ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

学校は「デジタルの中の民主主義」から逃げられない

今日は衆議院選挙の投票日である。

SNSが選挙を動かす時代に

2024年の東京都知事選、兵庫県知事選、そして同年の衆院選あたりから、日本でもSNSが選挙結果を大きく左右するようになった。「SNS選挙元年」とも呼ばれた2024年を経て、今回の2026年衆院選はその流れがさらに加速している印象を受ける。

日本経済新聞の調査によれば、今回の衆院選に関するYouTube動画の再生数のうち、匿名投稿者による動画が7割を占め、10秒〜1分程度のショート動画が再生数の大半を占めているという。*1Yahoo!ニュースの「みんなの意見」ユーザー投票(統計的な世論調査ではない)でも、投票の参考にする情報として「SNS上の情報」が約29%に達している。*2もはやSNSは選挙の「おまけ」ではなく、有権者の判断を形づくる主要な情報環境そのものになっているのだろう。

子どもたちのすぐそばにある「選挙」

ここで気になるのは、この情報環境の中に子どもたちがすでにどっぷり浸かっているということだ。

選挙直前の2月4日、LINEヤフーが中高生を対象としたワークショップ「読み解くチカラ2026冬」を開催した。entaxの報道によれば、約20人の中高生がフェイクニュースの見分け方を実践的に学んだという。*3

同じイベントについてJapan Todayも報じており、LINEヤフーの大山成道(Narumichi Oyama)氏のコメントが紹介されている。

若い世代はSNSやAIを使いこなしているように見えるが、教育がその変化に追いついているかは疑問だ、という趣旨の発言だ。また、総務省の2025年の調査(回答者約2,800人、15歳以上)では、10代〜30代でフェイク情報に触れた人のうち約半数がそれを何らかの形で他者に共有した経験があるという結果も報じられている。*4

つまり、子どもたちは「情報の受け手」であると同時に「拡散者」でもある。しかも、それが選挙という民主主義の根幹に関わる場面で起きているのだ。

学校がこの問題を「知らないフリ」できるだろうか

自分が考えるのは、これはもう「情報モラル」の範疇を超えているということだ。「ネットで悪口を書いてはいけません」「個人情報を載せてはいけません」という話では到底カバーできない。

選挙に関する偽情報や切り抜き動画がアルゴリズムによって増幅され、それが有権者(あるいは将来の有権者)の政治的判断に影響を与えている。これは情報の真偽を見極める力だけでなく、民主主義社会の一員としてデジタル空間にどう参加するかという問いそのものである。

FNNプライムオンラインの報道では、国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの山口真一准教授が、2024年頃からSNSが選挙結果に影響するようになったと分析している。同記事では、フェイク情報を見抜ける人はわずか14.5%程度という専門家の指摘も紹介されている。*5大人ですらこの状況なのだから、子どもたちに「自分で気をつけなさい」と言って済む話ではない。

まあ…正直に言えば、学校現場でこれを正面から扱うのは簡単なことではない。

政治的中立性への配慮、カリキュラムの余裕のなさ、教員自身のデジタルリテラシーの問題…ハードルは山積みだ。それは自分自身にも跳ね返ってくる話でもある。

 

 

「読み解く力」は国語科の仕事でもある

ただ、少なくとも国語科の教員として思うのは、情報を「読み解く」という営みは、まさに国語科が長年やってきた(やろうとしてきた)ことと地続きだということだ。

テクストの信頼性を評価する、書き手の意図や立場を読み取る、複数の情報源を比較して判断する――これらは論理国語や情報の扱いに関する学習指導要領の内容とも重なる。

LINEヤフーのワークショップのような取り組みが企業主導で行われていること自体は歓迎すべきことだが、それが「学校の外」で起きているだけでいいのか、という問いは残る。

NHKの報道でも、今回の衆院選で再生可能エネルギーや外国人に関する事実でない海外の情報がSNSで拡散されるケースが相次いでいることが報じられている。*6デジタル空間が民主主義のインフラになっている以上、学校教育がそこに知らぬフリをし続けるのは、もはや「中立」ではなく「不作為」に近いのではないだろうか。

選挙が終わった後も、子どもたちのタイムラインには情報が流れ続ける。

その環境の中で判断し、参加し、時に立ち止まる力をどう育てるか。答えは簡単には出ないが、少なくとも「それは学校の仕事ではない」とは言えない時代に来ているのだろうと思う。

*1:「衆議院選挙のYouTube再生数、7割が匿名投稿 政党発信の4.6倍」日本経済新聞、2026年2月3日 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC012LO0R00C26A2000000/

*2:「衆院選 フェイク情報への備え確認」Yahoo!ニュース、2026年2月7日 https://news.yahoo.co.jp/pickup/6569038 内「みんなの意見」ユーザー投票

*3:「選挙前に必須!中高生が学ぶフェイクニュース攻略法『SNSをよく使う世代だからこそ、気をつけないといけないことがある』」entax、2026年2月6日 https://www.entax.news/post/202602061815.html

*4: "Social media-savvy teens given chance to spot fake news in Japan election campaign" Japan Today, 2026年2月7日 https://japantoday.com/category/national/focus-digital-native-teens-given-chance-to-spot-fake-news-in-japan-election

*5:「選挙戦はSNSの影響力が拡大 専門家『フェイク情報を見抜けるのはたった14.5%』生成AI時代の情報リテラシーが試される」FNNプライムオンライン(Yahoo!ニュース配信)、2026年2月3日 https://news.yahoo.co.jp/articles/6c38944185465ae1c26d1fb152bf011ff1843108

*6:「衆議院選挙 事実でない海外の情報やデータがSNSで拡散 "感情揺さぶられる情報見ても 安易に拡散しない"」NHKニュース、2026年2月4日 https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015043271000

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