ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

夏の最後の宿題に

今週から学校が開始になっているところもあれば、来週からスタートのところもあるようですが、8月もあと一週間ですね。

最後の一週間にぜひとも読むべき一冊を紹介しようと思います。

 

 

高校の現場は正論を正論として言い切ることが難しいように感じることがある。だからこそ、こういう「真正(ほんもの)」の学びとは何かを誤魔化しなく、実践に基づいて真正面から論じている本には価値があります。

高校の実践への挑戦

自分も色々な機会にこのブログに書いているが、高校の実践は小中に比べると非常に厳しい状況にある。全国各地には心のある実践者がいるが、それでも小中から出てくる質と志の高い実践の数に比べると、高校の実践はかなり手薄という現実がある。

様々な事情はもちろん絡むため、一概の高校の実践がダメという訳ではない。ただ、個人的にはそういう事情を差し引いても、どうしても高校の実践が話題にあがる機会が少ないことは問題だと感じているし、高校の教育の価値が大学の合格者数でしか話題に挙がってこないことをいかんともしがたい現実をまざまざと感じている。

そういう厳しい状況の中、本書は「真正の学び」を「普段の授業で」粘り強く実践した授業を紹介している。

 

紙幅が限られている中でどの実践を取り上げるか思案しました。今回は、授業の可能性と教師の仕事の極めどころを示すことを重視しています。それゆえ、授業の質、そして先生や学校の志の確かさや力量の高さという観点から、(中略)、信頼する先生方と学校にお声がけしました。さらに、著作や実践報告などを通して知っている先生方で、この先生の取り組みや実践哲学を紹介したいと思った方にもお声がけして、執筆をお引き受けいただきました。(P.3)

 

「はしがき」で石井英真先生が述べているように、本書の実践を読んで感じることは「志の確かさや力量の高さ」である。特に「志」という点に強い意識があるように感じる。

「授業の力量」については、訓練を続ければ牛歩であっても必ず伸ばしていくことは出来るように思う。しかし、「志の確かさ」は自分の現場にいるだけでは絶対に見えてこないものであるし、むしろ自分の現場だけに固執することで、迷走を始めるものである。

だが、実際に子どもたちの成長に大きく寄与するのは、授業のテクニックよりも教員の志、願い、腹の決まり方であるということは往々にあるように思う。

YouTubeなどのコンテンツで授業を代替できない部分が、まさに子どもたちの成長を見通す教員の哲学にある。目の前の子どもだけではなく、子どもの未来まで願うまなざしとそれを実現する見通しを持つことは、一朝一夕では出来るものではない。

だからこそ、本書のようにシンプルに「質の高い実践」がまずは数多く共有されること自体に意味がある。質の高い実践を読み解き、実践者である読者も自分の教育哲学を鍛え直すことを考え続けなければならないのだ。

授業と実践を読み解く

本書の一番のポイントとしては、「実践記録を読み解く」ということを相当丁寧に目指して構成されているということが挙げられる。

それぞれの実践の著者が非常に詳細に自分の実践を詳らかにしていることも、かなりチャレンジングだと感じる。というのも、一人一人の実践者に任されているページ数が他の実践の本に比べて多いように感じる。しかし、その多いページ数でも足りないと言わんばかりに字が密度高くびっちりと書き込まれている。

この実践を読み解くだけでもかなりの授業の力量がつくだろうと思うが、さらに本書の

優れているとして、「授業の見方」について石井英真先生が各章の終わりに丁寧に解説をしている点を忘れずに挙げておきたい。

現場は、授業を読み解くことが年々弱くなっているように感じている。そもそも実践を泥臭く読もうということが非生産的な行為のようにも言われるようになっている雰囲気を自分の身の回りだと感じる。

それに伴ってか、授業の実践を読み解く力が弱くなっている状況を目にすることが増えた印象がある。自分だってかつての偉大な先達に比べるとまともに授業を読めなくなっている自覚がある。

だからこそ、授業を読むためのポイントが、しかもそれが「真正(ほんもの)」という観点から教科を横断して示されていることの意味は大きいだろう。

夏の最後の宿題に

この本は約3000円と、教育書にしてはかなり高額な部類である。普通の教育書に比べると1.5倍から2.5倍くらいはするのではないだろうか。

しかも約280ページと多い上に、表などがほとんどなく、ひたすらに実践が緻密に記述され、振り返られ、評価されている。

こういう力強い実践は、まさに教員の自己研鑽、修行として読むべき一冊である。

夏休みが終わってしまう前に、自分の授業の哲学がどうあるべきかを点検するのに、ぜひとも外せない一冊だ。

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