考査の採点も順調に進み、いよいよ仕事が少なくなってきたので今年度の授業の振り返りに入ろうかと思う。
今学期の一番のトピックスとしては、やはりリーディング・ワークショップを実験的に実践したということだ。
回数としては全7回であるため、決して充実した実践だとは言いきれない。だけど、RWの実践でよく目にするのは小中学校であることを考えれば、高校で実践したことを紹介するのも何かの役に立つかと思うので、自分の所感を何回かに渡って書き記しておきます。
なお、ライティングワークショップの振り返り記事のまとめは以下をご覧ください。
リーディング・ワークショップの必然性を感じたきっかけ
そもそも、なぜリーディング・ワークショップをやろうと決断したのか。もともと、年度の初めの段階で「読書指導に力を入れる」ということは頭にあったのだけど、どのようなスタイルでやっていこうかということについては悩んでいた。
「羅生門」を用いて書評の指導をしたり定期的に図書室での調べものを課した単元を作ったのはそうした読書指導の一環として考えていたのだけど、根本的な問題として「本を読む時間がない」ということが常に重くのしかかっていた。
そうして悩ましいままに一年の授業を進めていく中で今年は「ライティング・ワークショップ」に取り組みました。
WWについては、「古典エッセイ」という縛りを与えての指導であったので、資料を探すという意味でも図書室での授業になったし、生徒自身が多くの資料を時間を取って読む必要があった。
授業内ではライティングをメインに考えていたのだけど、資料を探すということが重要な活動であっただけに、結果的にはかなり読書活動が盛り上がった。例えば、図書の貸出件数が突出して伸びたことや普段本を読まないという生徒が多くの本を抱えて読書をしていたことなど、非常に印象的であった。
そのような生徒の姿を見ていると
- 時間さえあれば本を読むのではないか
- 図書室という空間にいれば本を読むのではないか
- もっと本の読み方や探し方を伝えたほうが本を読むようになるのではないか
- 授業で書くことを求めるなら本を読む時間も保障すべきではないか
ということを考えるようになった。
「図書室に行きたい」という声は生徒から定期的に聞いていたし、司書さんの方も図書室に生徒を連れてきて欲しいということを言われていたこともあり、「図書室に定期的に行く」ということを真剣に考えるべきなんじゃないかと思ったのです。
WWをやっていて、図書室で授業することの良さ、図書室という空間が生徒の知的な興味を刺激することの良さを感じていたために、WWの流れを切らさずに図書室を定期的に使いたいなぁと思っていた*1。
そこで、3学期の指導事項を思い切って整理して、毎週月曜日をリーディング・ワークショップに充てようと決心しました。
このあたりの迷いはブログにも書いているので、興味ある方はご参照ください。
リーディング・ワークショップだった理由
読書指導の方法については別にリーディング・ワークショップに限らず、いくつかの可能性はある。
付け焼刃的に上の三冊を流し読みで読んでみたけど、決してリーディング・ワークショップばかりが紹介されているわけではない。
例えば、ブックトークだとかリテラチャーサークルなども触れられているし、調べ学習・探究学習での利用なども示唆される。
そんな中で、どうして自分が「リーディング・ワークショップ」を実践することを選んだのかと言えば、やはり時期を同じくして読んだこの本の影響が大きい。
- 作者: Nancie Atwell,Anne Atwell Merkel
- 出版社/メーカー: Scholastic Teaching Resources
- 発売日: 2016/11/16
- メディア: Kindle版
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子どもをいかにして「自立した学び手」にするかということを考えていた自分にとっては、「読書」についてではあるけど「個人」を見て、「個人」の成長を願うアトウェルの実践が一番、すとんと自分の中に落ちた。
実は二年くらい前から、リテラチャーサークルを実践できないかについては検討をしていた。
- 作者: ジェニ・ポラックデイ,ジャネットマクレラン,ヴァレリー・B.ブラウン,ディキシー・リーシュピーゲル,Jeni Pollack Day,Valerie B. Brown,Janet McLellan,Dixie Lee Spiegel,山元隆春
- 出版社/メーカー: 溪水社
- 発売日: 2013/11
- メディア: 単行本
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自分もワークショップに参加し、リテラチャーサークルを経験したことがあるが「あぁ…確かに楽しいし、力がつくなぁ…」とはよさを実感できていたものの、読書に付随することの多さに少し煩雑さを感じていたし、なんでもかんでも話せるわけではないし毎日顔を合わせている友達と語り合えるかと言われるとちょっと難しいなぁと感じていたこともあり、教科書の文章を読むときの課題づくりに生かすような形で保留し、結局、リテラチャーサークルを実践することはできなかった。
でも、リテラチャーサークルに対して「ひたすら本を読むこと」「本を読む主体一人一人を支援していく」という「個人のための読書」という形のリーディング・ワークショップのほうに心が惹かれたし、「個人の」という点をきちんと教えなければいけないという感覚もあったので、自分はリーディング・ワークショップを実践することを選んだ。
自分の準備は……
やると決めたときに一番困ったのは「リーディング・ワークショップを見たことがない」ということだ。
見たことがある授業は比較的再現しやすいけど、見たこともないものを自分で立ち上げるのは非常に怖いものだ。
だから、素直にRWの参考書籍を読みました。
読書家の時間: 自立した読み手を育てる教え方・学び方【実践編】 (シリーズ・ワークショップで学ぶ)
- 作者: プロジェクト・ワークショップ
- 出版社/メーカー: 新評論
- 発売日: 2014/04/18
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リーディング・ワークショップ?「読む」ことが好きになる教え方・学び方 (シリーズ《ワークショップで学ぶ》)
- 作者: ルーシー・カルキンズ,吉田新一郎・小坂敦子
- 出版社/メーカー: 新評論
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また、なぜ読書なのかという説明としては以下の本を参考にしています。
理解するってどういうこと?: 「わかる」ための方法と「わかる」ことで得られる宝物
- 作者: エリン・オリヴァーキーン,山元隆春,吉田新一郎
- 出版社/メーカー: 新曜社
- 発売日: 2014/10/01
- メディア: 単行本
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- 作者: スティーブンクラッシェン,Stephen D. Krashen,長倉美恵子,塚原博,黒沢浩
- 出版社/メーカー: 金の星社
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読書と言語能力: 言葉の「用法」がもたらす学習効果 (プリミエ・コレクション)
- 作者: 猪原敬介
- 出版社/メーカー: 京都大学学術出版会
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結局、あまり生徒には還元できなかったけどね……自分が納得して「ふんふん!!」となったけど、どうやって伝えたらわかるかまでは準備できなかった(笑)
……付け焼刃にやったことは反省しています。
手探りで始まったリーディング・ワークショップ
そんなわけで自分のリーディング・ワークショップはてさぐりで始まりました。
このことはミニ・レッスンやカンファランスに大きな影を落とすことになるのでした……。
そんなわけで、高校でのたぶん珍しいリーディング・ワークショップに挑戦してみました。
これからリーディング・ワークショップを高校でやってみようと考える方は、ご相談にも乗れるかと思いますから、お気軽にお問い合わせください。もちろん、高校以外も歓迎します。
*1:結果的には、今年度、自分が図書室を使ったのは3クラスで70回くらい。多いか少ないかは判断しかねる。