ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

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【書評】国語科授業とICTで出来ること

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国語科とICTは距離が遠いように思われがちである。

そんな国語科でもICTをしっかりと活用できるという強いメッセージを発信する一冊が発売になりました。

学びの質を高める! ICTで変える国語授業 ―基礎スキル&活用ガイドブック―

学びの質を高める! ICTで変える国語授業 ―基礎スキル&活用ガイドブック―

 

入門から実践まで幅広くカバーしている一冊です。

日常的なICT活用

本書のICT活用の特徴的なところは、日常的な活用ができるように特別なアプリを必要としたり、大掛かりな電子黒板を必要としたりはしていないことです。特別な道具としてはロイロノートや教育用SNSくらいで、他はGoogleのサービスだったりScratchだったり「誰でも自由に」使うことができるものである。

もちろん、細かく検討していくならば、教室にICT環境は必要になるだろうし、本書の中でも「電子書籍」を作るなど比較的高度なものは、教員側の習熟は必要であるが、それでも、基本的には簡単な準備と練習で十分にすぐに授業に取り入れることが可能なものばかりである。

むしろ重要なのは、日常的にICTを活用した授業を始めるために、ハードルを下げるために「このくらいでいいのか」というレベルから歩を進めていくことを大切にしている。

今まで使ったことがないものを失敗せずに使いこなせると思えないという先生は、ぜひ、ICTをふだん使いしている授業を観に行ってください。(P.20)

視察に来た方が「あんなの無理だね」と肩を落として帰るのではなく、「あのくらいだったらうちでもできるんじゃないか」と少し軽い足取りで帰るような視察にしたいと考えています。(P.124)

まずは実際に導入が成功している学校の「こんなのでいいの」という実践を知ってもらう、できれば実際に管理職にも出向いて観てもらうことが大事です。(P.136)

どうしても研究授業などになると大掛かりな道具やパフォーマンスの授業になりやすいため、「自分には無理」となりやすいですし、一方でパフォーマンスが派手であるほど「こんなお遊びは必要ない」というハレーションも起こりやすいように感じる。

だからこそ、日常使いの授業、ICTが自然に授業の展開に組み込まれているような状態を知ることに意味があるだろう。その意味て、本書はICTを使うではなく、ICTで出来ることで授業の可能性を拡げるという提案は魅力的である。

SAMRモデルで考える意味

ICTを授業に導入することでどのような変化が起こるかということについて、本書ではSAMRモデルが紹介されている。

教育ICTの導入によって何が起こるかについての見通しを立てようとするなら、SAMRモデルが有効です。(中略)Substitution(代替)、Augmentation(拡張)、Modification(変容)、Redefinition(再定義)の4つの段階からなり、それぞれの言葉の頭文字を取ってSAMRモデルと呼ばれます。(P.3)

ちなみにこの部分の解説は明治図書のサイトで「はじめに」の部分で読めます。

www.meijitosho.co.jp

上のサイトから読んでもらうと分かりますが、本書の目指すレベルは最終的にはRの段階である。

最後は,学びの再定義(Redefinition)です。これは,テクノロジーを使うことによって,学びの可能性が広がり,学びのありようが根本的に変容する段階です。言い換えれば,教育の原点に立ち戻り,進化する段階です。そもそも何のために学校があり,教室があり,授業があるのか,学びの主体である生徒にとって教師はどのような役割を果たすべきかという課題に,一人ひとりの教員が向き合うことになるかもしれません。(P.5)

当然ながら、この段階をいきなり実現しろというのがこの書籍のコンセプトではない。少しずつ、日常的にICTが使われることによって授業者が少しずつ自分の授業や役割を見直し、授業の可能性を拡げていくことを目指している。そのための、小さいハードルや楽しくなるような実践例が本書の要点である。

お祭り騒ぎで一回だけ使う実践ではなく、日常的に使っていくからお互いにICTに慣れていき、授業の可能性が広がっていく。そんな地に足の着いた可能性の拡がりを期待したいのである。

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