
東京都教委が保護者からのハラスメント対策ガイドラインを策定した。2025年4月に施行された東京都カスタマー・ハラスメント防止条例を受けての動きである。
何が示されたのか
日本教育新聞の記事によると、ガイドラインでは、カスハラに該当し得る行為として、過度な謝罪や土下座の要求、教員の異動に関する不当な要求、業務に支障が生じるような長時間の居座りや電話などを挙げている。
そして対応の目安として「面談は平日放課後30分まで、状況に応じて60分まで延長」「複数人での対応」「ボイスレコーダーの活用」といった具体的な方法が示されたという。
これを読んで自分が思ったのは、「基準を決めるのはいいことだな」ということである。
「緩さ」の功罪
学校というのは、いい意味でも悪い意味でも緩い部分があった。明文化されたルールがないからこそ、現場の判断で柔軟に動けた面もある。保護者との関係においても、杓子定規ではない対応ができることが学校の良さでもあったのだろうと思う。
しかし、その「緩さ」は同時に、教員を守る盾がないということでもあった。
「どこまでが正当な要望で、どこからが過度な要求なのか」という線引きが曖昧なまま、個々の教員の対応力に委ねられてきた。
結果として、真面目な教員ほど際限なく対応し続け、疲弊していくという構図が生まれていたのではないか。
シンプルであることの価値
「30分」という数字が示されたことには意味がある。これは保護者を突き放すための数字ではなく、「ここまでは誠実に対応します」という姿勢を示すための基準なのだろうと思う。
根拠に照らしてシンプルに話していこう、という方向性は悪くない。
「なぜ30分なのか」
「なぜ複数人対応なのか」
そこには条例という根拠がある。
教員が個人の判断で線を引くのではなく、組織としての基準に基づいて対応できる。これは教員にとっても、保護者にとっても、実はわかりやすい関係性なのではないだろうか。
懸念がないわけではない
もちろん、ガイドラインができたからといって、すべてがうまくいくわけではない。「カスハラ」という言葉が独り歩きして、正当な要望まで門前払いにするようなことを教員はしたらいけない。
保護者が学校に意見を伝えること自体が萎縮するような空気はつくるべきではない。
また、「30分」という基準が形骸化して、とにかく時間で切り上げればいいという対応になってしまうリスクもある。
本当に必要な対話まで打ち切る口実にしてはいけない。
学校がわかりやすくなるために
自分が期待したいのは、学校の中がシンプルでわかりやすくなることである。何がOKで何がNGなのか、どこまでが学校の役割でどこからが家庭の役割なのか——そうしたことが明確になれば、教員も保護者も無駄に疲弊することが減るのではないかと思う。
このガイドラインが、教員を守るための「盾」として機能するのか、それとも保護者との対話を閉ざす「壁」になってしまうのか。それは結局、現場でどう運用されるかにかかっている。
2026年度から都立高校で活用が始まり、区市町村にも共有されるという。今後の動きを注視したい。




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