個別面談が終わってからこういう本を読むのもどうかと思うけど。
シリコンバレー式 最強の育て方 ― 人材マネジメントの新しい常識 1 on1ミーティング―
- 作者: 世古詞一
- 出版社/メーカー: かんき出版
- 発売日: 2017/09/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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生徒との面談や保護者との面談だと、教員は上司のように一方的に言いたいことだけ言ってしまいがちだけど、そういう面談は相手にしこりを残してしまうだろう。
何のための面談?どうしたらよい面談になる?そんな疑問に対して一つの方法を提案してくれる一冊ではないかと思う。
信頼関係を築く
ノウハウ本であるので、細かい方法を書いてしまうのは営業妨害な気がするので、考え方とそれに対する感想だけにとどめます。
本書の提案する「1on1ミーティング」とは
一般的な面談との大きな違いは「これは部下のための時間」だということです。(中略)部下の気持ちがすっきりしたり、納得感を持ったり、次のチャレンジへ行動していこうとすることが最も重要なことです。(P.2)
と述べられており、「部下」を「生徒」や「保護者」に置き換えるだけでも、学校で我々教員が行う面談の考え方を変えてくれそうな発想である。生徒面談や保護者面談というと「〇〇ができないから✖✖しろ」とか「家庭でちゃんと指導してください」とか言いがちである。教員が言いたいことを一方的に言いやすいだけに、気を付けて考えたい視点だ。
普通の面談が「情報交換」に過ぎないものであって、「個人に焦点を当てた対話の不足」(P.24)している状況であると指摘しているように、せっかく来ていただいているのに、時間を取ってもらっているのに、一方的に教員が話しているのでは、せっかくの面談なのに生徒や保護者に不満を募らせることになろう。
本書の基本的な考え方は、お互いに「理解」をしあうことによって、安心して働ける環境を作ることを目指すというものだ。一見すると迂遠に見える方法だけど、人物自体を理解しあうことで、気持ちよく自分のミッションに取り組めるようになるという発想である。
「対話する」目的は、決して相手をコントロールして説得することではなく、話を傾聴するという姿勢を示すことで相手を承認することにある。そうやって相手のことを認めているのだと伝え続けることに意義があるというのである。
教育の文脈で考えてしまうけど
上の話を見て、自分はこの方法論の原理として、苫野一徳先生のいう「自由の相互承認」の発想を思い出さずにはいられません。
自由の相互承認 ?? 人間社会を「希望」に紡ぐ ??: (上)現状変革の哲学原理 (iCardbook)
- 作者: 苫野 一徳
- 出版社/メーカー: 詩想舎
- 発売日: 2017/03/25
- メディア: Kindle版
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相手を「承認する」という非常にシンプルな原理を具体的な場面で、方法論として実現するだけで、今やっている失礼な面談や不満を溜めさせてしまうような面談だって、わりとローコストで変えられそうだと感じる。
逆に言えば、こういう発想の「面談」の本が今までなかったということは、相手を「承認」するということは、意外と難しくて、自覚的にならないとできないことなのかもしれない。
さて、教員はこの原理にどこまで自覚的になれるのだろう?簡単に生徒ができないことを留年させればいいと言ってみたり、家庭が無責任であると責めてみたりすることから、一体、どれだけ脱却できるのだろう?