるため、個別のニーズにも応えやすいのも特徴だろう。「すらら」には「問題が解けない原因」を自動的に判定し、問題を選ぶ機能などもあるため、今まで教師が経験則によって、時間をかけて個別に指示していたことが、完全に自動化される。

こうなってくると、教室で子どもに対して一斉に授業することの効率の悪さが気になってくるところでもある。

自ら学ぶ力が向上します

個のレベルにあった教材を自分のペースで学ぶことができるため、学習意欲が低い児童生徒でも学習習慣が身につきやすく、自ら学ぶ力が向上します。

集中力が持続します

正解するとポイント等が得られるゲーム的な要素があったり、問題の解説がすぐに動画で確認できることなどによって、児童生徒の集中力が持続します。

この二つについては、鵜呑みにすのは、やや問題があるように感じる。どちらも、取り組んでいる団体の報告に基づいているが、その判断については、割と主観的にである。

動画を見ている姿やゲーミフィケーションされたアプリに熱中して学習していること自体は悪いことではないが、それが一般的な学習習慣や集中力にまで適応できるかというと「?」である。

特に「学習習慣が身につく」、「自ら学ぶ力が向上」というのは、かなり飛躍した表現に思える。

道具があっても…

こうやってICTのよい報告が出ると、つい安易に「ICT化するべきだ」という話が出てきやすいのだけど、この報告書にもあるように、「狙いと工夫と課題」の三点セットはよく確認しておきたい。

まず間違いなく、タブレットとアカウントを与えて「あとはやっておきなさい」で導入したら失敗する。わざわざ自分の時間を削ってまで、つまらない中途半端な勉強の動画やアプリは使うまい。ポケモンGO!には勝てません。

この報告書が「放課後等」のように、かなり限定的な導入の仕方であるし、人員も手間も割いている。

何がやりたいのかを明確にしてやらないと、安い中華パッドを買い与えて、こういうサービスが重くて動かないなんて笑えない話も…。

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