あすこま先生がPISAに関する記事を書いていた。
上の記事では自分の雑な記事も紹介してもらっているが……雑なだけにちょっと恥ずかしい(笑)
今日、たまたまPISA関連の記事を見つけたので、書き記しておこう。
2016年12月19・26日の日本教育新聞の10面
あまり一般の人は目にしない新聞だとは思うけど、学校にはあるんじゃないかと思う。今回の記事では、国立教育政策研究所の国際研究・協力部長である大野彰子さんが解説をしてくれている。
この記事で話題にされていることは、これまでのいくつかのマスコミの報道では指摘されていないこともある。
例えば、PISAの調査の仕方について…
PISAは3年ごとに中心分野というものを設けていて……中心分野では出題数も多く、推計の精度も高く……逆に言えば、それ以外の二つの分野(数学、読解力)は概括的にやっているだけなので、統計精度は低くなります。
問題数自体の出題数が違うことや、だからこそ調査の見方に注意が必要であるという指摘や
得点は積み上げる方式ではなく統計処理をして、日本全体の姿を予測しているので幅があり……1点2点の点数や順位を前回と比べることには、ほとんど意味がないのです。
というように、今、世間が話題にして盛り上がっている得点の低下や順位の変動について根本的にとらえ方に問題があることを説明している。
だから、結局、ここで述べられていることは、冒頭のあすこま先生のブログでも紹介されていた信州大学 比較教育学研究室: 研究紹介: PISA2015の結果と考察の内容で指摘されていることに重なる。
この日本教育新聞の10面は教員志望の大学生向けの記事であるので、比較的平易な書き方になっており、読むこと自体のハードルは高くない。それだけに、少なくとも学校現場の人にはできるだけ多く見てもらいと思う。外野から色々と多く言われるだけに、どんな性質のテストなのかを見極めておく必要はあるだろう。
これから重視される探求学習?
読売新聞の2016年12月20日の朝刊11面で探求学習の解説がされていた。
この記事で紹介されているのは、おなじみの堀川高校の事例と山梨県立塩山高校の事例だ。堀川高校は有名なので紹介は省略するが、塩山高校の方はご存じない方が多いかもしれない。
研修会などに行くと先進的なアクティブ・ラーニングの取り組みをしている学校として事例が紹介される。地元のワインを紹介したり観光案内を作ったりなど地元とのつながりを重視した授業を展開している。
それぞれの学校の取り組みや実践のよさは置いておくが、この記事の論じ方の筋は、毎度のことながら、あまりよくない。
例えば、堀川高校の事例については「絶対に教えないのが決まり」ということをわざわざ見出しにして強調したような書き方になっているのは、「教えるか教えないか」という二項対立で指導を捉えているのが問題であり、そういわれてしまうと「いや、教えないなんてありえない」というような短絡的な探求学習否定の意見を煽るようなものである。
また、塩山高校の事例についても探求学習が生徒指導に結びついているという観点から社会との結びつきやキャリア教育を書いているのもよくない。堀川高校との並べ方になると、進学校では学問的に高度なことをやらせて、そうでない学校では生活指導や生徒指導のために探求学習をやらせるという、おかしなカテゴリー化を進めるような印象がある。
裏を返せば進学校では社会へのつながりは考えなくてもよく、そうでない学校では高度なことをやらなくていいということをイメージさせかねない書き方だ。
しかし、本質的にアクティブ・ラーニングは、簡単に言えば「どちらも」やらなければいけないという発想から生まれている。
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進学校が社会へのトランジション課題に無責任になることや進学校でない生徒が知的な探求を許されないということが健全であるわけがない。
色々な資料を検討しましょう
この手の教育論争はいかに自分にメリットがあるかという観点からポジショントークで書かれている記事も少なくないことは知っておくべきだ。
教育に強いと自負している読売新聞でさえ、非常に毎回問題のある、もしくは意図的に偏った書き方をしていることを考えても、教育について色々意見をいうのであれば、いくつかの資料を読んでから……というのが、教員には責任はあるのではないかと思う。世間が新聞などを見て何か言うのは仕方ないとしても、学校現場にいる教員は、自分で情報を精査しないとダメでしょう…。
あすこま先生も指摘していることですが、専門家がちゃんと目につくところで説明してくれることを期待しています。どこの明治大学の教授とは言わないけど、教育学者の肩書で岩波から教育改革を謳って出したとは思えないような内容の本が影響力を持ってしまうような現状は健全ではないよなぁ…。