ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

なかなか短歌は手ごわいぞ

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代休明け。さっそく授業である。

ここまで短歌を気軽に遊んで親しんできた生徒たちだが、浦島太郎状態で久々に短歌の授業。そして、今まで好きに自由にやっていたけど、鑑賞となると少しお作法的なことを話し出すと……これが覿面に生徒の集中力を奪う。

短歌とは分かち合いである

教科書の短歌を眺めていると、生徒のなじみが薄いものばかりであり、自力で読むことは難しいだろうなぁと感じた。一つ一つを解説しながら味わいながら理解を深めていくことも必要だとは思うが、今の生徒の様子や授業数を考えると、そういう悠長なことも難しい。

とはいえ、きちんと自分で「短歌を読む」という経験はしてもらいたいので、ある程度まとまった鑑賞文を書いたり誰かと感想を分け合ったりすることはして欲しいと思っている。自分勝手な主張ではなく、根拠があって、分かち合うことができる読み方をして欲しいと思っている。

今回の単元を通じて、生徒に繰り返し言っていること、理解してほしいと思っていることは、「短歌とはイメージを分かち合うもの」ということだ。読み手だけのイメージで勝手に読めるものでもないし、字数の少ない定型だからこそ詠み手と読み手のイメージの重なりが有効に活用されている。一つの優れた歌が出来ると、新しいイメージが共有され、言葉自体のイメージも広がっていく、そういう共同の言葉の営みの面白さを実感してほしいと思うのである。

そのためには、創作だけでは不十分で、やはり自分で読んで解釈するという行為が必要なのである。先達たちの作りあげたイメージをきちんと受け止める時間が必要なのだ。

とはいえ、いきなり教科書の短歌を渡しても……かなり厳しいのである。

今回は物量でごり押し

さて、そうなるとどうやって読んでもらうものか。

教科書の一つ一つの短歌を味わって読むことにたどり着いてほしい気持ちもあるが、それよりは今は自分のイメージと歌から引き出せるイメージを重ね合わせていくことを実践してほしい。というよりも、自分でひねり出す、イメージにこだわるという経験がやはり足りないので、分からないものに対する諦めも早すぎるのである。

短い言葉だからこそ難しいところもあるが、短い言葉でさえ我慢強くイメージする体力がなければ、この後に控えている文学の文章にかじりついてでも読もうという気持ちが生まれてこない気がしている。

短いからこそ、しっかりとここで我慢強く読めば、ちゃんと理解できるという成功体験をして欲しい。

で、今回はどうするのか。

何が生徒の興味を惹くか分からないので、とりあえずごり押し作戦にでた。ヒントはこの本。

はじめてのやさしい短歌のつくりかた

はじめてのやさしい短歌のつくりかた

 

今回は創作をメインにやっているので、「創作」という観点から、工夫のある短歌をひたすら並べていく。過去の先輩たちの、高校生の作った短歌も並べつつ…。

「対象を見つめるということ」「リズムを工夫するということ」「結句を工夫するということ」「比喩を工夫するということ」という四つの創作の観点で色々な作品を紹介。その中に教科書の短歌も潜り込ませてみたり……。

さらにテーマ別に自然詠、旅行詠、挽歌、相聞などなどテーマ別にも示してみたり、最後はトリッキーな穂村弘のエレベーターガールのような短歌を見せたり……よりどりみどり揃えてみました。

……授業時間は1コマしか取れないんだけど。

だから、一つ一つを解説するのは捨てて、生徒がどれか一つにひっかかってくれれば、その一首を考えつくしてくれればいいかなという発想。

しかし…結果は……

そうして授業をしてみたけど、本日は比較的惨敗である。

自分の解説がイマイチ知識を教えることを捨てきれなかった。生徒が自分できちんと短歌と向き合ってほしいと思いながらも、こういうものだよ…というものを伝えなければいけない気持ちを捨てきれず、ついつい冗長に話しすぎた気がする。

その結果、生徒の集中力がぐんぐんと削れて、どうでもよいような雰囲気に……まあ、惨敗である。

やってみて分かったが、生徒の傾向としては

  • やっぱり教科書の古めの短歌は読めないし興味も持ちにくい
  • トリッキーな歌には食いつくが、深読みにはいかない
  • 同世代の作った短歌に対しては反応が良い。ただ、短歌自体が深読みに耐えるかが怪しい
  • 意外とたくさん読むのは平気。好きなものが見つかれば万事オッケー。

といったところ。

中途半端がよくない。

もっと、解説しきるか、好きなものを読むことに時間をかけるかはっきりしなければ……。

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