ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

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何を授業で…

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本を読みながらも、生徒のコメントを添削しながら確認。授業をどうしようかと色々と悩むのである。

微妙な舵取り

「羅生門」は難敵である。

羅生門・鼻・芋粥 (角川文庫)

羅生門・鼻・芋粥 (角川文庫)

 

年々、語彙の厳しさに直面するようになっている気がする。普段、使わない語句があると読むモチベーションが下がりやすい。

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「羅生門」の筋自体は非常に単純なので、言葉の難しさに我慢して数回読み直してもらえれば理解できるはずだし、筋が理解できれば、あとは逆にそこから難しいところを掘り下げていければよいのだけど……そういう我慢をしてまで読むというモチベーションはなかなか素直には出て来ない。

だから、どうにか宥めすかして読んでもらうのに四苦八苦するのです。

簡単に翻訳?された本もあるし、まあ、手立ては色々とある。

羅生門 (現代語訳名作シリーズ)

羅生門 (現代語訳名作シリーズ)

 

ただねぇ……筋が分かればいいとなってしまうと、もはや「羅生門」自体を読む必要がなくなってしまう。同じ芥川なら「蜜柑」の方が個人的には気も重くならないし、好きである。

蜜柑・尾生の信 他十八篇 (岩波文庫)

蜜柑・尾生の信 他十八篇 (岩波文庫)

 

だったら「蜜柑」やってもいいのでは……という気持ちもしないでもないが、前に述べた通りである。

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自分が勝手にやめるだけの覚悟もないし、先行研究が多くあることで、「羅生門」を使って生徒に力をつけるための道筋がいくつか見えるということも大きい。文章自体の研究も大量にあるおかげで、自分のつたない文学の力でも割と苦労することはない。

そんなわけで、生徒に厳しいということを理解しながらも、「羅生門」に特攻しているのである。

そんな状態で始めているので、生徒の反応を見ながら、毎回、どんな課題をやるのかをにらめっこしながら調整している。授業数はせいぜい6回しか取れないので、途中で瓦解しないように、下手に延長しないようにという微妙な調整が……。

ゴールに据えていることはあるが、そこにたどり着けるかは正直微妙である。たどり着けないとしてもいいかな…という割り切りはある。

読むためのエンジンとして

色々な方策を考えたが、自分たちで読もうとするときに、強力なエンジンになってくれるものは、やはり「問い」なのだと思う。

「羅生門」は「語り」の問題も大いにあるが、空所が大きく残されている小説だからこそ、生徒が「問い」を持つ余地は非常に大きい。高校の三年間で子どもたちが読む小説の特徴を考えると、「語られない」空所が多く出てくるものばかりであり、それを「埋める」という地道な作業が必要である。

そういう方略を一番、効果的に教えられそうなのが「羅生門」である。

しかし、そうやって読んでいくのは、非常にしんどい作業である。だからこそ、そのしんどさを引き受けるには、自分自身の「問い」が必要なのだ。自分で持った「問い」だからこそ、その答えを知りたいという欲求が、読み進めるエンジンになってくれるはずなのだ。

「問い」についてはQFTを地道に取り組んでいるが…

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残念ながら、今回は時間がないのでQFTをやっていられない(QFTをちゃんとやろうとしたら1コマ使ってしまうので全6時間の予定ではどうもならん)。

たった一つを変えるだけ: クラスも教師も自立する「質問づくり」

たった一つを変えるだけ: クラスも教師も自立する「質問づくり」

 

問いの読むことへの影響などは松本修先生等の論考が参考になる。

読みの交流と言語活動 ―国語科学習デザインと実践―

読みの交流と言語活動 ―国語科学習デザインと実践―

 

 

自分は今回は「初発の感想」を「疑問」として生徒から集めて、「問い」という形に編集して生徒の手引きとして渡している。ただ列挙するのではなく、丁寧に分類し、難易度や適切さによって並べ替えて、先行研究などと照らし合わせながら、生徒が読むときの理解に近づけながら*1整理している。

この「質問集」を片手に生徒にもう一度、「羅生門」を読み直してもらうと、生徒自身がびっくりするくらい、ちゃんと読み直そうとするし、自分自身で勘違いしていたことや読み取れなかったことを修正しながら読んでくれるのである。

さらに、好きな問いに対して自分の仮説を出してもらい、一旦、集めてコメントをつけてからやっと初めての交流まで持っていった。

ここまでやって、やっとちゃんと自分たちで建設的な議論が出来るようになり、「楽しい」という感覚を持ってもらえた。ここまでくれば「にきび」のことや「境界の描写」のことや「語り手の特徴」など、一通り、普通の授業で教えるようなことを自分たちの交流の中できちんと拾ってくれている。ある意味で、一安心である。

さて、この先をどうするか…

ここまで楽しく読んでもらい、なおかつ一通りのことは押さえられているとなると、この先をどうやってこの先を進めるかが難しいところ。

生徒の交流の感想や意見のまとめを本日になってまとめているが、なかなか面白く読めているだけに、どうやって相互の読みを繋いでいこうかなぁと思うところである。今、一番欲しいのはICT環境である。これだけ色々な意見が出ているなら、一括で生徒に読ませたほうがいい。しかし、自分でこれを編集するのは無理がある……250人分を全部文字起こしするなんて無理。じゃあ、数人選ぶの?その行為がとても無粋に感じる。生徒の書いてきたものを読んでいると面白くってたまらないのに。

ICTがあればなぁ……一発で共有はできるのに。

*1:この辺りは何度も「羅生門」をやっている経験則である。こういうことが出来るから定番教材は強い。

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