ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

初発の感想を無駄にしていませんか?

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新しい単元を始めると機械的に「はじめの感想」(=初発の感想)を書かせる授業は多い。

でも、何か文章を書くにしても子どもにとっての負担は非常に重い。気軽に教員は「自由な感想でいいから書け」と迫りがちだ。

本当にそんなに簡単に「初発の感想」を無駄に書かせることをしていいんだろうかという話。

気軽に「感想」を求めすぎる

たとえば、明治図書から出版されている『作文技術指導大事典』には、「文学読書や、文学教材の読後感の指導」に次のような技術が不足していることが指摘されている(P.210)

(1)目的に応じた書物を選び、最後まで読み通す技術

 ①(略)

 ②(略)

(2)読んだ内容を正確に理解する技術

 ① 書物の内容の大体(あらすじ)を読み取る。

 ②  文章の構成を考え、場面や情景、出来事の変化を読み取る。

 ③ 登場人物の性格、人がらを理解し、言動から心情を想像する。

 ④ 作品を読み通し、作者の意図や主題を読み取る。

(3)読み取った内容について考え、問題や感想を持つ技術

 ① 自分にとっておもしろいところ、好きなところを見つける。

 ② 疑問に思うこと、反発を感じることを見つける。

 ③ 文章の内容と、自分の生活、考え、感情と比べながら読む。

 ④ 登場人物の生き方や考え方に対する共感や、反発を感じる。

 ⑤ 作者のものの見方、考え方、感じ方について、自分の考えをはっきりさせ、まとめる。

 ⑥ 読書の結果、自分の感じ方や考え方が変わったことに気づく。

 ⑦ 自分の感想と友だちの感想を比べ、異同に気づき、考える。

(4)読み取って感じたこと、考えたことをまとめて表現する技術

 ① 読んだ書物から表現に必要な素材(人物・情景・事件・心理・主題)を書きぬく。

 ② 書き抜いた素材に対する読み手の思いを書きとめる。

 ③ 表現の条件(目的・相手・立場・分量など)を考える。

 ④ 述べたいことの中心を「主題文」にまとめて書く。

 ⑤ 書く事柄を分割し、必要な材料を組み合わせ、構成を整える。

 ⑥ 構成に従って、段落の軽重を考え、筋みつを記述する。 

「作文技術」指導大事典

「作文技術」指導大事典

 

かなり長い引用になってしまったが、「感想文」の技術のうち「読書感想文」に限った技術だけで上に引用しただけの数の技術が指摘されている。

これだけ複合的で色々と考えなければいけないことがあるのに「感想文」を教員は簡単に生徒に求めている。生徒に求めていながら、これだけ複合的で色々考えなければいけないことを考えていない。

だから、読書感想文については大きな反発や「負担を減らす」ための話が、夏になると大いに話題になるのだろう。 

s-locarno.hatenablog.com

コピペはともかくとして、テンプレート化して読書感想文を済ませることは、上で紹介した技術のうち(3)や(4)に関わる内容を考えないで済む。そのため、子どもとしては、読書感想文を読むにあたって必要な作業は、「読むこと」だけにできるため、多少負担が減る。……とはいえ、本を読み通すこと自体が結構な負担であることを軽く考えすぎだとは思うけどね…。

「初発の感想」についても同じことが言えて、「自由に書いていい」と言われても、その「自由」が「あらゆる技術について制約をつけないから自分で適切なものを選び取って」に読み替える必要があるとしたら、非常に負担は重いのである。 

s-locarno.hatenablog.com

この記事で紹介した人が「子どもが短くて適当に見えるような感想を書いてきても認めてほしい」というのにも、技術の負担という面から考えて一理あるといえる。

感想の交流は強要できない

あすこま先生のブログで以下のようなことが以前に紹介されていた。

askoma.info

その中で「書いたものを見せない権利」が第一条に来ていることに注目したい。

書くという負担の大きい作業だからこそ、自分にとって読んでもらいたいものや読んでもらいたい相手を選ぶことを子どもが権利として持っているべきことだし、アクティブ・ラーニングという錦の御旗を掲げて、感想の交流を強要してはいけないように感じる。

自分が満足できないものを他人に見せる恥ずかしさや満足できないままで作品を出してしまう無力感は、書くことを育てていくために決してよい影響があるとは思えない。

無責任に行事のたびに書かせるムダな感想文、また反省文をはじめとした意味のない作文は、国語科として断固反対していくべきなんじゃないかと感じる。

でも、逆に初発の感想を活かす方法はないだろうか。以下、次回以降のどこかに続く。

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