ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

AO・推薦の指導のためのネタ本

Pens

夏休みもあと一週間と半分といったところ。九月に入るとAOや推薦試験の書類の出願が次々と始まっていく。そのため、生徒の書類の添削も一つ目の山場を迎えている気がする。

なかなか小論文や出願書類の添削は個人芸になりやすいところだ。そんな個人芸を磨くために参考になる本を紹介してみよう。

生徒におススメしにくい小論文の解説本

個人的な意見ですが、普通の問題集に比べて、小論文の解説本は生徒に薦めにくい。というのも、一口に小論文と言っても単なる志望理由を述べるようなものから、本格的に大学生に書かせるレポートのようなものまで幅が広い。そのため、時間のない中で慌てて作業している生徒に対しては無駄が多くなってしまう。

仮に時間に余裕があるとしても、なかなか使い勝手はよくないなぁ…という印象はある。作文用紙の使い方や言葉遣いもなかなかよく理解していない生徒は多いので、そういう面でのカバーはできるのだが、内容面についてはほぼ無力である。

いくつかの参考書には「正解例」に当たるようなものがあるが、まあ…どこにもいない誰かの文章であるので、そりゃあ中身がなくなるよね。死刑制度についての小論文で終身刑を代案として提案すれば論理的みたいなことを書いてあってあちゃー…となったこの頃。

あと何でもかんでもワンパターンな型で書こうとするのはなんなんでしょうね。賛成反対を想定していない論題であるのに、「私は賛成である/反対である」としか書けないのでしょう?

個別指導の手札を増やす

ここ最近、ライティング・ワークショップをやっていることもあって、自分自身の添削の方法を少し変えている。

以前まではびっしりと書き込んで全てを指摘したうえで、個別に面談して逐一全部直していたのだけど、まあ、負担が大きい割にはなかなか成果は得にくい。

だから、もう少しライティング・ワークショップのカンファランスのように、優れた書き手の視点を伝えることや、生徒がどう書きたいのかということを聞いて、それを整理していくような方向に変えている。イチイチ出てきた志望理由書に色々なことをびっしりと書かないように、書きたいことを聞くことをメインにしようとしている*1

あと、現実的な問題として、AOの課題も随分、以前に比べて難易度が上がっていることもあって、自力で書き上げられないということも多くなっているのです。その「書けなさ」のせいで、生徒が安易にテクニック本に走って「賛成/反対」で書いてきたら……回り道である。

そんなこともあって、「一緒に書いていこう」というスタンスに寄ってきています。そのため、ライティング・ワークショップの本が第一に参考にしています。

増補版 作家の時間: 「書く」ことが好きになる教え方・学び方【実践編】 (シリーズ・ワークショップで学ぶ)

増補版 作家の時間: 「書く」ことが好きになる教え方・学び方【実践編】 (シリーズ・ワークショップで学ぶ)

 

カンファランスのコメントの仕方、書いてきたものに対するコメントの仕方……固定概念を持ってしまっている小論文指導の方法の発想の角度を変えるだけで、かなり引き出しが増えるなぁと思うわけです。

さて、小論文の難易度自体が挙がっていることもあるため、生徒と一緒にどんなことを書けばいいのかを考えていくときに、レポートの類型を理解することも指導のヒントになります。そのため、以下の本が役に立ちます。

学生を思考にいざなうレポート課題

学生を思考にいざなうレポート課題

 

授業のレポートの出す時にも役に立ちますが、出された課題を読み解くのにも役立ちます。

実際にある程度書きあがってきた段階でのブラッシュアップでは以下の本がかなり役に立ちます。

レポート・論文をさらによくする「書き直し」ガイド

レポート・論文をさらによくする「書き直し」ガイド

 

早稲田のライティング・センターで指導に当たっている方々が執筆しており、文章例を題材に、どのようなことを練り直していけばいいかという「視点」が述べられている。

一見すると学習参考書系とよく似ているのだが、発想が根本的に違う。学習参考書系の本が「こうするべきだ」というお手本を示す、型を教えるという発想に寄っているのに対して、こちらの本は「なぜ具体例が必要なのだろう」「よい問いとはどのようなものだろう」というような観点から文章を読み直し、文章を書きなおしていこうという、いわば「書き手に考えさせて自立させる」という方向である。

非常に微妙な違いであるが、生徒の考えを引き出しつつ、書けるようにしていこうとするには重要な違いである。

こうしてきちんと考えや思考の立て方を引き出しておかないと、結局、面接で何も話せない。自分が何を書いたか責任を持てない。そんな状況に陥りやすいのだ。

手間がかかるのですよ…

それなりの小論文を書かせようと思ったらやはり指導はしんどい。どうしても「合否」が掛かってくると堅苦しくなるし、自由に表現を選べるという種類のものでもない。

まあ…そう考えると普段の授業がどれだけ雑なことしているのかということになってしまうのだが……。

だから、安易に小論文を添削してくれと頼まれるとやや肚に落ちないことは多い。自分だって担任であり、自分が担任している生徒の面倒でいっぱいいっぱいである。

www.s-locarno.com

丁寧に見てあげたいからこそ、仕事が分散されないと厳しい。

*1:ただ、難関大学が課す大学生のレポートのような課題は、この限りではない。時間の制限もあるので、バッサリとやってしまうこともある。

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