今日はとある出張に行ってきました。
そこで、話題にされて強調されていたのが、非認知スキルとルーブリックなのですが……。自分の知っているルーブリックとは違ったのです。
今日聞いてきたこと
今日聞いてきたことをざっくりとまとめると以下の通りである。
ルーブリック評価とはチェックリストのことで小論文を採点するときに使って、それを使って採点することで非認知スキルを点数化して値踏みするものである。
まあ、あまりに衝撃を受けたので、悪意のある要約になっているような気もするが、だいたいこんなことを言った。
要約にすると偏るので、メモした発言を箇条書きにすると以下の通り。
- ルーブリック評価とはチェックリスト
- 採点規準としてルーブリックが使われている
- 非認知能力が入試では重要になってきているのでそれを試すような入試になっている
これも「だいたい」このくらいのことと思ってもらえれば。
ただ、控えめな言い方をすれば、ここ数週間で読んでいた、自分の知っているルーブリックとはずいぶん違うことが世の中に宣伝されているんだなぁ……ともう目から鱗…。
何一つあっていない気がする…
自分がよく分からないことをメモしておこう。あとで調べるかもしれない。
ルーブリック評価?
まず、「ルーブリック評価」って言葉が微妙に気になる。いや、普通に論文でも目にするのでいいのかもしれないけど、「ルーブリック」自体は「ものさし」だから、ルーブリックでパフォーマンス評価やらポートフォリオ評価するんじゃないのかと思うのだが……。この辺りは、まあ…言葉遊びである。過去記事でもルーブリック評価って書いているし。
ルーブリックはチェックリストか
しかし、ルーブリックを「採点基準」としてしまうのはかなり違和感がある。
ルーブリックを作るメリットや目的としては大きなものは、ルーブリックの作成→成果物の評価→生徒へのフィードバック・指導法の点検→ルーブリックの検証→再実践…というループによって、質を高めていくための手立てと思っている。だから、ルーブリックのことを「採点基準」と呼んでしまうのは問題があるのではないか?*1
この辺りは以下の記事の内容を参考にしている。。
成績評価に役立つルーブリックの作り方 | 金沢大学 国際基幹教育院高等教育開発・支援系/部門
ルーブリックとは、教員の側から見ると、「学習者の活動をどのように評価するかを示す手引き」、「どのようなことが出来るようになるのかを明確に示した採点ツール」、「現在進行中の学習努力を支援し導くための形成的フィードバックを提供するための、採点または成績評価の手引き」である。学生の側からすると、「学習者として、どのように評価され、成績をつけられるかを示すもの」、「学生自身の成長を確認し、評価することが出来るもの」、「自らの学習活動の強み、弱点を理解するのを助けるツール」である。形成的に用いることで、ルーブリックは、教員が、クラスにおける強み、弱さをより明確に把握する助けとなりうる。(下線強調は引用者による。2018年8月25日22時確認)
最近の実践報告でしょちゅうルーブリックだという話を見るのだけど、ただの「チェックリスト」になっている、もしくはフィードバックが出来ないようなものが、ただ5×5のマスに並んでいるだけに見えるものが少なくないことにも違和感を覚えていたので、そのあたりと根は同じかなあと思う。
中央教育審議会高大接続特別部会(平成25年5月24日)で京都大学大学院教育学研究科の西岡加名恵先生が提出した「パフォーマンス評価を取り入れた「高大接続評価システム」の提案」という資料にも「チェックリストとの違いに注意」と以下のように明記されているのである。
特定課題ルーブリックと長期ルーブリックの違いも微妙だったりと……まあ、絶賛混乱中。西岡先生の本は上の資料と対応していて、参考になる。
「資質・能力」を育てるパフォーマンス評価 アクティブ・ラーニングをどう充実させるか
- 作者: 西岡加名恵
- 出版社/メーカー: 明治図書出版
- 発売日: 2016/09/23
- メディア: 単行本
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パフォーマンス評価で生徒の「資質・能力」を育てる―学ぶ力を育てる新たな授業とカリキュラム
- 作者: 西岡加名恵,永井正人,前野正博,田中容子,京都府立園部高等学校・附属中学校
- 出版社/メーカー: 学事出版
- 発売日: 2017/02/28
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非認知能力を値踏みしているのか?
一番、不用意かなあと思うのが、ルーブリックを使うことで入試で非認知能力を測っているのだという説明。そして、非認知能力の高さが総合的な能力の高さになっているのだという説明。非常に怪しい。
国立教育政策研究所の「非認知的(社会情緒的)能力の発達と科学的検討手法についての研究に関する報告書」の中でも「各種の「非認知」的な心の性質とポジティヴな発達的帰結との間に有意な相関関係が成り立つことは示していても、その因果関係までをも詳細に明らかにしている訳では必ずしもない」(P.20)と指摘し、さらに非認知的なものに対する介入についても「子供の深層たる気質傾向の違いに応じて、感情制御に関して有効な教育的働きかけが大きく異なる」(P.24)と述べるように、かなり慎重な見解を示している。
あまり「人間性」の言い換えのような意味での「非認知スキル」について値踏みするかのような評価がなされているかのような言い回しは、慎重になったほうがいいのではないかと思うのである。
参考になりそうなサイト
とりあえず、自分がルーブリックについては不慣れなので、踏み込んで議論できないし、正誤の判断もつかない。以下に、参考になりそうな記事をリンクしておき、ここでいったん筆を止めよう。
*1:その意味では、最近ルーブリック評価入試を始めている中学校があるけど、それは大学入試の小論文の採点基準とは違って、生徒を入試の段階から評価し、入学後に活かそうという試みなのだと思います。入試の時に印象的な生徒は覚えているものですし。