ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

追手門学院大学の生成AIガイドラインを読んで

追手門学院大学が、2026年4月から全学生約9,500人にGeminiとNotebookLMの利用環境を提供し、あわせて「学生向け生成AI利用ガイドライン」を制定したというプレスリリースを読んだ。

www.otemon.ac.jp

これは大学として一歩踏み込んだ動きで、初等中等教育の現場にいる自分から見ても示唆の多い内容だった。

三段階を授業ごとに明示するという設計

ガイドラインの骨子は「原則禁止」「条件付き許可」「積極的利用」という三段階を設定し、各教員が初回授業でこのいずれか、あるいはその組み合わせを明示するというものらしい。

これはありそうで、なかなか制度として整えられてこなかった枠組みなのである。

「生成AIをどう使っていいかわからない」という悩みは学生にも教員にもあって、その曖昧さが結局「とりあえず禁止」という消極的な運用に流れていく場面を、自分も身近に見てきた。

授業の最初に「この授業ではこう扱う」と契約のように明示するだけで、学生は判断材料を得る。「使ってはいけないのか、条件付きで使っていいのか、むしろ積極的に使うのか」を授業ごとに切り替えて考えるという経験は、それ自体が生成AIとのつき合い方を学ぶ実地訓練になるはずだ。

「壁打ち相手」という位置づけ

プレスリリースの中で自分が一番気になったのは、生成AIを「答えを出す機械」ではなく、自らの思考を深めるための「壁打ち相手」として位置づけている点である。

これはきれいごとに聞こえるかもしれないし、実際の運用で本当にそうなるかは別問題だろうとは思う。学生が「壁打ち」のつもりで使い始めても、課題の締切が迫れば「答えを写す」方向に流れていくことは十分に起こり得る。

それでも、大学が公式の文書として「壁打ち相手として使う」という基本姿勢を言語化したこと自体に意味があると思っている。

方針が言葉になっていれば、学生も教員も、その方針を踏まえて議論ができる。何もないところから議論を始めるのと、共有された土台の上で議論するのとでは、出発点がまるで違うのだ。

もちろん、現場での実装には苦労があるだろうと思う。三段階の使い分けを教員が一貫して運用できるか、学生がそれを理解して切り替えられるか、課題評価の場面でどこまで許容するか…細かいところを詰めようとすれば、論点はいくらでも出てくる。

ただ、運用が難しいことを理由に方針を出さないでいるよりは、方針を出して走りながら調整していく方がはるかに健全だろうと思う。

方針があるからこそ「ここがうまくいっていない」「ここは見直すべきだ」という議論が成立するわけで、何もないところから議論を始めるのは、ずっと遠回りなのである。

高校現場から見て

高校現場では、生成AIの扱いはまだまだ個々の教員の裁量に委ねられがちで、学校としての方針が明確に示されているケースは多くないように思う。少なくとも自分の周りではそうだ。

大学が踏み込んで方針を示したことは、初等中等教育にとっても参考になる動きなのではないだろうか。

「禁止か許可か」の二択ではなく「この授業では、この目的で、この範囲で」という具体性をもって語ること。それが学生との信頼関係の土台になっていく、と言うと大げさかもしれないが、少なくとも対話の窓口が開かれることは確かだと思うのである。

今後、教員向けガイドラインや初年次教育の整備も検討中とのことなので、続報も追いかけていきたい。

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