ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

自己評価にたどり着くために

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生徒を送り出す学年を持つときには、生徒に確かな「評価の目」を持って卒業してもらいたいものだといつも思う。

生徒の学習自己評価は

最近は生徒自身が自分の学習を振り返り、評価するという活動の重要性が言われている。高校に観点別評価が導入されることも、生徒の自己調整学習が重視されるという側面があるという。

新学習指導要領に対応した学習評価 (高等学校編)

動画で見たほうが分かりやすいかも。

www.nits.go.jp

この動画に限らず、教職員支援機構が「新学習指導要領編(校内研修シリーズ)」をかなり分かりやすく資料を出しているので、最低限、このあたりはちゃんと勉強してから校内のカリキュラムの議論をやりましょう…(涙)。

ま、今回はこのあたりは本論ではないので紹介だけにしておこう。

肝心の生徒の「自己評価」がどんなものかというと、自分の肌感覚だと、「必要以上に辛辣になりやすい」という印象がある。

自分の書いた作品について、評価の観点を与えて自己評価をしてもらうと、授業者の自分がする評価よりも、かなり辛辣な評価を自分にしがちである。

その評価が前向きに厳しいという感じよりは、授業者や他の同級生の目を気にして、予防線のように厳しくつける…という印象がある。

ルーブリックを使えるか

自己評価といえばルーブリック。

さて、それなりに手間を掛けて作ったルーブリックと実際の生徒作品をアンカー作品として手渡して、自分の作品をチェックしてもらう。ルーブリックを使う評価の基本的なやりかたですよね。

「逆向き設計」で確かな学力を保障する

「逆向き設計」で確かな学力を保障する

 

……これなら、安定して適切な評価ができそう……思うじゃないですか

やっぱり自体はあまり改善しない。作りこんであるルーブリックと分かりやすいアンカー作品があっても、自分の評価を辛くつけやすいのである。そして、その評価の理由を尋ねても、必要以上に些事にこだわって、せっかく全体的な印象や良さを問うているのに、そういうことに目が行かなくなりがちなのである。

作り込んだルーブリックが一つ一つの意味する言葉が難しいのかもしれないが、「○○が出来ている」形式のチェックリストをルーブリックと称して渡すのはあまり生産的とは思えない。

手間をかけるしかない

では、ルーブリックを諦めるべきかといえば、そういう話ではないだろう。ある程度の質の担保や目指すべきゴールの共有などを行っていくときに、きちんと作ったルーブリックは強力なツールになる。

いい加減な使い方をして、学力を保証できないことは望ましくないだろう。

基本的に、色々なことを色々な教科が試している今の学校現場では、ツールは多く入ってくるが、一つの手法を反復して練習することが軽くなりがちである。

そもそも、ツールの習熟のために時間を割くことが難しい状況もある。

しかし、学ぶ力を考えるときに、「きちんと自己評価できること」は、学ぶことそのものと言ってよいはずだ。それをきちんと鍛えられないままに、卒業させるのは無責任というものだろう。

ルーブリックをきちんと使いこなせることを目指すのであれば、ルーブリックを使うことに時間をもっと割かなければいけないのだ。

評価を生徒と作る

パフォーマンス評価やルーブリックの本にではよく指摘されているが、生徒と評価基準づくりを行うことがかなり学びを考える上では重要である。

実際に生徒と基準づくりに取り組むと、生徒の作品を見る目の確かさに気付かされるのである。

当然ながら、ルーブリックを作るために、ルーブリックづくりの手順に従って、作品を読み、評価を行い、評価のズレを対話で話し合ってすり合わせていき、それぞれの段階の特徴語を記述していく、そしてその基準を使って自分の作品を評価し直す……ということをやると授業時間がごっそりと持っていかれる。

一つの作品についてやるだけでも3~4時間は持っていかれるので、考査までの授業数ってせいぜい10~15時間前後であることを考えると、莫大な時間がかかるという感覚なのである。

腹を決めて取り組む

時間がかかるからやらなくていい?入試の解説でもしたほうが費用対効果は高い?生徒のニーズはもっと分かりやすいことにある?

確かにその通りかもしれない。

でも、手間と時間をかける理由はそもそもどこにあるのでしたっけ?卒業した後も長く自分の力として使えるものとして、自己評価を力を身に着けて欲しいわけなのだから、色々なものとを天秤にかけて、自己評価することを教えたいと思うのであれば、腹を決めて取り組むべきなのである。

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