やっとすべてのクラスで「山月記」の総括が終わったぞー!!
続いて今までバラバラに投げかけてきたこれまでの単元を生徒一人一人が総括していくことで、ちゃんと自分が何を考えたかに一本筋を通してほしい。
ちなみにこうやって生徒の様子を見ながら授業を回し、最後にレポートを書かせるという流れは以下の渡辺久暢先生の実践を参考にしています。
2013「探究を導く『問い』を設定する能力の育成―高校国語科現代文『こころ』」の授業研究を通して(2)―」著者: 八田 幸恵 渡邉 久暢「教師教育研究 6」
ま……ここまで自分に明確な「読み観」があるわけではないんですけどね……自分の教育観がないのは自分の致命的な弱みです。
一つのブレークスルー
一年生から「羅生門」「城の崎にて」と徐々に生徒の記述量と自分で読む時間を増やしていく中で、常々、感じていたのが「なかなか読みが広がらない」ということと「自分で自由に探究する」という姿勢が出来てこなかったことだ。
生徒の初発の感想を活用して、学習課題を組織したりジグソー法を組織したりして「活動」はそれなりに行うようになったのですが、深まりという点では弱さを感じていました。
このままジグソー法や自分が学習課題を投げ続けても、結局、どこまで行っても「答え」を欲しがるんだろうという予感を薄々感じていた。それは決して今も改善できたわけではないけど。
そんな状況であるけれども、今回の「山月記」では大きくブレークスルーがあったように感じる。
自分が課題として長文を書くことを指示したのも大きいけど、自力で読むしかない状況に追い込まれたことで自分たちで考えるようになったという側面はあるんじゃないかと思う。
例えば、生徒の考察に「李徴と袁のどちらに視点を寄せて読むかで読む可能性が変わることに気づいた」ということや「私は李徴は自分のことを忘れて欲しいと思っていると思ったが、友達は自分のことを覚えて欲しいと思っていると言っていたが、根拠の読み方が違うのだと気づいた」というようなものが出てくるようになった。
これは、去年まででは出てこなかった感想なのです。去年までは「正解」の方に気持ちが動いてしまうから、「まあ、これが正解だろう」と判断してしまったほうに大きく揺れてしまって、それ以外の可能性については殆ど考慮できなくなってしまっていた。
今回、「山月記」という題材が、多様な視点を持つことが比較的自由にやりやすいものとして自分が授業で誘導したこともあるけど、李徴に寄って読むのか袁さんに寄って読むのかなどが自然と分かれることもあって、自然と意味のある交流が成り立っていたと思う。
その結果、今までが紋切型で自分で「こうじゃないかな?」と問うことをしていなかった生徒たちが少しずつ「自分はこう読みたい」というものを表明し、それを互いに検証し、認め合えているというのが大きなブレークスルーなんじゃないかと感じる。
好きに読むだけを乗り越えるために
そうやって個人個人が自分だけの「物語」を持てるようになってきたからこそ、次の段階として「好き勝手に読む」という状態を乗り越えていきたいと思う。
現状の生徒は「個人の自由な想像や楽しみ」と「論証を重ねて色々な可能性を引き出すこと」の区別は出来ていないと感じる。
例えば「袁は李徴との約束を守ったかどうか」という疑問を持つ生徒は多いのだけど、それは完結したテクストの外のことであって、根拠を挙げて論証するには限界があるため、誰かと検証して考えを深めるというためには、やや難しいと思うし、踏み込んでいうなら今回、自分が生徒に求めていることとは方向が違うと思う*1。
文学の「よい問い」とは何かという問題は、正直、自分も文学専攻ではないので全く分からないというのが実情。だから、あまり偉そうにいうのは問題なのだけど、そこは逆に丁寧に生徒の様子を見守りつつ、対話を重ねてそれぞれの教室でよい問いを一緒に考えていければいいかなぁと思う。
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質問づくりもレポートの前にやっていますよ。
でも、質問づくりだけでは、文学をより深く読むための「問い」を生徒から引き出すのはちょっと難しそうである。作った問いを、さらに読みの方略から検討させて、どの質問がよいのかということを考えさせる必要があるだろうなぁと思う。
最後のひと踏ん張り
今月は残業が100時間超えそうです。自業自得なのですが(笑)
自分もきついが、ノートに毎回これだけの量を自分の言葉で考えて書いてくる生徒も生徒でかなりキツイはず。
これだけよい形で進めているのだから、何とかまとめとしてのレポートを、良い問いを持ってもらい、すっきりと満足いく形で書き上げてもらいたいなぁ…。
*1:国語科の実践として続き物語を書かせるものは少なくないのは知っているので、天に唾するような物言いになるけど。