本日は休日出勤で出張。
遠出するので、その分だけ本を読む時間がありました。ちょっと普段は読まない毛色の違う本を手に取ってみました。
WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE. 〜現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ〜 (NewsPicks Book)
- 作者: 佐渡島庸平
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2018/05/09
- メディア: 単行本
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ビジネス書でこの手のテーマを読むのは、自分としてはちょっと新鮮さがある。直感的な分かりやすさやビジネスの世界で見えているものからの説明は訴求する力が違うなあと感じます。
イノベーターの視点の面白さ
本書は「自由と安心」という観点から、これからの社会にどのようなものが求められているのかということを明らかにしようとしている。
まさにイノベーターとして、世界の見え方を言語化して、何が足りないのかということをまざまざと見せつけて、モデルを作りあげている。
こういう直感的に分かりやすい言葉で、今、何を望んでいるのかということを言語化できる能力は、イノベーターと呼ばれる人の強みだろう。
自分は他人の考えや言葉を借りて牛歩で考えをまとめるくらいしかできないので、それだけにこうやって一足飛びにモデルを示す思考は刺激的に見える。たぶん、向き不向きの問題はあるので、真似しようとは思わないけど、見せられたモデルから見えるものについて考えるのは楽しいのだ。
新しいコミュニティを探して
では、本書の見せる魅惑的なモデルとは何か。
自由と安心、両方を同時に得ることは不可能なのか?
この問いに対する筆者の答えが、そのモデルに当たる。
本書では、人々がコミュニティを失い、孤独の中にさまよっている理由として、SNSを代表例として、社会がデジタル化されていくことを挙げている。
社会がデジタル化していくことで「なめらか」につながることができるようになった一方で、情報が爆発的に増えたことによって、情報に対して逆に不自由にされてしまっているという。そして、そのような情報爆発に対してコミュニティの力が効いてくるのだと明らかにするのである。
その具体例として『ほぼ日』の人気の理由や実際に「宇宙兄弟」の単行本の販売のちょっとした仕掛けなどを説明してくれているが……これが、やはりビジネスの世界観なのかーっと縁遠い世界にいる自分としては面白く読めました。
以前に読んだ
お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book)
- 作者: 佐藤航陽
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2017/11/30
- メディア: 単行本
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の中で、「価値」というものについての議論があったけど、その内容とも近いものがあり、なるほど、生き馬の目を抜く正解を生きる人たちの見えるものがあるんだぁと感心しました。
アップデートを恐れない
本書には少しだけ教育についての記述がありますが、まあ、外からみた学校のイメージとして謙虚に捉えておきます。論うほどのことではない。
だが、重要だなぁと思うのが次の指摘である。
そもそも論として、その問題は解決する必要があるのだっけ? という問いを突き付けられると、動けなくなる。今の時代、そもそも論が社会全体に突き付けられている。
世の中の学校のカリキュラムが親切な分だけこのようなそもそも論に弱いという指摘は面白い。
問題解決学習の型が重要なのではなくて、問題解決に至る以前の「そもそも何故?」と問うことができる力に目を向けようという指摘は正しいだろう。
思い出すのが、ミネソタニューカントリースクール型のPBLのプロジェクトの立て方である。
ミネソタニューカントリースクール型のPBLでは、プロジェクトを始める前に、必ずそのプロジェクトが「解決することでどんな価値があるのか」「解決することでどんな力が付くのか」ということをアドバイザーと生徒が散々に議論してからやっとプロジェクトを始める。
問うべき価値があることを問うということを大切にしている。そして、大切にしているからこそ、きちんと生徒の学力を保障している(実際、州の統一テストなどで結果を残している)。
問うべきものを正しく問う。
そのために、必要なアップデートを恐れないことが必要なのでしょうか。頭を柔らかくしていきたいところですね。
※追記
自分よりもとても詳しいよい書評があったので紹介します。