ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

カンファランスと読書への没頭

あすこま先生が今日、こんな記事を書いていた。

askoma.info

リーディングワークショップをやっていると、「読書の時間」に生徒がどれだけ没頭するのかということが、その時間の充実度そのものだと感じる。

今回のRWは「読書の習慣がほとんどない」という生徒を多く抱えるクラスでも実践していることもあって、なかなか前回より「読書への没頭」ということで苦労している。でも、今日、たまたま思ったことがあったので、自分も便乗して書いてみようと思う。

没入のためには「安全・安心」

あすこま先生も紹介していましたが、アトウェルの"The Reading Zone"でも「没頭」のための条件が紹介されている。 

The Reading Zone: How to Help Kids Become Passionate, Skilled, Habitual, Critical Readers

The Reading Zone: How to Help Kids Become Passionate, Skilled, Habitual, Critical Readers

 

詳しくはあすこま先生の記事をご覧ください(他力本願)。

個人的に、6番目に挙げられている「快適さ」という点はとても重要なのだろうと感じている。

理由は色々あるのだけど、自分の教え子の場合、読書というものをどうも強制されてきたことが多いようだし、いちいち姿勢を正せなどの生活指導に辟易としている生徒が多い。だから、「読書」そのものに集中させたいのに、読書以外の余計なことをいって、気分をあまり損ねたくないという気持ちがある。

こういうのが学校にふさわしいのか?と周囲から見たら言われそうだけど、読書以外のことで読書が嫌なものに感じられてしまうのは望ましくない。それに、自分だってじっくり読書するときには、気分良く読みたいもの。職員室では気分が悪くてろくに集中できな(ry

本を読んでいるときに身体が痛かったり周囲が気になっていると全然、集中できないのもよく分かります。それだけに、自分が身体的にも精神的にも楽な状態で読むことで、没頭できるのではないかと感じます。

冒頭の写真はうちの生徒の様子。見にくいのは個人情報保護。

机の下にこもって周囲から隠れて本を読んでいるのです。普通であれば、絶対怒られますよね。でも、いいんです。こうやって自分の読みやすい場所で読んでいる生徒は、ずっと本のことだけ考えているのです。そのことのほうがよほど大切。

うちの図書館にも心地よいソファーが欲しい。

隠れて読める個室、個室と言わなくてもブースが欲しい。

ハードもそうだけど、自分自身が読書を押しつけるプレッシャーのないあり方でいたい。難しいかな。

カンファランスは重要か

自分が悩み続けているのが、カンファランスの効果についてだ。

www.s-locarno.com

以前も自分は同じようなことを書いているけど、やっぱりカンファランスはそれなりに効果があるのだろうと思う。”The Reading Zone”の中では、あまり生徒からの支持率は高くないけれども、まあ、実感としては必要だろうなぁとは思う。ちなみに自分のクラスのカンファランスの支持率は3割強くらいです。6割は「どちらでも」で、1割は「邪魔」という回答。

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ただ、読書をしていること自体が、どう評価されるかを心配して読んでいる生徒は少なからずいるし、だからこそ、「それで大丈夫」といってあげることの意味はあるように思いますが。 

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プロジェクトワークショップの出版している本ほど手の込んだカンファランスは30人以上のクラスでは厳しいこともあって、本当にあっさりとしたことしかできない。

と……この辺りまでは、去年までと大して自分の考えは変わっていないのだけど、今年、持っているクラスの一つは「クラスメートのほとんどが読書の習慣がない」「読書を自分で5分もしていられない」という状況である。

そのクラスに対して、本当に簡単なカンファランスをしていて感じることがある。それは、カンファランスを繰り返すことが、確実に「一人で読む」という読書に生徒を向かわせることができるということだ。もちろん、「読書しろ」と説教をしているわけではない。

説教するわけでもない簡単な「会話」を一人一人に繰り返していくことが、思った以上に静かで集中した読書に生徒を向かわせることができるのは不思議な感じがする。

もちろん、教員から話しかけられたというプレッシャーはあるんだろうけど。でも、それ以外にも重要な観点としては、会話の中で生徒に薦めた本を生徒が読もうとすることや、質問の受け答えの中で上手く答えられなかったことをちゃんと読もうと考えたり、今読んでいる本を自信もって読めるようになったりということがあるように感じる。

「自由に読んでいい」と言っても、全く「自由に読んでいい」という教員のセリフを生徒は信用していない。自分が読んでいる本が「読んでいたらダメと言われるのではないか」というおびえとは言わなくても、視線を気にするような不安感はあるようだ。

だからこそ、簡単にでもいいけど、早い段階で「その本はいいね」と伝えてあげることが、なかなか本に入り込めないことの障害を一つ消すことになるので、有効なのかもしれない。

自分自身がすっかり「自明」のこととして忘れてしまっていたけど、「好きな本を読め」が「教員が気に入る本の中から好きなものを読め」と躾けられてきていたんだね、君たち。そりゃあ、一人で読もうとしないよね。何言われるか分からないもの。

もっとちゃんと早く気づいて、全員と早く話すことが大切だったなぁと思う。

 

生徒の様子を思い浮かべたときに「本当にこんな読書でいいの…?」というような態度に見える生徒は少なくない。「この本を読んでいいですか?」と聞く生徒が本当に多い。 自分としては「好きな本を選んで、好きなように読む」ということが重要な権利だと思っているので、その手の質問に対しては「別にいいよー」と気軽に答えていたけど、確かに視点を変えると、その「大丈夫だよ、いいね」という励ましは、読書の習慣のない子どもには重要な気がしてきた。

高校におけるリーディング・ワークショップ実践~振り返りその4・カンファランスの仕方~ - ならずものになろう

 

書いていたのにね、自分。

こういう面が、たぶん、連続して持ち上がって持っているクラスへのマンネリというか油断というか……。

たくさん、後押しをしないといけない。だから、もっとカンファランスは軽くていいから、何度も続けておかなければいけないのだろう。

集中は難しいとちゃんと心がまえておこう

ブログを改めて読み直してみるとこんなことも書いてあった。

 

集中して、没頭なんて言い方をすると50分まるまる集中しているようなイメージを与えるかもしれないが、生徒の様子を眺めていると、平均するとたぶん30分くらいが集中のピークだと思う。

RW終了!これからだというのに… - ならずものになろう

 

はい、本当、今回もこんなものです。むしろ、こう書いたことを忘れていて、もっと生徒はできると思っていたのがよくなかったです。

集中力は無尽蔵に湧いてくるわけではない。色々な条件が重なって、読書どころではないということになることは少なからずある。そういうことを忘れて、できるだろうと投げるのは期待ではなく、放置なんだ。

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