なかなかうまくいったので単純に記録を残しておこう。
上の写真は授業の様子。全然、何が何だか分からないように個人情報保護の結果である。
今年度の授業の一つの柱として「質問づくり」(QFT)を行っているが、リーディングワークショップと組み合わせてみたら上手くいったという話。
質問づくりってなに?という人は
本ブログが唯一他のブログと差別化できる点があるとすれば、質問づくりを定期的に行って、その結果を紹介しているということです。
今回もその一環です。
この「質問づくり」という技法は、簡単に言えば
最終的には「よく考えて行動する民主的な市民になれる」(P.25)ということを目指して考えられた方法
であり、今まで教室の中で「質問」を作るのは教員であったが、その「質問」を作る「権利」を子どもに委ね、様々な学びを呼び起こそうという方法だ。
洗練された方法で手軽に行える一方で、生徒が言葉に深く注目して既有の知識を様々に関連付けて物事を理解する態度へと自然と導くことができる。
ただ、手法がかなり洗練されていることもあって、型を使いこなすまでが大変で、教える側も「おいしいところをつまみ食い」という態度でやると大失敗になるのです。
今年の四月から継続して行ってきて、ようやく生徒の方も質問づくりに慣れてきたかなぁ?という感じ。気の長い話なのです。
リーディングワークショップってなに?という人へ
リーディングワークショップについては
で昨年度の実践の様子をまとめているのでご覧ください。
まあ、今回のリーディングワークショップは単元のまとめとして、関連書籍を読もうというやり方なので、リーディングワークショップらしいリーディングワークショップなのかと言われるとそうでもない。
でも、まあ、自由に生徒が読みたい本を選ぶ権利がある、ミニ・レッスンとカンファランスで生徒と読解のスキルを伝えていく、共有の時間を持つようにするなど、理念と型はリーディングワークショップに寄せているつもり。
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を参考にしたり
などを参考にしたりしてます。
本日の授業の展開
さて、本日の授業は「質問づくり」と「リーディングワークショップ」の両方を行ってみました。
授業自体はこれまで行ってきた「科学」に関する読解のまとめとしての位置づけです。
一年生の頃から科学の文章を読んできましたが、この二学期で科学論を読むために必要な知識を教科書でほぼ確認できたので、ここから先は自分たちで実際の書籍を見つけて、自分の知識として身に付けていこうという狙いでのリーディングワークショップ。
授業の流れ
- ミニ・レッスンとしてリーディングワークショップの流れの説明(2分)
- 「質問づくり」のルールの確認(2分)
- 「質問づくり」の実施(15分)
- 読書の時間(25分)
- 共有の時間(3分)
- ふり返り(3分)
実はさばを読んでいて本当は少しはみ出ている(笑)。
ミニ・レッスンで伝えたこと
毎回、必ずリーディングワークショップの開始時には「読者の権利十か条」を伝える。
第一条 読まない権利
第二条 飛ばし読みする権利
第三条 最後まで読まない権利
第四条 読み返す権利
第五条 手当たり次第なんでも読む権利
第六条 ボヴァリズム(小説に書いてあることに染まりやすい病気)の権利
第七条 どこで読んでもいい権利
第八条 あちこち拾い読みする権利
第九条 声を出して読む権利
第十条 黙っている権利
ペナックの有名なあれです。特に「精読」にばかり偏りがちなので、最初に必ず「楽しく読もう」ということを伝えます。
質問づくりの流れ
質問づくり、QFTは以下の流れで行います。
- 質問づくりの鍵となる、生徒たちが質問を考え出す起点となる言葉や文章などの「質問の焦点」を教員が設定する。
- 質問をつくる際の単純な四つのルールが提示し、生徒はそれを守って質問を出し合う。
- 生徒はルールを意識しながら短い時間でできるだけたくさんの質問をつくる。
- 生徒は「閉じた質問」と「開いた質問」の違いを理解し、それらを相互に書き換える。
- 優先順位の高い質問を一つ〜三つ選ぶ。
- 優先順位の高い質問を使って、課題解決に取り組む。
- 振り返りを行う。
今回で5回目となる取り組みであり、生徒のほうがこの手順にかなり慣れていた。
ちなみに今回の質問の焦点は「人間は科学を捨てられない」でやってみました。教科書の話題がそういう流れで来ていたので。
質問づくりの様子
正直、質問づくりで15分しか時間を設定していないのは、やや短い。
が、手順になれた彼らは話し合うには十分な質問づくりができていました。
正味、5分程度の質問を作る作業で、10以上質問をきちんと作れていましたから。しかも、その質問もなかなか面白いものが多い。
質問を作った後の「分類」「書き換え」も非常にスムーズでしたし、優先度付けも上手くなっていました。
生徒が気に入った質問としては次のようなものがあった
- 科学に人間は見捨てられることはあるのか
- 科学を捨てられないとしたら将来はどうなるのか
- 人間にとって科学はどんな存在なのか
- 科学によって幸せをもたらすことは出来るのだろうか
などなど。
作った質問の優先度付けを通して、生徒は自分の興味関心がどこに向いているのか自覚し、自分の興味関心にこだわるようになるのです。
リーディングワークショップの開始
ここでリーディングワークショップへと移行します。
指示としては「選書」の際に質問づくりで作った質問を意識しながら、自分が読めそうな本を探すこと、そして精読ではなく数冊をどんどん拾い読み流し読みしていくこと、という二点。
生徒としては図書室に来たのに質問づくりで読むのをお預けされていたので、もう、あっというまに本棚に群がる群がる(笑)。
質問づくりがかなり効果的だったらしく、もっと読むべき本を見つけるのに苦戦するかと思ったのが、あっという間に自分の読みたい本、気になる本を見つけていた。
これは質問づくりで今回のテーマに関わるキーワードを使って質問を作ろうとしているからなのではないかと思う。また、自分の問題意識を質問づくりを通して確認しているので、タイトルや目次を眺めるだけでもだいぶ引っかかるところが多いらしい。
まとめ
改めて思うが、質問づくり(QFT)は生徒自身が自分の問題意識やひっかかっているキーワードを自覚するのに効果的である。
今回、リーディングワークショップの前にテンポよく質問づくりを行ってみたけど、これによって、日常と感覚が遠い「科学」についてであっても、自分の問題意識とつなげながら本に出会おうとしていた。
なるほど、質問づくりが「よく考えて行動する民主的な市民になれる」ことを狙っているというのはこういうところかもしれない。こうやって自分の関心に自覚的になるからこそ、社会の中のことばに参加できるようになるのだから。