ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

「振り回される労働」の深刻さ

教員の精神疾患による休職が止まらない。東洋経済オンラインの妹尾昌俊氏の記事によれば、2024年度に精神疾患で1カ月以上休んだ公立学校教員は1万3310人、在職者の1.44%で過去最多だという。

世の中の平均が0.5%であることを考えると、教員という仕事がいかに精神的に厳しいかが数字として明らかになっている。

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しかもこの数字は「氷山の一角」に過ぎない。記事が指摘するように、1カ月未満でもかなりしんどい思いをしている教員は大勢いるし、離職してしまえばカウントすらされない。休職者のうち約2割が離職しているという事実を考えると、統計に表れている以上に深刻な状況が広がっているのだろう。

労働時間だけの問題ではない

教員の働きすぎはもう何年も前から言われ続けていることだが、自分が問題だと感じるのは単純な「長時間労働」だけではない。教員の労働が精神的にきついのは、自分の裁量でコントロールできない仕事があまりに多いということなのだ。

どれだけ入念に授業準備をしていても、生徒指導上の問題が突然飛び込んでくればすべてが後回しになる。

「今日はこれをやろう」と思って出勤しても、その通りに一日が進むことなどほとんどない。

教員の場合は周囲の状況に大きく振り回されながら、なおかつ労働時間も長い。この二重の負荷が精神的なダメージを深刻にしているのだろうと思う。

記事の中で、精神疾患の要因として「職場の対人関係」が大きいことが示されていたが、これも「振り回される」構造と無縁ではない。

上司である校長との関係、同僚との関係、保護者との関係——自分でコントロールしにくい人間関係の中で、どんどん追い詰められていく。

しかも20代、30代での増加が顕著だという。若い教員が早い段階で疲弊してしまう構造は、教育の持続可能性そのものを脅かしている。

那覇市の挑戦から見えること

記事では、精神疾患による休職率が長年全国最多だった沖縄県・那覇市の取り組みが紹介されていた。文科省のモデル事業を活用し、産業保健師によるミニ研修(一次予防)、LINEを活用した情報提供と相談体制(二次予防)、そして復職支援を校長任せにせず専門家が担う体制(三次予防)を連関させた結果、精神疾患による休職者が前年から14人減少したという。

自分が特に重要だと思ったのは、復職支援を「校長のみで頑張る体制」から転換したという点だ。記事が指摘するように、校長自身がメンタル不調の要因になっているケースもあるし、校長はメンタルヘルスの専門家ではない。

嫌な言い方をするが、加害者かもしれない人にケアを任せるという構造そのものに無理がある。

ただし、この那覇市の取り組みは来年度以降の継続が不透明だという。メンタルヘルス対策は1〜2年で劇的な成果が出るものではないだけに、ここで手を引いてしまうのはもったいない…。

「使い潰す」時代はとっくに終わっている

教員を使い潰してどうにか学校を回す。そういう時代はもうとっくに終わっている。いや、そもそもそんな時代が「どうにかなっていた」かどうかも怪しい。

表面的に回っていただけで、その裏では多くの人が消耗し、壊れていたのだろう。

これだけ教員不足が深刻化している今、新しい人を採用することも大事だが、今いる人を大切にできているかという問いのほうがよほど切実だ。

入り口を広げることばかりに注目が集まるが、出口から人が流れ出ていく状況を止めなければ、いくら採用しても焼け石に水である。

教員のメンタルヘルス対策を「あればいいもの」ではなく「なくてはならないもの」として位置づけられるかどうか。それは結局、社会が教員という仕事をどう扱うかという問題に行き着くのだろうと思うのである。

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