
千葉県教育委員会が、県立学校160校と教育委員会本体に法人向け情報発信ツール「note pro」を一括導入すると発表した。都道府県単位での一斉導入としては全国7例目になるという。
制度としてのインパクト
今回の取り組みのポイントは、個々の学校の判断ではなく、教育委員会主導で160校に一括導入するという「制度的な」動きであることだろう。学校HPとnoteを連携させ、学校HPにnoteの最新記事の見出しを自動で一覧表示する仕組みも整えるという。つまり、「やりたい学校がやる」のではなく「全校でやる」という設計になっている。
これは学校広報の可視化という意味では大きな一歩だと思う。
各校の取り組みを県教委が構築する特設メディアで横断的に閲覧できるようにするというのも、進学先を検討する小中学生やその保護者にとってはありがたい話ではある。
問題は「誰が・何を」発信するのか
自分がどうしても気になるのは、この発信の「主語」が誰になるのか、ということだ。
note proの教育利用は、すでに全国各地の学校が取り組んでいる。
その運用の仕方には、かなりの温度差がある。大人が公式アカウントとして管理し、きれいに整えた広報記事を出すパターンもあれば、生徒が自分たちの学びを自分たちの言葉で語るような運用をしている学校もある。
自分としては、後者の方に大きな教育的価値を感じている。
子どもたちが「読み手」を意識しながら、自分たちの学びの意味を言語化して発信する。その過程で、何を書いてよくて何に配慮すべきか、どう伝えれば誤解を生まないかを考える。よい学びだろうし、今までの学校に足りないことである。
一方で、大人が管理する公式広報としてのnoteは、どうしても「見せたいもの」を「見せたいように」出す方向に傾きがちだ。
学校ブランディングの文脈では当然の選択ではあるのだが、そこに子どもたちの声がどれだけ反映されるかは別の問題である。
160校一括という規模で起きうること
160校に一斉導入されると、発信の「型」がどうしても標準化されやすい。
テンプレート的な記事が並ぶ未来も想像できてしまう。
県教委がまとめサイトを作って横断的に閲覧できるようにするという構想も、比較可能性を高める反面、各校が「見劣りしないように」と体裁を整える方向に意識が向きかねない。
現場の教員にとっても、これは新たな業務負担になりうる。
広報担当が決まり、記事の作成・承認・投稿のフローが加わる。「誰がやるのか」という問いは、そのまま校務分掌の問題として降りかかってくる。
子どもが伸び伸びと発信できる余地はあるか
千葉県の教育委員会の施策は、正直なところ、色々と物議を醸すことが少なくない。
自分も「それはちょっと…」と思わされる場面が多くてね…。
今回の取り組みも、発信基盤が整うこと自体は歓迎したいが、それが大人による管理的な広報に閉じてしまうのか、子どもたちが伸び伸びと自分たちの学びを語る場になるのかで、意味はまったく変わってくる。
学校広報のツールが整備されること自体は悪いことではないと思う。学校は外から見えづらいのだ。
だが、「誰の声を届けるのか」という問いを抜きにして、プラットフォームだけ導入しても、それは単なる広報インフラの更新に過ぎない。
せっかくnoteという、比較的自由度の高いプラットフォームを使うのだから、子どもたちが主語になれる余地を残してほしいなあと思ったりもする。




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