
13日から始まるフジテレビの新ドラマ「サバ缶、宇宙へ行く」と、文部科学省がタイアップしているのだという。
記事によれば、文科省はこのドラマと組んで「『夢』が『夢』で終わらない場所。それが、専門高校」というキャッチコピーのポスターを作り、全国の中学校に掲示する予定らしい。
松本文科相も会見で「専門高校の役割は益々重要になっている」と語っていて、ドラマを通じて専門高校の学びの魅力を中学生やその保護者に届けたい、という狙いのようだ。
ドラマの舞台は、福井県小浜市の若狭高校。かつての小浜水産高校である。
サバ缶が宇宙に行ったという、本当にあった話
このサバ缶プロジェクト、実話としてもう本当にすごい話なので、「探究」に関わる人には全員に知っておいてほしいと自分は思っている。「探究学習」という言葉が学習指導要領に書き込まれて一般化するよりずっと前から、当時の担当の先生と生徒たちが、何年もかけて粘り強く取り組み続けた。その結果として、最終的にサバ缶が本当に宇宙に飛んでいったのである。
書籍にもまとまっているし、昨年は「プロジェクトX」でも取り上げられていた。自分も放送を見ながら、「学ぶってこういうことだよなぁ…」と何度も唸った。
テンプレ化された探究の枠に収まる話ではなく、地域と生徒と教員のもがきの中から立ち上がってきた学びだ。
ドラマがどう描くかは分からないけれど、現実の重みは相当なものだと思う。
普通科の役割が、揺らいでいる
ここから少し話を広げたい。文科省がわざわざ専門高校の魅力をPRしないといけない、というそのこと自体に、いまの高校教育の事情がある。
少子化の中で、公立高校の普通科はかなり苦しい状況に置かれている。
トップの進学校と呼ばれる学校でさえ、倍率がかなり厳しい都道府県が増えてきた。県立の普通科というのは、身も蓋もない言い方をすると、有名大学に進学する生徒を囲い込む装置として機能してきた学校が中心である。
良い大学に行くための場所、という期待が、社会からも保護者からも大きかった。ところが私学との競争もあって、その装置がうまく回らなくなってきている。
そこで、公立普通科の役割って結局なんなんだ……という議論が、ここ数年いろんな場所でくすぶっている。
普通科の魅力をどう作り直すかという問いは、簡単には答えが出ない。そして逆説的に、「むしろ専門学科のほうに、これからの社会のニーズが眠っているんじゃないか」という声も、静かに広がってきている。
子どもが減って、世の中全体で人手が足りなくなっている時代だからこそ、自分のやりたいことを深掘りできる専門高校の学びに、改めて目が向けられているのだ。
今回のタイアップも、その流れの中に置いてみると、また見え方が変わってくるだろうと思う。
偏差値の物差しは、そう簡単には消えないけれど
まあ、とはいえ、保護者世代の感覚で、偏差値という軸を完全に無視するのは、現実的にはなかなか難しい。
自分も進路指導の場面で、その力学の強さは毎年のように感じている。数字は分かりやすいし、分かりやすいものは強い……。
それでも、サバ缶が宇宙に飛んでいくような学びがドラマとして可視化されて、ポスターとして全国の中学校に貼り出される。
それ自体は価値観の変化が少しずつ始まっていることなのだと思う。「夢が夢で終わらない場所」というコピーが、どこまで中学生や保護者に届くかは分からない。
届かないかもしれない。
でも、偏差値以外の軸で自分の進路を選んでいい、と思える子どもがほんの少しでも増えるなら、こういうタイアップも悪くないと思うのである。





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