ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

「高校外国語履修免除」という見出しに釣られて

中央教育審議会教育課程部会の外国語ワーキンググループが、4月23日の会合で、高校外国語科についてCEFR B2以上に相当する英語力を持つ生徒の履修免除を認める案を示した、というニュースを読んだ*1

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代わりとなる学習として「教科の上位科目」「学校設定科目」「学校外学修」の3つが提示されている。CEFR B2は英検準1級〜1級に相当する水準とされている*2

これだけ聞くと、「英語ばかり優遇されているじゃないか」と思いたくなる。実際、自分もぱっと読んだ時は最初はそう取り違えた。ただ、少し落ち着いて整理しておきたい。

これは外国語だけの話なのか

企画特別部会が昨年示した論点整理では、必履修科目を免除する場合の代替学習として上記3つが挙げられている。実際、文部科学省「教育課程企画特別部会 論点整理」(令和7年9月25日 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gaiyou/mext_00010.html )は以下の通り。具体例として外国語が挙がっている。

「論点整理」P.39より 令和8年5月2日(土)確認

つまり、この「免除+上位科目/学校設定科目/学校外学修」という枠組み自体は、外国語に閉じた話ではなく、一応、必履修科目全般に対して開かれた制度設計なのである。

外国語WGは、その枠組みを自分たちの教科に落とし込んで、具体的な指標としてCEFRを採用した…という順序になる。

なぜ外国語が先行したのか。自分なりの仮説としては、CEFRという国際的に流通している語学力指標が、すでに日本国内の制度(民間試験との対応表や大学入試での活用)にも組み込まれていて、議論の前提を立てやすかった、ということだろうと思う。

これが数学や理科であれば、「何をもって免除水準とするか」をゼロから設計する必要があるし、それは外国語ほど話が分かりやすくはない。

そのため、おそらく現実的には英語の能力の話が中心になるのだろうとも思っているし、他の教科にそれほど積極的に広がるイメージは個人的には沸かない。

漢検1級やリーディングスキルテストで国語が免除…にはならない

自分の専門が国語なので、つい国語に当てはめて考えてしまうのだが、結論から言えば、たとえば「漢検1級を持っているから国語の必履修を免除する」「リーディングスキルテスト高得点で免除」などの構図は、原理的に成立しにくいと思う。

国語科の目標は「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」と幅広い。漢検1級はそのうちの「漢字」という一側面の高度な運用を測る検定であって、国語科全体の到達度を保証するものではない。

CEFRが4技能(読む・書く・聞く・話す)を包括的にカバーしているのとは、性格が違う。

だから、「外国語だけ特別扱い」というよりは、「外国語にはたまたま教科全体を覆う国際標準があった」という事情の話なのだろうと読み直している。英語の先生がどう感じるかは自分には全く分からないし、あまり面白そうな話には思えない感じはする。

むろん、国語に同等の外部指標が出てくるかと言えば、自分にはあまり想像がつかない…。

現場で動かすときの心配ごと

ここから先は、現場の教員としての主観的な懸念である。

まず、時間割の問題。

例えばある時間に英語の授業が動いているとして、英語を免除された生徒は同じ時間にどこで何をしているのか。

学校設定科目に振り替えるなら、それを企画・運営する教員と教室がいる。学校外学修なら、生徒は校外にいる。

一斉授業を前提に組まれた時間割のなかで、「Aさんは校内で別科目、Bさんは大学で聴講、Cさんは通常の英語」というように生徒が分散する状況を、いまの人員でどう回すのか…正直、現場感覚としてはかなり苦しい。

特に気になるのが、生徒の所在管理である。

校外学修中の生徒が今どこにいるのか、何かあったときに誰が把握しているのか。これは「柔軟な教育課程」という耳当たりのいい言葉では片付けられない、安全管理の話だと思う。

それから、リソース。

元記事の後半でも、英語以外の外国語を開設している学校は令和5年度で高校全体の1割程度、教員の指導力向上や生徒同士の交流機会の確保が課題、と書かれている。

要するに、すでに「課題」とされている部分を、新しい免除制度の受け皿として当て込んでいるわけである。

学校設定科目を新規に立ち上げるにも、大学や専門機関や大使館との連携を組むにも、誰かが業務として担う必要がある。

その「誰か」の手当てが、自分にはまだ見えてこない。

…とりあえず、現時点では

「生徒の得意な能力をさらに伸ばしていく」という方向性そのものに、自分は反対ではない。むしろ、これまで限定的にしか動いていなかった発展的学習の道筋が制度として整理されるのは、悪くない流れとは思う。

ただ、制度の理念と現場の実装可能性のあいだには、いつも距離がある。今回の案で言えば、「免除して何をさせるか」「誰が運用するか」「予算と人員はどこから出すか」という運用の核は、報じられている範囲ではまだまだまこれからなのでしょう。

中教審の議論は勢いのよいことが先に出て、落とし所を探るということにもなりやすいイメージがある。

さて、この話もどうなるものか。

*1:日本教育新聞電子版「外部試験でCEFR『B2』以上は英語の履修免除 外国語WG」2026年5月1日 https://www.kyoiku-press.com/post-310082/

*2:山陽新聞デジタル「高校英語、履修免除に指標 国際規格活用、文科省案」共同通信配信、2026年4月 https://www.sanyonews.jp/article/1910773

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