ゴールデンウィークの楽しみにしていた一冊を読みました。
米澤穂信氏の小市民シリーズの最新作。20年をかけて季節が一巡しました。20年かぁ…長く待ち続けていたように感じます。
ちなみにアイキャッチ画像は生成AIに「冬期限定ボンボンショコラ事件」で描いてもらった画像です。こんなに可愛らしいお話ではないので、あしからず。
ミステリーとしての骨太さ
米澤穂信氏の作品はどれもミステリーとしてしっかりしているので、気合いを入れて読まないと!といつも思っています。今回の「冬期限定ボンボンショコラ事件」についても、お話としては非常に緻密に組み立てられており、それこそ「春季限定」からずっと主人公二人の抱えてきたことの一端をここで一区切りするような面もあり、待っていた甲斐があるという感動があります。
何よりもミステリーとしての謎がいくつもの要素と重なり合っていることによって、終盤の怒濤の真相解明の勢いに思わず圧倒されてしまう、そういう魅力があるのです。
こういういくつもの話が重なっていき、奥行きのある世界観を作るのは、米澤穂信氏の作品だとよくありますね。例えば「追想五断章」など。
そして、その仕掛けが非常に効果的に使われているので、読んでいて引きずり込まれてしまうのです。
成長していく痛み
小市民シリーズと古典部シリーズは、主人公や舞台が高校生だということもあって、謎をめぐって登場人物たちが大人のように割り切った結論だけで考えるのではなく、色々な葛藤に引きずり込まれていきます。
古典部シリーズも結末は苦々しいものが多いですが、小市民シリーズは古典部シリーズよりも更に世界は主人公の二人に厳しい。
理知的で論理的だからこそ抜群の推理力を見せる登場人物たちであっても、人間関係のあり方や他人に対する距離などについては驚くほど未熟で、失敗もするのです。
そういう浅はかさが苦々しく描かれつつも、何かをきっかけに少しずつ世界が変化していく。その変化に苦々しい思いの中から何かが報われるようなことを期待したくなる。
今回、主人公の小鳩君に突きつけられているものは、彼の一人称の世界ではおそらく救いようもないものだったろうと思う。だからこそ、小佐内さんがいることに意味があると思うような、そういうような一冊でした。
あぁ…大人になってしまうのだね。大人になってしまうからこそ、このシリーズも一応、ここで完結となってしまうのだろう。
アニメ化が楽しみなところです。