ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

【書評】自分の指導観を見つけることの重要性

Believe

どうやら風邪をひいたらしい…。だから今日は手短に…。

現在は「羅生門」の授業と評論二本の比べ読みをさせつつ、ライティングワークショップの準備をしているという状況ですが、この中で「羅生門」がやっぱり手強くて…。 

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かなり何を指導するべきか迷っていて指導をすべきことが行方不明になっていたのですが、良い本に出会えました。

渡邉久暢先生のホームページで紹介されていた、先生ご自身の実践が報告&分析されている一冊です。 

教室における読みのカリキュラム設計

教室における読みのカリキュラム設計

 

自分の迷っていることが少し晴れました。

高校の教室で「読むこととはなにか」という問い

この本は先行研究のレビューの前半と実践の分析の後半の二部立ての本である。前半の先行研究のレビューも面白いのだが、実践現場にいる人間としては後半の実践の分析が非常に面白い。

この本の大きな問い、スタート地点となる問いは、渡邉先生の「高いレベルで読む力とは何か。どうしたら身につけさせることができるのか」という言葉に象徴されている。つまり、「教室における読むこととは何か」ということであり、それだけに先行研究のレビューもさることながら、実際の教室を対象とした後半部分の分析および実践&研究報告は非常にエキサイティングだ。

つい個別のスキルを教えることに終始しがちな教室での「読むこと」に対して、より高次の「読みの理解」について、指導者である渡邉先生の考えや生徒の成果物などを一つ一つ丁寧に読み解いていき、「どうしてそのような生徒の『成果』を得ることになったのか」ということや「生徒たちの読みをどのように評価していくのか」ということなどを明らかにしていく過程は圧巻されるものがある。

「面白さ」や「楽しさ」と高次の「読みの理解」の背景にあるもの

実践の詳細やその実践の中で起こっているダイナミックな教室のあり方は、自分がここで書くのも憚られるので、実際に本書を読んでもらうことにして、ここでは何故このようなダイナミックな教室が実現されるのかについて自分が思うところを考えてみたい。

本書で紹介されている「生徒の書いた文章」は非常に高度であるし、分量も非常に多い。これだけの文章を書くために、子どもたちはどれだけの時間考えて、どれだけ悩みぬいたのかと恐ろしく思う。自分の教室で起こっている、生徒が考えることが上手く回っていかないことに、自分の責任を重く感じる。 

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では、自分の教室と渡邉先生の教室のどこが違うのだろうと考えてみた。本当は教員をして3年くらいの自分なんかが渡邉先生の教室と比べること自体がおこがましいことであるのだけど、それを抜きにして、一番、大きく違うと感じるのが、「どんな力をつけたいのか」ということや「どんなことを『読むこと』と考えているか」ということに対するビジョンのクリアさが全く異なるということだ。

自分は正直、国語に対しては全くビジョンが見えていない。本当に勉強が足りていないことを反省している。 

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この自分の「もやもや」とよく分からないで悩んでいる悩みが生徒に伝染したり、生徒への言葉がけや製作するプリント類が中途半端になったりと、自分の中の一定としないブレが悪影響として出ているように感じる。

それに対して渡邉先生はこのような研究の俎上に載るくらいだから常に悩みつつ向上を目指されていることは間違いないのだろうけど、それでも「こうあってほしい」「こうしたい」というようなビジョンや願いが非常に鮮明にあるように感じる。長年、教育に関わり、練り上げていた胆力というものを感じるのだ。

これからの教室のために

この「どうあってほしいか」というビジョンや「読むとはこういうことだ」という教育観が自分に決定的に欠如しているものだと、この本を読んで改めて自覚された。また、それと同時に、この中で述べられている渡邉先生の考えは自分の悩んでいることに一つの形を見せてくれたもので、モヤモヤとした悩みに少し光が見えたような気がする。

人の言葉を借りてきて教育を語るのは簡単だ。でも、それは上手く自分の教室にはなじまないことが多い。

だから、この本を読むことで見えてくる「一つの観」を丁寧にかみ砕き、自分の中の「観」を鍛え上げたいと強く思う。

非常に心強い先行実践だ。これからも自分を鍛えて、信じていこうと思える。

読むことを教えることに悩んでいる人は、読むべき一冊だ。

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