ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

AIと要約

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こんなサービスを見つけた。

ai-tanteki.com

AIが苦手だと言われていた文章の要約をしてくれるんですってよ!

精度は振れ幅がある…

実際に面白半分でやってみた。

Google検索でたまたま上の方に出てきたのものをURLから取り込ませて要約させてみた。

www.sankei.com

原文はちなみに以下の通り。

大阪府の吉村洋文知事は22日、新型コロナウイルス特別措置法に基づく政府の緊急事態宣言の発令時期について「人が大きく動く週末から適用になるよう(国に)お願いしている」と述べた。スポーツイベントは「中止か延期、もしくは無観客で実施すべきだ」との考えを示した。府庁で記者団に答えた。
政府は23日の対策本部会合で発令を決める方針で、発令期間は4月下旬から5月中旬までの3週間程度が軸とみられる。宣言発令時の休業要請の対象について、府は国との調整に際し、百貨店やテーマパーク、大型商業施設など「人が集まる目的となる施設」を含めるよう主張している。
吉村氏は記者団に「変異株の状況や医療逼迫(ひっぱく)の厳しい状況をみたとき、営業時間短縮だけでは(感染拡大を抑えるのが)難しい。休業の協力を(事業者に)お願いすべきだと政府に強く求め、最終の詰めの段階に入っている」と述べた。

(2021/04/22 21:10確認)

これを50%で要約させてみると……

大阪府の吉村洋文知事は22日、新型コロナウイルス特別措置法に基づく政府の緊急事態宣言の発令時期について「人が大きく動く週末から適用になるよう(国に)お願いしている」と述べた。
政府は23日の対策本部会合で発令を決める方針で、発令期間は4月下旬から5月中旬までの3週間程度が軸とみられる。

おぉ…?さらに30%の要約にすると……

政府は23日の対策本部会合で発令を決める方針で、発令期間は4月下旬から5月中旬までの3週間程度が軸とみられる。

うーん…?別のニュースになっていないか?

確かに緊急事態宣言の話題であるということは分かるのだが、ニュースの書きぶりにあった緊迫感はなくなっているような気がする。

ちなみに、これは割と5W1Hがはっきりとしているニュースなので比較的、論旨を損ねないで分かりやすい要約になっているのだが、政治や人間関係トラブルのようなニュースだとさらに精度は下がる感じ。

まさに文字通り、とても機械的に要約しているような印象を受ける。とはいえ、本文からどの言葉を選ぶのかという選び方が、単純な繰り返しだけではなくて考えられているようなのにちょっとびっくり。

こんな感じの要約は…

この感じは要約に慣れていない生徒の出してくる要約のようである。生徒の要約と並べられると見分けが付かない……なんてことはないと思うが、何だか似ている気がするのである。

たぶん、要約を苦手にしている生徒も、単純にキーワードやキーセンテンスを抜き出して並べるという点では、このAIの出力してくる要約とよく似ている。ただ、生徒の出してくる要約の方が、生徒自身の判断が入るせいか、もっと具体的な内容に引っ張られた要約になったり、価値判断の含まれ方が強い気がするのである。

このAIの要約と苦手にしている生徒の要約の共通点としては、接続表現が不自然な点にあるように感じる。

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文章術の本で必ず「接続語」の話題は出てくるが、こうしてAIの要約でも気になってくるとは……。

書くことの授業の中で、もっと意識的に接続表現に関わる指導を考えても良いのかもしれない。

要約は目的に応じて…

しかし、まあ、国語科の授業でよく教科書の要約を書かせるということが行われるのだが、本来、要約は何かの目的のために行われるものである。要約を書くことを目的に本文を読んで要約を書くことはない。要約が書けるかで確かに生徒の理解度もよく分かるのだが、一方で、要約の方向性を決めるのは、どのように利用するかという目的とも切り離せないものであると思うのだ。

伝えるための要約……その意味では、このAI要約と生徒の書いてくる要約が似ているように感じるのは「相手」や「目的」を想定していない授業を反省する必要があるのかもしれない。

なお、このAI要約ですが、全く随筆には無力です。意味は通るが「そこじゃねえよ!」という感じになります。

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