昨日、こんなニュースが流れた。
いよいよ学校にICTが来るのか。お金が動くということが、何よりもインパクトしては強いのである。
学校の外側からやってくる
今回のこの話は教育再生実行本部の話など
学校ICT 1人1台の端末を 自民 教育再生実行本部 | NHKニュース
が下敷きにはあるが、文科省からの発表ではなくて、経済からの動きであることも大きい気がする。
特に記事の中にもあるように「国際競争力の強化などの観点」から一人一台が必要だという言い方をしているあたりがポイントだろう。教育の充実ではなくて、実利を目指しているあたりが、実際に実現性を感じさせるのである。
経済産業省が「人材育成」という観点から、学校教育にイノベーションを起こすべく、「未来の教室」事業を行っているが、そんなこともあって、経済産業省はだいぶ他の先進国のICT教育事情も調べている。
教育現場の理路ではなくて、国際競争のためという危機感から出てきている話ならば、現場が何を言っても動くのだろうし、やるといったらやるのだろう。
この辺りの話は、英語外部試験利用だとか大学入試改革だとかの事情によく似ている部分もあったり……。
現場のメンタリティも複雑で…
まあ、動くにしても、なかなか現場がそれに追いついていかない気もする。先日もこんな記事が出てくるような現実がある。
とにかく、「スマホは使わせたくない」という一点に並々ならぬ情熱と労力を注ぎ込んで「指導する」という事例を多く耳にするのである。
間違いなくスマホによって余計なトラブルは増えたし、重大事案に巻き込まれることも増えたのであるが、臭いものに蓋をする形式の対処を現状で続けている状況である。なかなか厳しい。
また、よく分からないものは使えないという意識も少なからずあり、現状の授業について困っていないとなれば、積極的に新しいものを使おうということも少なくなりがちなのである。安定しているものをわざわざ新しいものを突っ込んでガタガタにしたくはないという心情は働くのである。実際、かつて電子黒板が勇んで学校に入れられた時期があるが……電子黒板が機能しているところを見たことないな、うん。
どこまでを担い合うのか
おそらく、七転八倒はあっても、子どもたちがICT機器を持つことを遠ざけることは出来ないし、そうすることもするべきではなかろう。デジタルデトックスなんて言葉もあるけど、デトックスする前に、そもそも大量の情報を扱う授業や学校生活になっていない。
一般の大人は「子どもたちはデジタル機器を与えればすぐ使える」などと言いがちであるが、これは結構大きな誤認だと感じている。
生徒に授業で実際に何か質的な水準が必要になるアウトプットを求めてみるとすぐによく分かる。
確かにスマホのちょっとしたアプリなどを使いこなすことは出来るのだが、例えばクラウドサービスを使って共同で何かするということや例えば集めた情報を加工して次のアウトプットに活かすだとか、そもそもアカウントを作ったりパスワードを管理したり……そういう色々な知的な作業の根幹となるようなことには、驚くほど無知である。
そもそも自分がGoogleのアカウントを持っているのかなどということなどもよく分かっていない場合も決して少なくない(android使っているのに!)。
中途半端な使い方の知識を持っているので、今までと違うルールで動いているネット上でエライことになるし、強烈なやらかしをしてしまいがちなのである。
おそらく、今後の生徒に必要なスキルを考えると、ICT機器が使えることは社会に出るスタートラインとして重要である。そのためには、学校の中で十分にICTを使って何かをアウトプットする経験や必要に応じて使い分ける経験が必要である。
そのためには、個別にいつでもどこでも手段を選んで好きに作業できるICTなのに、学校で一括で管理したり一斉に同じ課題をさせたりということばかりの発想で運営していても土台無理な話なのである。
当然ながら、子どもなので、ICTを使えばやらかしは十分に考えられるが……それは、もう学校と家庭でどこで折り合いをつけるかという問題である。学校で担いきれないものまで引き受けてはダメだろうし、学校に縛られないで済むのがICTなのに学校に責任を押し付けるのもどうなのか。
使わないと分からないですよ
ICT、スマホなどを使ってやっていると、「新しいものが好きなのね」と、あたかも今までの授業を軽視している浮ついた人みたいな扱いを受けることがあるが、別にそういうわけではない。自分としては国語科教育の王道的なところを歩いてきたつもりなのだが……今もそういうつもりで毎日授業しています。その結果、ICTを使ったほうが楽しい、色々な国語の授業をできると思うのである。
学びの質を高める! ICTで変える国語授業 ―基礎スキル&活用ガイドブック―
- 作者: 野中潤
- 出版社/メーカー: 明治図書出版
- 発売日: 2019/02/07
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
使ってみないと勘所も分からないし、どんなことをやらかしてくれるかも分からないのです。