ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

掛川西高校へお邪魔してきました

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わずかな春休みを無理矢理に取って、掛川に出かけてきました。

掛川西高校の吉川先生の面白そうな試みを教えていただき、ぜひ伺いたいと無理にお願いしたことで実現しました。

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慌ただしく遅刻して現れて、颯爽とイベントの途中でいなくなるという失礼極まりない真似をしましたが、暖かく応対していただけました。

イベントの詳しい内容は吉川先生のnoteにこれから紹介されるでしょうから、自分は外側から見た感想を書いてみようと思います。

学校の外の力と繋がる

今回の企画は

Techacademyとタイアップして3日間、高校生が掛川の課題を発見し、テクノロジーの力で克服しよう!というイベント

であり、まさに自分たちにとって切実な問題に取り組むPBLの取り組みである。

自分はこのブログでは散々に言ってきたけど、PBLをとにかく学校の中心に据えられないかという思いがある。 

www.s-locarno.com

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だから生徒たちがどこまでのレベルでPBLに取り組めるのだろうかということにとても興味があるし、子どもたちの活動に協力してくれる周りの大人たちの姿にもとても興味がある。

現状の学校の場合、子どもの自分自身の学びや活動に対する学校の中での裁量は決して多くないし、学校の外から学校に入られることを嫌う教員のメンタリティも少なからずある。学校の外部の大人も高校生という難しい年代の生徒との接し方に戸惑う例も少なくない。

先行事例が多くない状態で、ゼロから何かをやろうとするときには必ず大きな苦労があるだけに、学校も地域社会もタイアップ企業もかなり苦心してこの活動に協力しているんだろうなぁと想像されます。

しかし、生徒たちの活動が始まった時点では、そのような苦労を誰も見せないのがまた良かったです。生徒のパワフルな活動の様子に煽られた面もあるでしょうし、何よりも子どもたちと一緒に楽しそうに課題に取り組んでいる大人たちという姿がとても印象的でした。

プロジェクト型の活動に慣れていない、本気で取り組む価値があると思っていない活動をやらせようとする、そんななんちゃってPBLだと必ず大人は子どもを子ども扱いして、自分は高みの見学を決め込む。

そんな表面的な活動とは違って、子どもたちと同じ目線で取り組もうとしていることが非常によいなぁと感じました。当日のフィールドワークなどの活動を迎えるまでに、相当、折衝があったと思います。生徒に任せながらも生徒を支えるというあり方がとても素敵でした。

吉川先生がとてもうまく生徒やタイアップしてくれる方々に「委ねている」という印象を受けました。この手のイベントだと何でもかんでも仕切りたがる教員が多い中、とても自然体で様々な人を繋いでいるなぁと感じました。学校の役割や教員の役割が必ずしも「指導」だけではなく、任せられるものは任せるということも考えていく必要もあるのだなぁと感じました。

子どもたちの姿がよい

さて、自分の漠然とした印象ばかり書いていても面白くないでしょうから、実際に見てきた活動について書いてみます。

自分が24時間の滞在時間で見学してきた活動は「1.フィールドワークの内容を分析するグループワーク」と「2.ワードプレスの初期設定」の2つです。この試み自体は5月末くらいまで継続して続いていくので、本当に一面しか見られなかったのが残念なのですが、この2つだけでもとてもおもしろいものが見られました。

1.フィールドワークを分析する

この分析のグループワークをファシリテートしたのは、教員ではなくコラボ先のTechacademyの社長の樋口さんが行いました。だから生徒にとっては学校の勉強というよりは、完全にビジネスとして事象を論理的に考えていくための方法を学ぶというものになっています。

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そこで紹介されている方法は、学校でも最近は活用している人もいるよなーというものでしたが、企業で実際にどのように活用されるのかという視点での話などが挟み込まれることで、形だけ持ってきて試してみようとする、教員の授業の中の活用とは全然違う説得力がある。

もちろん、学校の授業が企業の社員教育の下請けになるのは好ましくないとはっきりと思うけど、「何のため?」と結びついているかどうかということは、説得力の差になるんだなぁと感じる。

それにしても樋口社長、まだ20代なのにとても「授業」がうまい。いや、ならずものに過ぎない自分が偉そうに上から目線でいうことではないのだけど、こうやってとても面白く色々なことを伝えられる人が学校の外にたくさんいることを思うと、一体、教員の専門性って何?ということを考えるのです。

国語の教員として「こういう発表のスキルがある」とか「こういうまとめの言葉を使ってみようか」のような観点を見つけ、指導をできる余地はあると思うけど、それだって生徒の活動、やりたいことに水を差してやることでもない。総合的な探究と教科の探究は違う?同じ?まあ、今後の課題ということで……。

話は変わりますが、掛川西高校の生徒の協同的な取り組みへの身体性はとても高いように感じました。

アクティブラーニング型授業の基本形と生徒の身体性 (学びと成長の講話シリーズ)

アクティブラーニング型授業の基本形と生徒の身体性 (学びと成長の講話シリーズ)

 

話し合いにおける生徒のお互いの活かし方が非常にレベルが高い。説明のときにグループ全員に伝わるような配置を考えたり、順番を譲り合いながら聞き出したりと、色々と時間をかけて鍛えられてきたものがあるのだなぁと感じます。吉川先生いわく「クラスでは目立つ子たちではない(婉曲)」というが、そんな素振りをまったく見せない協同性の高さでした。

1年生、2年生、卒業生とばらばらの学年の生徒がいたそうですが、傍から見ていると誰が先輩で誰が後輩なのか全くわかりません。もちろん、ある程度は学年同士でまとまっていたりするのでしょうが、異学年が異学年だとすぐに分かってしまうような関係性ではなく、非常にフラットで公平な活動の様子でした。

こういう安心・安全の場所が保証されていることが、様々な活動の礎にあるのだなぁと、集団づくりの大切さも感じさせられます。

2.ワードプレスの導入

二日目は、自分たちの考えを発信するための手段としてのワードプレスの学習です。

独自サーバーにワードプレスをインストールして、自分たちでプラグインを準備するところからやるのだから、本腰を入れてやっています。

aPostoの若木さんが講師で生徒にまさにゼロから指導していました。

さすがにパソコン部だけあって、パソコンの操作に戸惑っている生徒はいなかったものの、普段の生活では経験したことのないような作業だけに悪戦苦闘している様子が見えました。しかし、「やりたいこと」に動機づけられているので、とにかく少しでもちゃんとやろうという前向きさが伝わってきました。

ちなみにワードプレスを導入する手順は以下のページの感じ……読むのも大変なくらい手間ですね。

techacademy.jp

これだけの手間を乗り越えて、全員がちゃんと達成しているのだから、自分で何かしたいというときの気持ちの持つパワーを感じます。

どうやって展開していくか楽しみ

自分が見学したのはここまでです。残念ながら。

しかし、このプロジェクト自体はまだまだ5月末まで息長く続いていくそうです。生徒がワードプレスを使いこなせるようになっていくことで、もっと色々なことができそうだと夢が広がる……ところで自分は帰ってしまったので、その成果がWebで公開されるのを楽しみに待っています。

 

情報時代の学校をデザインする: 学習者中心の教育に変える6つのアイデア

情報時代の学校をデザインする: 学習者中心の教育に変える6つのアイデア

  • 作者: C.M.ライゲルース,J.R.カノップ,Charles M. Reigeluth,Jennifer R. Karnopp,稲垣忠,中嶌康二,野田啓子,細井洋実,林向達
  • 出版社/メーカー: 北大路書房
  • 発売日: 2018/02/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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この本でも紹介されていたような「新しい試み」が現実として目の前に現れてくると、ワクワクしますよ。本当に。

やれる人から動ける人から少しずつ新しい流れが始まっていく。自分の持ち場でやれることを積み重ねていって、新しい可能性が拓けてくればいいなぁ。

追伸

世を忍んでブログを書いているので、私がどんな人間だったかは内緒に……。

追記

blog.ict-in-education.jp

より詳しいレポートです。おすすめします。

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