「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料(高等学校編)が出ましたね。
次年度からの高等学校の観点別評価やそもそも科目立ての変更、授業の改善のためにも機会がある度に読み合わせておきたい資料の一つです。
雑感
ざっと眺めた感想を。理屈の上で突き詰めて考えることは、また今度いずれかの機会に。
- 資料の縦・横の方向くらい整えてくれ(怒)
- 総説については小中学校と異なるのは、専門学科についての言及とちょっとした文言の違いのみ。まあ、当たり前である。
- 第2編の「内容のまとまりごとの評価基準」についても、学習指導要領の文言の違い以外に違いはなし。これも当たり前である。
- 第3編の「単元ごとの学習評価について」も作成のポイントは小・中学校編と違いは無い。
(https://www.nier.go.jp/kaihatsu/pdf/hyouka/r030820_hig_kokugo.pdfより。2021/08/22 17:25確認)
- さて、本番は学習事例である。6事例挙げられているが、これは必修科目である現代の国語と言語文化を3事例ずつ挙げていることによる。
- 中学校編と比較すると、ICTの活用が各事例にかなり色濃く出てきている。これは社会の情勢を受けて、意識的にICTを盛り込んだのだろうか?逆にいうと、小学校編、中学校編のICTの活用はけっこう低調。
- 一人一台端末が保障されていない高校なのに、「クラウド」や「アンケート機能」だとか「共有」だとかバリバリ使うぞ!!って姿勢の言葉が出てくるのにちょっと世の中の流れを強く受けたのだなぁという印象を持つ。(ワードクラウドで分析することを例に挙げているし!)
(https://www.nier.go.jp/kaihatsu/pdf/hyouka/r030820_hig_kokugo.pdfより。 2021/08/22 17:25確認)
- 毎度、思うのだが、各事例の生徒解答例が優秀すぎる。これだけ優秀なら確かにこの時間配当で進められるだろうけど、現実にはこんなに思い通りには行かないので倍の時間はかかるな…。この手の実践例を見ていると毎度思うことである。
- 「現代の国語」は意図しているのかは分からないが、かなり振り切ってこれまでの「現代文の」授業のスタイルや教えていたこととは切り離した例を示しているように感じる。前回までの資料と比較すると情報量が全く異なる点に、ここでの授業改善に対する強いメッセージ性を感じる。その一方で、こういう「学力観」の根底を理解しないと、何を授業でさせるつもりなのかをこの資料から読み解くことは困難なのではないか?
- 「言語文化」についても事例4と事例5はなかなか挑戦的。単元テストの例を挙げたり、これまでとは異なる古典の素材の取り合わせ方を示したりしているのは挑戦的に見える。生徒解答例に出てくる文言や評価の程度も自分には納得できるものであるが、文学を専門とする人にはどう見えるのでしょうね。
- 「言語文化」の事例6はかなり低調。これまでにも散々に行われてきた単元例を挙げている割には、時間配分にも現実味が無いし、生徒への問いについても面白くない。近代以降の文学の時配がかなり少なくなる以上、ここでの事例についてはもっと面白いものであって欲しかったし、比べ読みについてももっとよいアイデアはあるんじゃ無いか?現状の指導書に掲載されているレベルの話ですよね、これ。
- この巻末資料に嫌な圧力を感じます…
(https://www.nier.go.jp/kaihatsu/pdf/hyouka/r030820_hig_kokugo.pdfより。2021/08/22 17:25確認)
まとめとして
これだけ細かく示されたということは、とても親切であるし授業についてなかなか問題を抱えている高校の現状(高校はかなり学校での温度差や違いは大きいけど…)を考えると、色々と考えて挑戦するためにはよい資料になるのではないかと感じます。特にICTについてこれほど多く活用例を挙げて説明するとは予想していなかったし、GIGAスクールの成果でICTの扱いに慣れた生徒が入学してきたときに、ちゃんと高校が受け入れるための参考資料としても活用出来るのではないかと感じる。
とは言え、逆にここまで分厚く細かく説明がされていることに息苦しさを感じないわけでもない。評価の方法であるとか、授業の見取りの仕方であるとか、本来はもっと教室の実情に合わせてゆとりがあってよいものが、ずいぶんとカツカツとしているように見える。
また、少し上でも言及したけど、そもそもの学力観の揺れ幅がかなり大きいため、今、教科書の内容を解説することを授業の中心として考えている教室があるとしたら、その状態からこのような実践への転換はかなり難しい。
しかし、教科書見本例を見ていて思うが、教科書自体がこの方向の授業のための教材や学習のてびきに変化している傾向があることを考えると(逆に、あまりこっちの方向に来たくないという姿勢を示している教科書も大いにあるけど)、ちゃんと今年のうちに学内で、教科内でどういう方向で授業をしていきたいのか、どんな授業が出来るのかを考えないと、来年になって教科書をあけてびっくりするようなことになるだろう。
これらの本の高校版を切に願います。