最近は色々なところでルーブリック、ルーブリックと話題になっている。この年度末に自分も割と酷いルーブリックを見せられたということもあって、ちょっと最近の粗製乱造は危ないななどと思っているのです。
かつて書いたこと
このブログでも、自分も必要に迫られてルーブリックを勉強してきたので、その一部を備忘録的に書いてきた。
参考書籍リストは次の記事でだいたいOKだと思っている。
教育目標の設計ということで、タキソノミーの話なんかも関連してくるので、やっぱりちょっと自分には手に余っている分野でもある。
個人的にはマルザーノの話は参考にしながら、授業設計をよく考えている。
これらの記事でも毎回のように指摘しているのだけど、「ルーブリックはチェックリストではない」ということがなかなか理解されにくいようである。
値踏みを狙いとしない
何がチェックリストと何がルーブリックなのかという境目を問われると自分の今の知識では返答に窮する。チェックリストに近いようなルーブリックでも良い場合もあるし、逆に長々と記述語を書いても内実はチェックリストだったりすることも多くある。
一つ参考になるのは、経産省の(文科省ではないのに色々と…)「未来の教室」関連でこんな資料がある。
このページの「「未来の教室」コモン・ルーブリック」が分かりやすいように思う。
(https://www.learning-innovation.go.jp/existing/doc202008/steam2020-common-rubric.pdfより。2021/03/06 20:20確認)
「本来は事後的に作成する」「複数の採点者の点数とその根拠のすりあわせが必要」「再検討されるべきもの」「学習者と共有され、学習者自身の評価行為への参加を促す」などの記述が重要だろう。
たぶん、今の教室で勘違いされて共有されている「ルーブリックもどき」が致命的に外しているのが「根拠のすりあわせ」や「学習者の参加」という点だろうと思う。
ABCのチェックリストだろうと記述語でのリストだろうと、生徒自身が書いてある内容を理解して、自分自身の学習をふり返り、改善につなげていくというイメージが持つことが出来ないのであれば、それはおそらくルーブリックとは呼べないだろう。
また、そもそも何のためにルーブリックを作るのかという問題も大きい。プレゼンすれば何でもかんでもルーブリックで評価する…というものでもなかろう。
そもそも、「こういう姿を期待したい」という願いがないのに、ルーブリックは作れないだろうに、何となく「パフォーマンスさせたからルーブリックを使う」みたいな思考停止があまりよくない。
いや、そもそもとして、なぜ「そのパフォーマンスをさせたいのか」ということに狙いがない場合も多いので……色々と課題は大きいだろう。
参考文献は増えている
自分が大学院生のところは
この原著にあたるような英語論文をムリして読んでいた記憶があるが、今はこうしてバッチリな訳書がある。それどころか去年には
訳書になっても読むのが難しい逆向き設計論の補助線となる一冊が発売されているのである。これが日本の現場の実践の視点で書かれているので非常に分かりやすいのである。そしてまともに読もうと思うと非常にしんどいウィキンズとマクタイのUbDの要点をしっかり解説してくれるのだから大助かりだ。
そしてより実践的なルーブリックとして
この本に各教科の例なども出てきているので、イメージが持ちやすい時代になったものです。
もちろん、以前から発売されている西岡先生のご著書などは絶対に外せない。
(個人的に、この四冊が自分が授業でルーブリックを使うときの柱です)
パフォーマンス評価で生徒の「資質・能力」を育てる―学ぶ力を育てる新たな授業とカリキュラム
- 作者:西岡 加名恵,永井 正人,前野 正博,田中 容子,京都府立園部高等学校・附属中学校
- 発売日: 2017/02/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
じゃあ、逆に意地悪なことを言えば、これだけ「ルーブリックはチェックリストと違うよ」ということがこれほど簡単にアクセス出来る時代になったのに、「なぜ、ちょっと調べてみてからやってみようとならないのか」と思うのである。
余裕がない……のも分かるけど、本を買わなくてもインターネットで検索するだけでもアクセス出来ることが増えているので……。
ぜひ、2021年にはルーブリックとチェックリストの差が意識され、ルーブリックが教員の都合ではなくて、子どもの学びのエンジンになるものとしての理解が広まると良いなあ。