ライティングワークショップを開始しているのですが、別のクラスでは「羅生門」を淡々と読んで書かせて、それを添削して……を繰り返してきたのですが、ようやくそれも完結。
最後の課題に取り組む姿をみて色々と考えました。
普通に教えるのであればそれほど苦労はない…
個人的には「羅生門」のような教材であれば、テクニカルに教えるべき事項を絞って教えてしまう方が授業準備も楽だし、生徒の知識の量からすれば簡単に先生らしく振舞うことができるし、「わかりやすい!」という印象を生徒に抱かせることも難しくない。
「羅生門」は定番教材だけに、簡単に実践報告を読むこともできるし、「アクティブ・ラーニング」的な実践例だって、それなりの数に簡単にアクセスできる。たとえば、次の書籍はアクティブ・ラーニング的な「羅生門」の実践が載っている。
アクティブ・ラーニングを取り入れた授業づくり: 高校国語の授業改革
- 作者: 高木展郎,大滝一登
- 出版社/メーカー: 明治書院
- 発売日: 2016/01/28
- メディア: 単行本
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他にも十一月に新しく何冊か出ているのだけど、まだ読み切っていないので、また今度…。
そんなわけで、ある意味「普通」に指導をするなら、お手本がいっぱいあるだけにそれほど苦労はない。
板書を手放した
一つ一つの事柄をチョーク&トークで話していくことは、教えている方も手応えがあるし教わっている方も勉強しているような雰囲気を受けるので、お互いに気が楽である。
でも、それでどれだけ子どもたちが勉強しているのかということについて疑問を抱かざるを得ないのである。
色々と思うところはあるけど、一番、チョーク&トークの授業スタイルで良くないと思うのは、せっかく5時間、6時間も時間をかけて授業をするというのに、本文そのものを「通読」することがほとんどないことだ。それどころか、板書に夢中になっていると国語の授業なのに教科書がほとんど開かれない、開かれていてもろくに本文を読んでいないということが起こっている授業を見ることがある。
一生懸命、板書を写して先生の話を聞いていると別に本文を読まないでも答えが出てしまうから、自分で必死に本文を読むという習慣がどうしても弱くなるように感じる。
さらに、今、教えている生徒がとにかく自分でものを考えるのを面倒がるということもあって、授業でもとにかく板書を書かないことを嫌がるし、テストでも考えて答えなければいけないような問題は初めから空欄で捨てるなどの態度が見られていたし、とにかく本文を自分の目で見て読むということも嫌がっていた。
そんな状況だからこそ、自分で本文を何度も読んで、自分で整理して、自分でまとめていくということをやらせたかった。
ワークシートで板書の代わりを…
とは言うものの、教えてもらうことに慣れている以上、いきなり色々なハードルは飛べないし、何より勉強していないようだと不安がる。だから、板書の代わりにワークシートで済むようなことについてはワークシートで配布するようにした。
そのワークシートを完成させるためには、自分で何度も本文を読まないといけないように設計し、プロットを追うような読ませ方ではなく、全体のストーリーを異なる観点から何度も整理させるような設計にして、授業ごとに何度も何度も本文を読ませた。
さらに、ワークシートを完成させるだけの作業では、それは「ウォーリーを探せ」をやっても読解力が上がらないのと同じく、読解力なんてつかないので、授業ごとのテーマを必ずある程度の分量で文章でまとめてもらった。
さらに、必ずその文章のすべてを色々な観点から添削を行い、少しずつ、考え方をアドバイスし続けました。
最終授業でどうなったか
約一か月、そんな授業を続けてきたけど、結果的に生徒はだいぶ自力で色々と読んだり書いたりして、自分の考えを作っていくということをやれるようなってきたようになったように見える。
「羅生門」の最初の課題として「現代語訳と原作のどちらを読んでもらいたいか」ということを考えてもらったら、割と生徒は意固地に「原作のほうがいい」といったのだけど、本文を全く理解していなかったり「作者の意図が分かるから」というような考えなくても言えるようなことを平気で書いてきたリしていた。それにうんざりしていたのだけど、最終課題の一つとして、同じ課題を出してみたところ、自分なりの理由を考えて書こうとする態度は見えたので、それは良かったのかなぁ……と感じる。
また、何度も何度も本文を読ませる設計で授業を進めてきた結果、生徒が本文を諳んじられるくらいにまで、物語になじんでいたのは良かったのかな?
授業中はアドバイスはするけど、基本的に何もしないでそこにいるだけの授業だったのだけど、教えているよりもよほど本文に子どもたちは親しんでいた。
ただし、「こんなことやらされる意味がない」と言われたのも事実である。そりゃあ、こなすだけの「ウォーリーを探せ」しかやっていないんじゃそうだろ……と言いたくもなるが、まあ、考えてもらえないのは設定が悪いんです、はい。