ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

PISAは一旦置いておこう…

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職場で隙を見て、一通り国立教育政策研究所の分析の概要は読んだ。

www.nier.go.jp

これを読めば、「日本の読解力は、平均得点のトレンドに統計的に有意な変化がない」ってはっきりと述べられているのに、順位だとかスコアだとかだけを見て(見ているならまだマシ)、「現代の子どもは読解力が落ちてる!」と大山鳴動しているのを見て、なんだか、もういいかなぁという気分になった。

せめて概要は読もう…

何度も繰り返すが、せめて「読解力」について論じるならば、国立教育政策研究所の結果概要くらいは読まないと、それこそ「読解力」がないと言われますよ

何だか、職場でイチイチ反論するのも事を荒立てるだけであるし、その議論で授業がよくなるとも、授業を変えていこうともならないと思うので、なあなあにお茶を濁そうと思うのです。

こういうときに、専門家でもない専門家ぶった人が何かを言い出すと非常に面倒なのである。

これらの本ももうかなり昔になってしまったが、この辺りから読み直していこう。

キー・コンピテンシー

キー・コンピテンシー

 
キー・コンピテンシーの実践――学び続ける教師のために

キー・コンピテンシーの実践――学び続ける教師のために

  • 作者:立田 慶裕
  • 出版社/メーカー: 明石書店
  • 発売日: 2014/03/28
  • メディア: 単行本
 

そしてコンピテンシー絡みの学力観については絶対に外せないのが

“新しい能力”は教育を変えるか―学力・リテラシー・コンピテンシー

“新しい能力”は教育を変えるか―学力・リテラシー・コンピテンシー

  • 作者:松下 佳代
  • 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
  • 発売日: 2010/08/01
  • メディア: 単行本
 

このタイミングだからこそ読み直しておきたい。

自分も読み直して、職場に少しずつ情報共有しようと思います。

個人的に思うこと

PISAの生データをダウンロードして分析するほどのスキルも余裕もないので、詳しい分析が出てきたら、それを参考にして勉強しておこうと思うが、国研の資料を眺めていて個人的に気になったことをメモしておこう。

今の自分の仕事としてはICTのことは、結構なウェイトを占めているが、そのことに関連して以下の資料が気になっている。

2018年調査補足資料 生徒の学校・学校外における ICT 利用

この資料の中でも二つほど。

一つ目が以下のグラフ。「学校外での平日デジタル機器の利用状況(学習)の経年変化」についての調査で「学校のウェブサイトから資料をダウンロードしたり、アップロードしたり、ブラウザを使ったりする」という項目についてである。

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質問が「それって並列に並べていいの?」と思うようなものではあるが、それは脇に置くとしても、OECD平均に比べると圧倒的に経験が少ない。

ICTを使って何か学習することの強みは、紙などの物理的なモノに縛られないで、自分の都合に合わせて自由に使えることなのに、そういう使い方の一初手になるようなこういう項目の回答率が低いのは、やはり活用なんてまだまだなんだろうなぁと感じるのである。

実際に、生徒にこういう作業を求めてみるとなかなか難しいことも多い。例えば、授業プリントをクラウドにアップロードして、好きにダウンロードしてよいよ、とすると「上手くダウンロードできない」「紙で配らないのは不公平だ」などなど……色々なものが飛んでくるものである。

逆にDropboxのファイルリクエストでデータのアップロードを求めても四苦八苦……でも、使わせないと分からないし出来るようにならないから、後からいくらでもフォローできるのだから、失敗させながら使わせますけどね。

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ついでに国際比較も。参加国の中で日本だけ「まったく使わない」が極端に多い……。

もう一つが、「学校外での平日のデジタル機器の利用状況」の(余暇)についての調査のうち、「自分でコンテンツを共有するためにアップロードする」という項目について。

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質問紙を見ると具体例として「音楽、詩、ビデオ、コンピューター・プログラム」が挙がっている。これをハードルを高いとみるか判断は難しいが、「まとまって自分で作るコンテンツ」という意味でのアップロードについてもかなり少ないのだなぁと改めて思わされる。

ICTの使い方が非常に偏って、限定的にしか使われていないとも言えそうである(が、実際のところはこれだけじゃよくわからない)。

今回の調査では「余暇」ではあるけど、「学校の授業として、コンテンツをアップロードする経験」がどのくらいあるのかということもデータで知りたいなと思うのです。

個人的に、授業の生徒のアウトプットはもっと気楽に学外にどんどんとアップロードされていけばいいのにと思うのですよ。現実問題としては、何かやれば「炎上」することになるので、教員の指導が厳しいことになるのでしょうけど……でも、そもそも、教員が検閲するのではなく、アップロードに伴う責任などを教えていく方向にシフトしていかないと、何も指導せずに、いきなり炎上に陥るケースが増えてしまうんじゃないかと思うのです。

あと、そもそもフィードバックが「身内」以外からくるということ自体に、学校や子どもにとってよい効果はあると思うのだよね。ICTならばコストは比較的低く、成果を広げることは出来るし、フィードバックもしやすい。

それこそ、探究をやっている学校は多いのだから、探究する生徒同士が、お互いに検索エンジンからたどり着いて、より一校では出来ないようなことをできるようになればいいのにと思うのです。

「炎上」も問題なのだけど、そもそも、「出せばいい」というような発表の仕方をするので色々問題が出てくるのでしょうから、授業の経過や生徒のジャーナルをどんどんリアルタイムで出していけば、成果だけが炎上するようなこともなくなるのでは……さすがにそこまで甘くはないか。

ICTが要らないと気楽にいうけど

読解力が下がったからICTは要らないとか、学力のためにICTは要らないだとか、ずいぶん気軽に言っている人が多いなぁと思うのだが、国際比較を見て「読解力」の順位は気にして、ICT活用度が最低だってことは無視なのは何なのでしょうね。

まあ、それはそれとして。

ICTを使って生徒がコンテンツをアップロードしたり、学習過程を公開したりすることで、もっと生産的で、豊かなことが……要するに楽しいことができそうじゃないですか。

その楽しいことを実現するために必要なスキルやリテラシーは決してレベルの低いことではないし、学校で経験しなければ、どこで経験することになるのでしょう?

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