ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

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【失敗しない!】この本なら大丈夫!アクティブ・ラーニングを考えるために読みたい本のまとめ【25冊+1冊】

最近、アクティブ・ラーニングと名前を冠する本が一気に増えて、どの本から読んだらいいのか分からなくなりつつあるように感じます。

また、一方でこのアクティブ・ラーニングブームに乗じて、アクティブ・ラーニング本が粗製乱造されている感も否めません。

そこで、自分が今まで読んだアクティブ・ラーニング本のうち、「この本であれば、誤解されることなくアクティブ・ラーニングを考えることができる」と思う本の一覧を、読みやすさ(★~★★★★★の五段階で、★の数が多いほど読みやすい)とあわせて紹介します。

あくまで、自分が読んだことのある本の中からのおススメの一覧であり、「あの本が入ってないぞボケぇ」とか言われても困ります。また、「考えるための本」であって、ノウハウ本を紹介するつもりはないので悪しからず。

アクティブ・ラーニング導入の背景に関する本 

ここでは「なぜ、アクティブ・ラーニングが必要とされるようになったのか」を説明している本を紹介します。

 2020年の大学入試問題

2020年の大学入試問題 (講談社現代新書)

2020年の大学入試問題 (講談社現代新書)

 

読みやすさ★★★★★。かえつ有明中高の校長先生の著書です。現在の入試問題なども例にしながら、保護者向けに説明しているので、教員にも読みやすいです。

親なら知っておきたい学歴の経済学 

親なら知っておきたい 学歴の経済学

親なら知っておきたい 学歴の経済学

 

読みやすさ★★★★★。『学び合い』で有名な西川純先生が、保護者向けに「現在の入試改革」で起こっていることとこれからの学校がどうなるかの説明を書いています。このブログでも以前に書評を書いているので、興味ある方はそちらも参考にしてください。

アクティブ・ラーニングとは何か

アクティブ・ラーニングとは何か (教育フォーラム)

アクティブ・ラーニングとは何か (教育フォーラム)

 

読みやすさ★★★★。昨年の「論点整理」よりも前の段階の書籍なので、やや議論が足りていない部分もあるが溝上慎一先生の寄稿や各教科の実践報告もあり、理論と実践のバランスが取れており、読みやすい。

東信堂「アクティブラーニング・シリーズ」全七巻

高等学校におけるアクティブラーニング 理論編 (アクティブラーニング・シリーズ)

高等学校におけるアクティブラーニング 理論編 (アクティブラーニング・シリーズ)

 

読みやすさ★★★。溝上慎一先生監修の「アクティブラーニング・シリーズ」全七巻。高等教育がメイン、中等教育がサブ、というような配分であるので、若干、高校・中学の教員には読みにくいかもしれないが、理論基盤は研究者が書いているだけあって相当に強固。今後の議論のスタートラインになるだろうシリーズ。

教員が読むならば、1巻、4巻、5巻の優先度が高く、余裕があるならば、3巻、7巻までは手を出しておきたい。

「これからの時代に求められる資質・能力の育成」とは 

「これからの時代に求められる資質・能力の育成」とは

「これからの時代に求められる資質・能力の育成」とは

 

読みやすさ★★★。昨年、公開された「論点整理」までの内容の解説やICTやESDなどの用語についての議論などもされているので、現在の議論を広く押さえるのに便利な一冊。

「アクティブ・ラーニング」を考える

「アクティブ・ラーニング」を考える

「アクティブ・ラーニング」を考える

 

読みやすさ★★。これは最近書評を書いたので、詳しくはそちらを見てもらいたい。「審議のまとめ」までの内容が書かれている本は、まだ少ないのでその意味でも重要。

 『資質・能力[理論編]』 

資質・能力[理論編] (国研ライブラリー)

資質・能力[理論編] (国研ライブラリー)

 

読みやすさ★★。国際的な学力調査や海外での学力の定義の議論や日本の公文書でまとめられている学力についてまとめて整理している一冊。ここまで、語句の定義を読もうと思うと、実践からは離れていくので、結構、骨は折れるところ。

今求められる学力と学びとは―コンピテンシー・ベースのカリキュラムの光と影  

読みやすさ★★。これも「論点整理」よりも前の書籍であるが、根本的に海外との比較や評価との関係で「コンピテンシー」について論じている本であり、参照しておきたい本である。ブックレットなのでページ数は多くないが、内容は濃い。 

アクティブラーニングと教授学習パラダイムの転換

アクティブラーニングと教授学習パラダイムの転換

アクティブラーニングと教授学習パラダイムの転換

 

読みやすさ★。ここまでくるともはや研究書であり、実践からはかなり離れる。現場の教員にとっては、「明日、すぐに役に立つ」という類の本ではないので、読みにくいし、時間ばかりかかるかもしれない。しかし、「どうしてアクティブラーニングでなければならないのか」ということを根本的に考えるにはここまで遡らなければならないとは思う。

ディープ・アクティブラーニング

ディープ・アクティブラーニング

ディープ・アクティブラーニング

 

読みやすさ★。これも上の本と同じく、現場の教員が読むには骨が折れるし、直接的には役には立たない。だが、本気で「アクティブ・ラーニングで成果を上げる」ことを考えるのであれば、これは読んでおきたい。「アクティブ・ラーニングでは基礎がおろそかになる」などの根強い根拠の薄い批判があるので、どうしても「ディープ・アクティブラーニング」という視点は必要になる。

高校・大学から仕事へのトランジション―変容する能力・アイデンティティと教育

高校・大学から仕事へのトランジション―変容する能力・アイデンティティと教育

高校・大学から仕事へのトランジション―変容する能力・アイデンティティと教育

 

読みやすさ★。どうして中等教育で「アクティブ・ラーニング」をしなければならないのかに答える一冊。「大学でやればいい」ではダメだということがデータで理解できる。ただし、やはり読むのは骨が折れるので、簡単にはおススメできない。

どんな高校生が大学、社会で成長するのか―「学校と社会をつなぐ調査」からわかった伸びる高校生のタイプ

どんな高校生が大学、社会で成長するのか―「学校と社会をつなぐ調査」からわかった伸びる高校生のタイプ

どんな高校生が大学、社会で成長するのか―「学校と社会をつなぐ調査」からわかった伸びる高校生のタイプ

  • 作者: 溝上慎一,京都大学高等教育研究開発推進センター,河合塾
  • 出版社/メーカー: 学事出版
  • 発売日: 2015/07/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログ (1件) を見る
 

読みやすさ★。トランジションの観点から経年的に行っている調査の報告。やはり読むのは骨が折れるが、どんな観点を授業のアクティブ・ラーニングでやればよいかを考えるときに参照しやすい。

アクティブ・ラーニングの授業の導入に関する本

アクティブ・ラーニングを授業で実際にやってみようという際に役立つ本を紹介します。ただ、実際、上で紹介した理論編を読めば、実践の手法の本に頼らなくても、手持ちの教材を工夫したり、授業の構成を工夫したりすることで、十分にアクティブ・ラーニングができると思うので、それほど数は多く紹介しません。

なお、アクティブ・ラーニングが導入される経緯についての説明に問題がある本や説明がないものは以下では紹介していません。

 すぐわかる! できる! アクティブ・ラーニング

すぐわかる! できる! アクティブ・ラーニング

すぐわかる! できる! アクティブ・ラーニング

 

読みやすさ★★★★★。西川純先生の『学び合い』の手法を説明した本。

『学び合い』自体は非常にシンプルかつ教科問わず使える方法なので、実際に授業に導入するためにも参考にしやすい。ただ、事実なので言っておきますが『学び合い』は感情的に批判されることも少なくないです。自分としては「必要があればやるけど、全面的にはやらない」というスタンスです。

協調学習とは: 対話を通して理解を深めるアクティブラーニング型授業

協調学習とは: 対話を通して理解を深めるアクティブラーニング型授業

協調学習とは: 対話を通して理解を深めるアクティブラーニング型授業

 

読みやすさ★★★。知的構成型ジグソー法の解説書。

アクティブ・ラーニングの形態として、ジグソー法はかなり強力な方法であるので、ぜひ読んでもらいたい一冊である。ただ、ジグソー法は準備に相当な労力を使うので、初めはイメージを持つためにも、CoREFなどの公開研究会を見に行くのが良いかも。

教科の本質から迫るコンピテンシー・ベイスの授業づくり

教科の本質から迫るコンピテンシー・ベイスの授業づくり

教科の本質から迫るコンピテンシー・ベイスの授業づくり

 

読みやすさ★★★。各教科教育の専門家が、各教科の本質とは何かを踏まえたうえで、実際の実践の紹介や解説を行っていたり、専門家が座談会で論じていたりと内容の濃い一冊。実践と理論のバランスがよく、教科もそろっているので、一冊あると職員間でも共有しやすい。 

プロジェクト・ベース学習の実践ガイド―「総合的な学習」を支援する教師のスキル

プロジェクト・ベース学習の実践ガイド―「総合的な学習」を支援する教師のスキル

プロジェクト・ベース学習の実践ガイド―「総合的な学習」を支援する教師のスキル

 

読みやすさ★★★★。分かりやすく、実践にも近いのでおススメできる一冊だが、教科というよりも総合学習向けなので、若干、扱いにくいのかもしれない。総合学習をアクティブな探究の授業にしたいと思ったときに参照してもらいたい一冊。

公教育をイチから考えよう

公教育をイチから考えよう

公教育をイチから考えよう

 

読みやすさ★★★。これはぜひとも読んでもらいたい。詳しくは以前に書いた書評をご参照ください。

反転学習 

反転授業

反転授業

  • 作者: ジョナサン・バーグマン,アーロン・サムズ,山内祐平,大浦弘樹,上原裕美子
  • 出版社/メーカー: オデッセイコミュニケーションズ
  • 発売日: 2014/05/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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読みやすさ★★。 アクティブ・ラーニングの形態の一つである「反転授業」の入門書。反転授業については、中等教育ではICT環境がないと実践しにくいが、目下、一人一台タブレットが配られるようになる?という状況では、一つの手法として知っておきたい。

評価に関する本

アクティブ・ラーニングに関する疑問でよく聞かれるのが「評価」に関するものです。

そこで、「評価」に関する本を紹介しておきます。

「逆向き設計」で確かな学力を保障する

「逆向き設計」で確かな学力を保障する

「逆向き設計」で確かな学力を保障する

 

読みやすさ★★★★。ルーブリックルーブリックについての説明やどのような評価が必要なのか必要なのかの解説本。実践を意識しており、かなり読みやすい。

新しい教育評価入門 -- 人を育てる評価のために

新しい教育評価入門 -- 人を育てる評価のために (有斐閣コンパクト)

新しい教育評価入門 -- 人を育てる評価のために (有斐閣コンパクト)

 

読みやすさ★★。上の本の理論編といったところ。コンピテンシーの議論などと絡めて論じられている。よりパフォーマンス評価やルーブリック作成の方法について、より詳しく知りたいと思ったら読んでみるとよいと思う。

国語科のアクティブ・ラーニングに関する本

最後に、国語の教員らしく国語関係の本を挙げておきます。

国語は教科の性質上、現行の学習指導要領の「言語活動の充実」に関する授業論も、かなりアクティブ・ラーニングに近づく部分はあるので、アクティブ・ラーニングに限らず、よい実践書を紹介しておきます。

アクティブ・ラーニングを取り入れた授業づくり: 高校国語の授業改革

アクティブ・ラーニングを取り入れた授業づくり: 高校国語の授業改革

アクティブ・ラーニングを取り入れた授業づくり: 高校国語の授業改革

 

読みやすさ★★★★。前半が教育の改革の背景についての説明、後半が定番教材でどのようにアクティブ・ラーニングをやるか、その実践例の紹介という構成になっている。

高校の授業実践例は数が多くないので、この一冊はかなり参考になる。実践の質はバラつきがあるが、何がどのように異なるのかを考えることで、かなり自分の授業を見直すのに役立てられる。

高等学校国語科 授業実践報告集 全五巻

高等学校国語科 授業実践報告集 現代文編II: 評論・取り組み編

高等学校国語科 授業実践報告集 現代文編II: 評論・取り組み編

 

読みやすさ★★★★★。上でも述べたが、高校での実践例は数が多くないので、全五巻分揃えると結構役に立つ。これはアクティブ・ラーニングの議論が出てくる前の本なので、アクティブ・ラーニングの話は全く出てこないが、言語活動の充実についてはかなり意識して書かれているので、アクティブ・ラーニングの文脈に持ち込んでもよいと思う。

中学校国語科 単元を通して課題解決をめざす言語活動プラン15

中学校国語科 単元を通して課題解決をめざす言語活動プラン15

中学校国語科 単元を通して課題解決をめざす言語活動プラン15

 

読みやすさ★★★★。アクティブ・ラーニングと言語活動の充実の端境期に出された本。こちらは中学校の定番教材を実践例として紹介しているので、単元の構成が非常にわかりやすい。前半は現行の学習指導要領についての解説と言語活動の充実の必要性の説明なので、理論の勉強のとっかかりにも便利。

アクティブ・ラーニングを位置づけた中学校国語科の授業プラン

アクティブ・ラーニングを位置づけた中学校国語科の授業プラン

アクティブ・ラーニングを位置づけた中学校国語科の授業プラン

 

読みやすさ★★★★。アクティブ・ラーニングについてだいぶ議論が進んだ今年度に入ってからの本。 理論編も実践紹介もしっかりしているので、読むのには手間はかかるが、勉強し始めるのには適切な一冊。

発問―考える授業、言語活動の授業における効果的な発問―(シリーズ国語授業づくり)

発問―考える授業、言語活動の授業における効果的な発問―(シリーズ国語授業づくり)

発問―考える授業、言語活動の授業における効果的な発問―(シリーズ国語授業づくり)

  • 作者: 寺井正憲,伊崎一夫,功刀道子,日本国語教育学会
  • 出版社/メーカー: 東洋館出版社
  • 発売日: 2015/12/09
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る
 

読みやすさ★★★。この本は「シリーズ国語授業づくり」の最終巻。このシリーズはどれもクオリティが高いが、特に注目して読んでおきたいのがこの本である。

発問というタイトルにはなっているが、内容としては一方通行の授業の発問ではなく、どのように課題と子どもをどのように結びつけるかの考え方の説明であるので、この考え方は、まさにアクティブ・ラーニングへとつながる。

まとめと感想

自分の読書記録の一環として、まとめ記事を作ってみました。

こうしてみると、評価の話やカリキュラムマネジメントの話が弱いのが自覚されます。今年度中に、そのあたりを勉強しなければいけないかなぁと思いました。

もちろん、ここで紹介した書籍は、あくまで研究されてきたことの成果であって、最先端の研究そのものではないので、今後、これらの書籍の背後にある研究についても勉強しなければいけないかと思います。

繰り返しますが、アクティブ・ラーニングを考えるときに、手に取るべき本は「ノウハウ本」ではなく、理論を説明している本だというのが自分の考えです。

理論の説明が雑であったりそもそもなかったりする本は、ベストセラーでも意図的に上からは外しています。

また、最近、一気にアクティブ・ラーニングと名前のついた本が増えたので、良書でも読めていないものは紹介できていません。

ですから、もし、紹介されていないものでも、良い本があれば教えてください。買って読むようにします。

【追記】

よい本を見つけたので以下に追記していきます。

子どもの書く力が飛躍的に伸びる! 学びのカリキュラム・マネジメント

子どもの書く力が飛躍的に伸びる!  学びのカリキュラム・マネジメント

子どもの書く力が飛躍的に伸びる! 学びのカリキュラム・マネジメント

 

小学校での「書くこと」を教科横断でどのようにカリキュラムマネジメントしていくかを書いてある本ですが、「言語活動の充実」という現行の学習指導要領の意味と、アクティブ・ラーニングをどのように見取っていくのかということを考えるうえで非常に示唆に富む本です。

中学、高校になると教科担任になるので、こういう視点が薄くなりやすいので、中高の先生ほど読んで参考になるかと思います。

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