GWということで本を読もうかなぁと思っているけど、何となく疲れてあまりはかどらず。そんな中、読みこなした本で面白かったのが次の本。
Twitterなどで話題になっていたので、読もうかと思っていたのだけど時間もなくkindleの中で積読になっていたので、ここで一気に消化。
読んでみたら思いのほか面白かったので紹介してみようかと思います。
勉強はいつでも始められるし、いつ中断してもいい
こんな言葉が最後に書いてあるのですが、どう感じるでしょう?
高校生に背伸びして読んで欲しい
まず、この本を読んで一番強く感じたのは「高校生に読んで欲しい」と自分の生徒のことが思い浮かびました。
ただ、高校生が読むにはちょっとした言葉遣いが難しかったり、考え方が普段の「お勉強」とは違ったりするので、全然理解できないで終わってしまうのかもしれない。
だから、本書を生徒に薦めるのであれば「背伸びをして」頑張って読んで欲しいなぁと感じる。
勉強は、むしろ損をすることだと思ってほしい。
勉強とは、かつてのノっていた自分をわざと破壊する、自己破壊である。
言い換えれば、勉強とは、わざと「ノリが悪い」人になることである。
そんなことに踏み出したいと思ってもらえるでしょうか?
こんなことを開始早々に書いてあるのに、どれだけの生徒が我慢して読んでくれるだろう?
言いようのない居心地の悪さを説明してくれる
この本が唱えている「勉強」とは「言語偏重」になることだ。つまり、普段使っている言葉に対して意識的にメタ的な立場になることで、自分が現在、存在している世界について考えを深めていくことを主張している。
言語偏重になるというのは、ある環境でスムーズに行為するために言語を使っている状態から脱して、言語をそれ自体として操作する意識を高めることである
この「言語偏重」という考え方は、哲学の説明が援用されているので、おそらく高校生には難しい。ウィトゲンシュタインやラカンの考え方なんて大人が読んだって難しいんだから、高校生が取り組むにはかなりの無理難題。でも、わかりやすく順を追って説明してくれているからこそ、背伸びをすれば読めるようになっている。
そうやって、頑張って背伸びをして読み進めると、勉強している人がやらかしがちな「アイロニー」と「ユーモア」という二種類の「浮き」という考え方の説明が理解できるようになっている。
さらに、ここまでしっかり読み進めることができるような高校生であれば、次の言葉で気持ちが大きく救われるのではないかと思う。
二種類の「浮き」は、まさしく「勉強している人」がやってしまいがちなしゃべりのミスであり、そしてそれこそが、自由のための思考スキルに対応している。逆に、そういう思考スキルをもつ人だからこそ、「浮く」発言をやらかしてしまうことがある。
正直、この本は「ノウハウ本」だと思って読みだした人は、数ページで断念するような書き方をしている(意図的なのか、結果的なのかは分からないけど)。
だから、もし、高校生がタイトルに惹かれて本書を手に取った時に、上の一文にまでたどり着くことができる生徒は案外少ないように思う。
でも、逆に、そんな本書の小難しくて回りくどいように見える内容を、頑張って読み進めるような「勉強している」高校生は、上の一文に深く共感するのではないか?
人よりも色々なことを考えているために、自分がいる場とは違うことを口走ってしまい、「やらかした」という後悔を持つという経験があるような高校生であれば、上の一文で「自分がやってきたことは仕方ないんだよ」というような許可をもらえたような気分になるのではないか。
物を考えていると、言わなくてもいいことを言ってしまったり周りが必要以上につまらなく見えたりして、その場にいることがとても居心地が悪いように感じられることはあるだろう。そんなときに、大人であれば上手く諦めと折り合いをつけられるかもしれないけど、高校生くらいでその折り合いをつけるのは難しいかもしれない。
だから、こんな形でも「なぜ居心地が悪いのか」を明晰に説明され、「それでよいのだ」と言ってもらえるのは、救いになるのではないだろうか。
そもそも、これまでの自分にとって異質な世界観を得ようとしているのだから、実感に合わないことが書いてあって当然なのです。むしろ、「なんでそんなふうに考えるの?!」と気味悪く、ときには不快に思うこともあるような考え方を学んでこそ、勉強なのです。
自分が変わるのでも、周りを変えるのでもなく、現状をきちんと受け入れること、理解することを「勉強」としている。
さあ、勉強を始めよう
本書の副題である「来るべきバカ」については、この記事では触れません。
その「バカ」の意味こそ、自分できちんと確かめなければいけないと思うからです。
勉強するにあたって信頼すべき他者は、勉強を続けている他者である。
自分は信頼すべき他者に足りるような人間ではありませんから。ご自分の目で、きちんと本書の意図を確認してみてください。