新しい単元として「短歌ディベート」を始めました。
流れとしては今までの短歌の創作の発展編です。「話すこと・聞くこと」へと領域を変えての学習となるのです。
いきなりディベートをやれといっても上手くいかないので、はじめにロールプレイングでディベートを体験してもらいました。
そもそも「短歌ディベート」とは?
知らない人もいるので紹介しておくと、「短歌ディベート」とは
で行われている、短歌のPR合戦のことを指しています。
簡単に言えば、高校生版「歌会」ともいうべき言語活動です。
実際の高校生のディベートの様子は、YouTubeにもアップロードされています。
これを見てもらうと分かるのですが「短歌甲子園」自体は野球に模して行っているのですが、教室でやるのであれば別に野球に模す必要はないので(笑)、「ディベート」として銘打って取り入れています。
なお、このアイデアは次の本の実践から得ています。

高等学校国語科 授業実践報告集 現代文編II: 評論・取り組み編
- 作者: 全国高等学校国語教育研究連合会,明治書院
- 出版社/メーカー: 明治書院
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生徒はいきなり討論できるのか
これは注意しておきたいところだけれども、生徒に「勉強だからディベートを頑張って準備しろ」といっても準備できません。
大抵は時間ばかり浪費して、原稿も満足に作成できなかったり質疑応答が沈黙で終わってしまったりと上手くいきません。
そもそも、ディベートに限らず、ある程度の形式が定まった討論という形式に子どもは慣れていないので、話している間にだんだんと討論が話し合いになり、最後には雑談になってしまいます。
だから、もしちゃんと「雑談」以上の「話すこと」を学ばせたいというのであれば、その話し合いの活動にいたるよりも先にきちんと形式に慣れさせておくことは重要です。
形式を体験するためのロールプレイング
そこで、話し合いの形式に慣れてもらうために自分はロールプレイングという手段を取ります。
つまり、教員が用意した「台本」を生徒が役割を分担して演じてみるという作業を、原稿を作ったり話し合いを始めたりする前に取り組ませるのです。
ロールプレイングのメリットとしては以下の点を考えています。
- 実際に、討論の流れを体験できるので、文章で説明されるよりも実際の流れが理解しやすい。
- 役割になりきってやり取りをすることで、実際に討論をする前に相互の人間関係をほぐすことができる。安心して話せるという雰囲気を作るのに役立つ。
- 生徒の原稿づくりや発表の際の手本となり、生徒の活動への介入の割合を下げることができる。
- 生徒に対して「こんな観点を話し合いをしてほしいなぁ」ということや「こんな言葉づかいをしてほしいなぁ」ということなど教員の考える指導事項を直接指示しなくても意識させられる。
- 生徒が楽しい(←重要!!)
まあ、色々とメリットは感じるのですが、自分が一番大切だと思っているのは「5.生徒が楽しい」ということです。
どうしても、教室の中の「ディベート」や「討論」はかったるくていい加減なやっつけ仕事になってしまいがちです。
その大きな原因としては、そもそも生徒にとってその活動が楽しくないということが大きいように感じています。厳密にいうのであれば、活動が楽しくないと思い込んでいる部分が大きいように感じる。なぜなら、子どもにとって国語の授業で行う活動の多くは初めての体験であり、初めて体験することは精神的に抵抗感や負担感は大きいからだ。
だからこそ、初めにロールプレイングでその言語活動を体験させることで、実はその活動が自分たちにとって「楽しく」て「必要である」ということを体験させることが非常に効果的なのです。
ほかの手段と比較して
ほかにも言語活動を生徒に紹介する方法はいくつかある。
たとえば、短歌甲子園だと上で紹介した動画を生徒に見せるという手もある。
しかし、見てもらえれば分かるけど、というかほとんど上の動画を見ていないだろうと読者に喧嘩売るけど、動画って見ているようで見ていないし、意外と見るのはかったるい。
また、動画はどこまでいっても他人のやっている活動であって、自分たちの活動としては参加してこない。また、どこを見るべきかということも意外と伝わらない。
そもそも動画を見るという活動自体が、一つの言語活動として高度なことであることを軽く見ない方がいい。
次に「書面で説明する」という手も考えられるが、これもやはり難易度が高い。言葉から活動をイメージすることの難しさは、我々が指導案を読んでも自分がその授業を再現できないのと同じである。
気軽にはできないけど活動のハードルは下げてくれる
ロールプレイングをやるためには、狙いをはっきりとした台本を用意をしたり演じやすい台本を用意したりと準備する側の手間はかなり大きい。
つけたい力を明確にして台本を用意しないと、ロールプレイングをさせる効果が「楽しい」だけになってしまう。もちろん、それだけでも十分だとも思うが、せっかくならば生徒にとってのモデルにしてあげたい。
話すこと自体が負担の大きい作業であるし、その前提としてお互いに安心して声を出せる場であることが必要だ。だから、ロールプレイングを通して、自分の言葉が相手に受け止められるという感覚を持たせて、話し合いに安心感を持ってもらいたい。
話すことは手軽に活動させられると思われがちだ。でも、失敗するとトラウマを与えるのも話すことだ。
だから、丁寧な準備をしてあげてほしいなぁと思う。