ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

生徒が要約が書けない理由は

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二学期の授業がいよいよ稼働し始めているのですが、この二学期のテーマは「見通しをもって実行できるようになる」ということを掲げています。

そのための第一歩として、様々な活動の中で必要とされていく「要約」についての指導を開始しました。今後、「話すこと・聞くこと」にせよ「書くこと」にせよ、何か資料を読み、自分の活用しやすいようにまとめていくという技術は必要になる。

これが予想通りというべきか、なかなか苦戦しているのです。

実はそれほど要約についての指導はされていない? 

これは学校や教員によっての差が大きいので、一概にいうことはできないのだけれども、要約についてきちんと授業の中で時間をとって、要約について教えてもらったという経験を持っている生徒は少ない。

聞き取りレベルの話だけれども、要約と言えば、「単元の一番最初に先生から書けと言われて困った」ということや「単元のまとめとしてテスト勉強に書けと言われた」というようなことをよく聞く。

そうやって、「国語の勉強」=「要約を書く」というような意識が生徒にはあるようなのだけれども、その一方で「要約の手順を説明してもらったことがある」という生徒はほぼ皆無だった。

よくよく考えると、「国語の勉強は要約することだ」というイメージを子どもは抱いているのに「要約の仕方は教えてもらっていない」という状況は、矛盾していないか?(笑)

要約って実は指導は難しい?

いきなり唐突で申し訳ないのですが、要約の指導って自信ありますか?そもそも、要約と要旨って何が違うかってご存知ですか。私は知りません*1

とりあえず、困ったときに初めに見る次の本*2

国語教育総合事典

国語教育総合事典

 

この本を見ても「要約」と「要旨」が索引に一か所しかでてこない。本文の中でそんなに少なくはないはずなんだけど…。

まあ、これを使って調べてみても、すっきりとした答えは出てこないし、他にも 

国語教育指導用語辞典

国語教育指導用語辞典

 

などを使っても、どうも使い方に揺れがある感じが否めない*3

そんなこともあるせいか、半径二メートルを見渡してみても、あまり要約に対して一家言ある人が見当たらない。生徒の出してきたものを後出しじゃんけんでこねくり回わしているd(略)が、まあ、きちんと指導しているように見えないのです。

このあたり、作文指導史だとどうなっているのかは、個人的にはよく知らないので、どうなっているかは気になるところ。そのうち勉強しよう…。

少し前に『月刊国語教育』で要約特集がありました

まあ、今回の授業を始めるにあたって、そんな状況であるので、とりあえず、要約に関する本を探しました。…そもそも論から始めないと気持ち悪いのですが、とりあえず、今回は我慢。

すると、明治図書の『教育科学国語教育』の2014年10月号(通号778号)が要約指導の特集号でした。

色々と参考になるところはあります。富安慎吾先生・寺井正憲先生・中村孝一先生の巻頭言とか…。

授業に使えそうなこともありますが、まあ、はっきりしないなぁという感じはある。それよりも、むしろ、たった二年前だというのに、このころの『国語教育』はTOSSの話が半分くらい出てきているのに、すっかり今はTOSSの話が行方不明になっているということに驚くわけで……世の中の趨勢って恐ろしい。

生徒が要約を書けない理由

偉そうなタイトルで今日の記事を書き始めましたが、実は書けない理由については何となく自分の中に結論を初めからもっていた。

その理由と同じことを、実は前掲の『国語教育』No.778の巻頭言で富安慎吾先生が述べている。その一部を引用する。

要約に限らず、私たちは行為に際し、目的に沿って、適切な方法を選択し実行する必要がある。(中略)要約は文種や目的に応じて適切な方法が変わる。そのため、学習者自身が「何を」「何のために」要約するかを意識し、そのためにはどのような方法が適しているか(なぜその方法はよい方法なのか)ということを考えられるようにしたい。(P.5) 

つまり、要約のためには「何を」「何のために」という意識が必要であるのだが、どうしても教室という場所においては、この「目的意識」という点が要約指導では弱くなりやすい。すなわち「要約の力をつけるために要約の練習をする」という状況に陥ってしまうため、本来は「目的に応じて」適切さが変わるはずの要約が、「とにかく文章をまとめる」という無目的な作業になってしまいやすい。

この辺りの話は、別に要約に限った話ではない。  

www.s-locarno.com

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「活用」と「習得」の関係で考えなければいけないことでもあるし、そもそも「何のために」を提示できないような単元の立て方は良くないだろうな。

他のクラスと足並みをそろえるために、どうしても教科書の文章を題材に要約をやらなければいけないことや、そもそも授業数が少ないことを考えると、結構、この問題は根が深いし、対応が難しい。

授業の中でじっくりと要約を書かせる意味

そんな問題点を考えると、確かに授業で要約をやるよりも、適当に宿題で投げたものをまとめて点検した方が指導としては効率がよいような気がする。

しかし、それでも授業の中で要約を書く時間を取って、丁寧に何度も書き直す練習を、教室で教員と一緒にやる必要があると思う。

第一に、一緒に要約を書く過程を見せることで、情報を取捨選択する観点や何度も言葉選びを試している様子を見せることになるからだ。どうしても、添削だけしていると、試行錯誤を省いて答えだけ欲しがるからね…。

第二に、やはり要約が活用のために重要な能力であるとするなら、授業で全員に保証すべきものであるから。宿題でやってこいというのは乱暴なもんだよね。

そうなると、やっぱり教室の中でなぜ書くのかということが問題になるのだけれども……。なかなか難しい。

今回はやや見切り発車で始めているので、どうなることやら……。

*1:いや、厳密に言えば、調べる手立てもあるし、調べてはいるんだけど。腑に落ちないって話

*2:一家に一冊、職場に二冊くらい欲しい

*3:一応、この辞典の中の定義を簡単に紹介しておくと、「要約:文章や話の全体または全部を短くまとめること」、「要旨:特に説明・論説などの中心となる大事な内容」となっており、用法としては、要旨のほうが本文に忠実にかつ抽象的なイメージです。ただ、何度もいうけど、結構ブレている定義である。

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