GWの前半も終了しようとしているところですが、順調に積ん読を消化しています。
高校の探究ににわかに注目が集まり(いよいよやらざる得なくなって追い詰められてきたとも言えるが)、書籍の出版が続いていますね。
先日も先週も当ブログで一冊紹介しています。
さて、今回はどうでしょうか。
ワークシートと指導書
本書は「授業書」と自称しているように、実際にそのまま授業で使えるような作りになっている。特徴的なのが「ワークシート」+「指導書」という構成になっている。特に「ワークシート」は実際の高校での授業にそのまま使えるような意識で作られており、また、本書で紹介されているワークシートは学事出版のホームページからデータをダウンロードし、再加工することもできるようになっている。
※ダウンロードはできても、解凍にはパスワードが必要です。パスワードは書籍の中に書かれているので、お買い求めくださいませ。
現場の教員が中心になって書いているだけあって、多忙な高校の現場のニーズに合うように作られているのがよく分かる。本書の「使い方」の説明のページの説明に出てくるように「指導担当者間で分担」して教材研究に取り組み、うまく学校でチームを作ってやっていくことが目指せるような本になっている。
社会に向かっていく実践
本書の中で取り上げられている実践例は全部で6種。(※班作りを含めれば7つになる)
いずれの実践も「社会」とのつながりを強く意識している内容であると感じさせられる。以下に目次を引用するので、各実践のタイトルからも「社会」を意識していることを読み取れるだろう。
I 「映像視聴」から始めよう
オトナたちに教えようSNS(ワークシート編)
「授業と教科書」をつくる(指導書編)
II 「アート」から始めよう
最高のPR動画をつくろう!(ワークシート編)
動画をつくる(指導書編)
III 「1枚の写真」から始めよう
バイバイ プラスチック(ワークシート編)
意見表明文をつくる(指導書編)
IV 「先輩の声」から始めよう
進路ガイダンスを「つくろう」(ワークシート編)
講座とポスターセッションをつくる(指導書編)
V 「ロールプレイ」から始めよう
食品ロスを探究する(ワークシート編)
パネルディスカッションをつくる(指導書編)
VI 「新聞記事」から始めよう
「請願」という方法があります!(ワークシート編)
最終的には「請願」というなかなかハードルの高いところまでたどり着いている。
SNSについての実践や進路についての実践はハードルも高くなく、教員にとっても取り組みやすいだろうし、また、普段、気にしていることの延長にあるような取り組みである。
付録のワークシートも非常に表現することに注意の払われているのも、探究が誰かに伝えることに意義があるという著者たちの姿勢の現れなのだろう。
個人的には不満もありまして…
本書にはQFTについても言及がある。
うーん……でも、これはQFTをただのブレーンストーミングに使っているだけなのですよね。どうせ実践するなら理念の部分も大切にしておいて欲しかった。
このQFTの話はとりあえず脇においておいてもよいのだけど、この本で提案されている実践はどれもよく作り込まれており、親切に指導方法が書かれているので、方法にばかり注目が行きそうな恐れはある。
本当は分担してちゃんと学校内で「どうしたいのか」ということを相談し合えると非常によいたたき台になると感じられるのに、相談もしないで道具だけが共有されて、うまく行かない…ということになりそうである。
話は変わるが、本書の最後に「おわりに」として本書への「辛口の批評」が述べられているが、そこで述べられている「文系・理系」の探究の違いという問題は大きな宿題だろう。
本書の問題というよりは、「高校での探究」が「大学での学問」とは違うので、単純に専門性を深めればよいというものではないし、高校のリソースの問題もあるので、難しいところである。探究の手続きとして教員がやりやすいのはおそらく理系的な実験や観察を含むものであるけど、使えるリソースを考えると資料を調べたり、発表をまとめたりするならば、文系に寄った方が一年という単位では成果は得られやすいような気はする。
まあ…このあたりのバランスをどう考えるかは、学校としてのあり方をどうするかということと、今後の宿題ですね…。
この本でうまくやれそうならば
この本を読んで「うまくやれそうだ」という手応えを得られたのであれば、STEAMライブラリーを活用することをおすすめしたい。
本書と同じで、「ワークシート」+「授業案」が大量に集められているので、本書をうまく使えるのであれば、STEAMライブラリーを使うとよいだろう。