ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

【書評】『まんがで知る未来への学び』

なぜかはてなのリンクで上手く出ないので広告をそのまま貼り付け。

前作も良作だった『まんがで知る未来への学び』の続編です。

まんがで知る未来への学び――これからの社会をつくる学習者たち

まんがで知る未来への学び――これからの社会をつくる学習者たち

 

www.s-locarno.com

前作の一番最後が衝撃的な終わり方をしていましたが、その衝撃と向き合うような本作の展開となっています。

社会を変えるのは誰だ!?

本書の帯に大きく記されている「社会のは誰だ!?」という言葉。まさにこの言葉が本書のテーマをよく表していると感じます。

また、併記されている「変化を起こそうとすれば対立は避けられない」という言葉。この言葉も重い。特に職員室の先生同士のやりとりは見ていて息苦しくなるくらいに、実際の教員の体質がリアルに表れているな(笑)と感じました。逆にそこがリアルだったので、その後にスムーズに解決していったことに納得いかない(笑)。

話がそれたので元に戻すと、今回は前作の最後に示された「不吉な未来」がまさに伏線として活かされている。まさか、ここまで上手く使うとは、やられたと思いました(笑)。

前作は、学校を中心とした話だったのですが、今回は学校を中心としつつも、いよいよ地域社会まで話が広がっていく。そして、シビアにも完全な問題解決がされないままに終わる。明るい未来を予感させつつも、根本的には何も解決できないままに、問題に向き合うところまでで終わる。

子どもたちの未来を見据えて

このシリーズを読んでいて強く思うのが、作品の中に出てくる子どもたちの姿がリアルだなぁと思う。さすが、教育の現場で長く子どもの姿を見てきた方であると思う。

そして、そこで子どもたちが直面している問題やその問題と微妙にずれる大人の対応……そういう機微が非常にうまく表現されている。

そこで苛立つ子どもたちや問題意識を持った大人たちの姿は、まさに今、問題に直面しながらも、打つ手がなくて行き詰ってしまっている読者の似姿であるし、一方で、そういう対立を上手く調停していく吉良先生は、現場を変えようとするときに傍にいて欲しいと思う存在である。

周りと対立しても敵対してはいけない……そういう我慢強さと粘り強さを教えてもらえるようである。

また、現場を変えていくのが強いリーダーシップではないことも重要であろう。

スモール・リーダーシップ チームを育てながらゴールに導く「協調型」リーダー

スモール・リーダーシップ チームを育てながらゴールに導く「協調型」リーダー

 

誰か気づいた人が、吉良先生の助けを得ながらも、少しずつ周りを巻き込んで変化していく。トップダウンの変化ではないのである。

試されているのは、問題と直面しようとしている人の主体性なのである。どうやって自分の問題として引き受けていけるのだろうか、そういう可能性を探る物語である。

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