今年の高校三年生は中学時代からGIGAスクール構想のために、一人一台端末が使えるようになって学校生活を過ごした世代である。
高校卒業後の進路を考えると、半分くらいの生徒が社会に出て、半分のくらいの生徒は大学などに進学する。さて、子どものころから一人一台端末を使って育ってきた世代が社会に出て行くことにはどのくらいのインパクトがあるのだろうか?
受験にICTは必要ないとはいえ…
悲観的な見方をするのでれば、「受験にICTは必要ない」とICT端末を使わせないで生徒を押し出す高校は少なくないだろうし、受験をしないような場合であっても、高校のICT活用はかなり低調な現実がある。
そのため、おそらく今年の世代から劇的に何かが変わるということは難しいのだろうという気はしている。
「受験にICTは必要ない」と言われてしまえば、確かにCBT的なことを行う大学は数えるほどしかないため、まあICTは関係ないと言われがちだ。受験に使えると主張しようとしてYouTubeの講義動画やスタディサプリを上げるのも、コストと成果が見合っていない感じもしている。そもそも動画授業は教育のICT活用としては本丸ではないだろうし。
受験のことだけを見て、他のことに知らんぷりするならば、ICTについてはしばらくは見ない振りが出来るだろうし、ICTの活用の有無で差がつくこともしばらくはないだろうと思っている。
しかし、自分の教えている範囲でも感じるが、端末を使えるか否かということで、かなり情報へのアクセスの能力には差がついていると感じているし、アウトプットの量についてはもはや比べようながいほどに増えている。
そういう、地味に色々な活動を支える能力の差が、どれだけインパクトを与えていくのかということについては今後も中長期的に気になるところだ。
確実に問題意識の差が広がる
おそらく高校のICT活用については、今後も差が開き続ける一方だろうと思う。
効果を実感した学校は二度とない状態に戻ることは出来ないだろうし、使わない学校は理由を見つけて使うことを拒否し続けるだろうと思う。
高校は相対的に個人で授業や学級をやっているという意識の持ち方をする人が多いため、自分のやりたいことをやり続けてしまうという状態に陥りやすい構造もある。なかなか変わらない、変わるきっかけがないからこそ、高校のあり方って難しいと思うところだ。
おそらく、使うこと、使わないこと自体が高校の入り口で、学校選びで影響していくのだろうと思う。
そして、進学校が変にICTを使わないことにプライドを持って、周りに妙な影響力を持つという構造も続いていくような気がしている。
学校選びの基準自体も少しずつ変わっている気がするので、その構造がいつまで続くのかは分かりませんが。