ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

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【書評】新しい探究学習のバイブルになるか『中高生からの論文入門』

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連休を使って色々と本を読んでいます。学校に献本が届いていた『中高生からの論文入門』も読み終わりました。

中高生からの論文入門 (講談社現代新書)

中高生からの論文入門 (講談社現代新書)

 

非常に参考になるところが多かったです。ぜひ、生徒に論文を書かせる場合には持たせたい一冊です。

メンドーな作業からの脱却のために

だいぶ前から、中高一貫の学校を中心に「卒業論文」を書くということが行われるようになり、定着するようになってきたという印象があります。

基本的に、探究学習を大切にしたいと思っているし、自分の論考をまとめるという作業を中高生のころから取り組めるとしたら、学べることは多いのではないかと思う立場です。しかし、可能性が大きい分だけ、生徒と教員に課される負担も大きいと言えます。

その負担の大きさゆえに、自分が見聞きする失敗例としては、「論文を書く」という学習が、生徒にとっては面倒な作業となってしまい、悪くすると「コピペ」、多くの場合は「調べ学習」や「感想文」で終わってしまっているというパターンだ。

教員側も本腰を入れて内容を指導するには普段の生活が忙しいがために、形がそれなりに整っていると、あまり手を入れる余裕もなく、それでよしとしてしまうという苦しい事情も見聞きしている。

大きな可能性を持っているからこそ、苦しい悪循環から抜け出したいものの、決して論文の作成についてのノウハウに中高の教員は長けているわけではないので、ここからの脱却はなかなか難しい。

そういう観点で考えたときに、本書は「一から丁寧に論文づくりをサポートしてくれる」一冊であると言える。

一つ一つのステップを丁寧に言語化

本書の特長としては「論文作成の各段階を細かく言語化」していることである。

別の言い方をすれば、「論文の作成の段階に併せて必要な作業がすべて書かれている」と言える。

論文の書き方の指南書は、大学生向けにこれまでも数多く出版されている。それこそ本書の著者の一人である小笠原先生の本はベストセラーである。

最新版 大学生のためのレポート・論文術 (講談社現代新書)

最新版 大学生のためのレポート・論文術 (講談社現代新書)

 

これを基に中高生の論文指導を考えてももちろんよいのだが、当然ながら大学生向けのものをそのまま中高生向けには使えない。中高生に対する指導としてはより一層、丁寧なステップを考える必要があるだろう。しかし、その「丁寧なステップ」ってどこまでだろう?それは、結局、中高生に論文指導をした人でないとイメージが湧かない。

だからこそ、中高生への豊富な指導経験に基づいて、「論文作成に必要なこと」のステップが丁寧に書かれている本書は、これから探究学習を企画・運営していこうという教員に対して心強い味方になる。

教員の熟読を勧めたい

本書は探究学習や論文作成をよりよいものにするための方法が丁寧に書かれた一冊である。ここには著者の強い願いが込められている。

「論文作成(探究学習)、中高生に必要ですか」。そんな疑問があるかもしれません。たしかに、中高生が頑張ったとしても世界に新たな知識を加えるのは難しいです。それでも論文を書いてほしいのです。論文作成がその人にとって人生の「芯」になる経験をもたらすからです。世の中の見方・考え方の基本を育てる、といってもいいです。(P.219)

著者の片岡先生の強い想いが端的に述べられている部分です。

この思いに共感できるのであれば、ぜひとも自分の学校現場で本書のノウハウを活かすべきだろうと思う。そのためには、論文作成に決して習熟していない教員自身が、まずはこの本のノウハウに一つ一つ意味を理解できるようになるまで熟読するのがよいのではないだろうか。

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探究学習関係の書籍は少し前に紹介しました。

www.s-locarno.com

ここで紹介したものよりも、一層、中高生に寄り添っているのが本書です。

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