ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

プリントを配るのを…

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コロナの影響もあり、LMSを導入して早半年以上が経ち、積極的に紙での配付を辞めてきたが、どのような変化が出ているだろうかというちょっとした振り返り。

スマホじゃ厳しい

さっそく、ICT推進派の腰を折るような話をして申し訳ないが、気軽にBYODという人は多いのだけど、生徒の端末に頼り切りのBYODでの運用は厳しい。特に、スマホで授業で求めるような高度な内容を、全部完結させようとするのは無理筋である。

ClassiでもスタディサプリでもGoogleクラスルームでも何でも良いけど、スマホでオンライン化したからといって、そうそう授業の中からアナログを排除することは厳しいし、思考の質や量という面では制約が大きいという印象がある。

もちろん、それでもちょっとした連絡や無くされたら困るようなプリント類を、オンラインで配信することで、だいぶ紙の印刷を減らすことが出来るので、「期待するほどの大きな変革はないけど、確実に生活の質は上がりますよね」という感じである。

しかし、繰り返すが、生徒の「スマホ」に頼り切りのBYODでは、授業としてはかなり制約があるという状況である。

まず、何よりも画面が小さい。決して老眼的な意味で言っているのではない。明らかに一度に入ってくる情報量が少なくなくなることが、思考の制約になっているし、活動の制約になってしまっている。B4の一枚で見通して、色々と作業できる物が、スマホのあの画面サイズでは見通せないなんてことは大いにある。何かを書いたり読んだりするときに、改ページの少なさは思考の差に結構な影響を与える。

また、操作性もスマホでは限界がある。今の若い子どもたちはスマホになれているからフリック入力が早い……なんてことがまことしやかに言われているけど、入力速度だけの問題ではないのだ。文章を入れ替えたり、表を作図したり、レイアウトを調整したりという作業をしようとすると、スマホは明らかに用が足りない。正直、タブレットも文章の構造をあれこれと工夫して書こうとすると操作性の悪さが気になってしまうくらいである。

この半年に、ゴリゴリとオンラインを使って色々な授業をしてみたが、どれもこれもラップトップでないと不便である…というよりは、そもそも期待する質にたどり着けないと痛感しているのである。個人的には、安価でかつ操作性も期待通りに出来るという意味では、Chromebook1択だなと思うのである。

iPadにはiPadの良さがあるのだけど、自分が求めるようなゴリゴリと読み書きして、文章を編集するような用途には、スマホやタブレットではちょっと厳しい。iPadを使うならサブ機として持ってくれるというなら最高なんだけど…。

プリントを減らすことは働き方改革

今年は予想外に忙しいのだが、それでも仕事が何とか回っている一つの要因は、プリントの印刷が減ったからということは大きい。SDGs的にも紙資源を積極的に減らすことは正しいと思いたい。

紙を減らすことによって、印刷にかかる細切れの時間を減らせることが出来ているのが、労働時間の圧縮という意味では非常に大きいのだ。

考えてみれば、全校生徒分のプリントを印刷するのに、どれくらいの時間がかかっているだろうか。この印刷物をすることをオンライン配信に代替するだけでも、かなりの労働時間の圧縮になる。

「オンラインだと伝わらない可能性がある」……いや、紙だってちゃんと伝わらないじゃないってあるあるでしょう。配信したものを読まないというクレームまで受け答えするべきなのでしょうか。過渡期には仕方ないにせよ、少しずつ移行していかなければ、いつまで経っても労働時間の圧縮なんて出来ない。本気度が見え隠れするのである。

生徒から、プリントを紙で欲しいという要望は根強いが、その一つの原因がスマホ画面の問題である。

とにかく、スマホからだと扱いにくいのである。画面も初期設定だと触っていないとすぐに消えるし(地味にこの画面が消える問題は大きい)。

とにかく早く一人一台を…

一人一台は、パソコンに慣れるとか、プログラミングとか、授業を変えるとか、そういう話ではなく、そもそも持っていないとお話にならない、スタートラインに立てないというものだ。教科書と筆記用具とノートを持たないで授業に来るのと同じくらい、無いとにっちもさっちもいかないものだ。

しかも、厄介なことに、この手の言説はICTでのアウトプットに挑んだことのない人には全く理解できないだろうということである。別に手書きで出来るなら遊ばせる道具を持たせる必要は無いだろという理路である。

いや、違うんですって。

今まで根性論でやっていたアウトプットをショートカットして、質も量も増幅してくれるのがICT機器なので、道具として中途半端なBYODでは期待するほどの効果が出ないし、使わないことでドンドンと差がついていくことに恐ろしさがあるのですよ。

スマホでチマチマしていることに嫌になって「ICTなんてダメだ」なんていう人はいるかもしれないが、逆ですよ……中途半端な物を使わずに、ちゃんとした道具をぜひ確保してやって欲しいところだ。

この本がやっぱり使い方のデザインとしては参考になるので、ぜひ、イメージを持ちたい人には勧めたい。

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