夏休みに入って自分で時間をコントロール出来る余地が大きい。
そのため、必要な仕事は進めつつも、コツコツと色々なことをやっています。そんな中、書店で手に取ってしまった本がこれ。
独学というキーワードを切り口に14人の論者が様々な思いを語ってくれています。
孤独ではないというメッセージ
独学は字の如く「独りで学ぶ」という行為である。
基本的にトレーニングされない限り、人間は自然と学びに向かうことは難しい。日常的な生活を離れて、今すぐに役に立つような具体を離れて抽象的で気の長い学びに向かうことは非常に難しい。
独学がくじけやすい理由の一つが、自分の学びの意味が行方不明になってしまうことである。自分一人でやっていると、何に向かっているのか、何が正しいのか、そういうことが見えなくなる。
要するに「学ぶことの孤独」に耐えられなくなり、孤独を感じることのない日常に戻りたくなるのである。
そういう厳しい営みである「独学」に対して、本書のコンセプトは「あとがき」で明確に述べられている。
それぞれが自主的に学びながら、全員が共通の営みに参画しているような不思議な一体感。まさしく、独学者は孤独ではないのです。
(『独学の教室』P.237より)
本書を手に取っても、独学するためのノウハウとしてはほとんと役に立たない。
ただ、書かれていることは「独学のたのしみ」である。
語られる言葉の軽妙さに釣られて、学ぶことの楽しみに共感するのであるが、一方で、その言葉が出てくるまでの気の遠くなるような学びのくり返しが察せられる。
この独学の孤独とたのしみをめぐっては、「ほぼ日刊イトイ新聞」の「Only is not Lonely」という言葉についてのコラムが思い出される。
「ひとりぼっち」なんだけれど、
それは否定的な「ひとりぼっち」じゃない。
孤独なんだけれど、孤独じゃない。(2022/08/09確認)
自分の居る場所を自分を離れて俯瞰すると、体感されることなのかもしれない。
学ぶとは?
個人的に良かったのは京都精華大前学長のウスビ・サコさんと冒険家の角幡唯介さんの文章が良かったです。
ここでは自分の生まれた国を離れて、常に異なる環境で学んできたウスビ・サコさんの語る、「学ぶこと」の一部を紹介しよう。
私は、いつも学生たちに「勉強は、教室ではできないよ」と言っています。(中略)先生たちは長年その分野を研究して、何かを究めた人ではあるけれども、やはり一側面でしか物事を語れません。それをどう受け止め、どう深めるかは、学ぶ人自身の問題なんです。学校で先生が与えているのは、あくまで一つの知識にすぎない。それを情報化することは「独学」の部分なんですね。
(P.55)
ギリシャの哲学者・ソクラテスが実践していたように、知を育てるうえで基本的な技法の一つが「ダイアローグ」です。つまり「対話」が生まれるところで人間関係が作られて、個人が成長していく。
(P.58)
「独学」のススメともいうべき本書であるが、学ぶことを進めていくと「対話」という形であらゆる他者が必要になるということを分かりやすく伝えてくれているように思う。
「Only is not Lonely」にも通じた感覚であるように思う。
そして、学び続けるときに自分がくじけそうになるのであれば、何度も自分の「対話」している相手を思い出すべきなのだろうと感じる。