学期初めにこれまでの振り返りとこれからの展望を生徒にアンケートしている。
その中で「どんな授業をやりたいですか。どんな授業を望みますか」という項目を書いてもらっている。まあ、記名式のアンケートなので半分くらいはお世辞と考えて読んでいるけど、たまに面白い意見もある。
特徴的な意見をちょっとざっくりとまとめて紹介します。
案外、本を読む時間が欲しい?
リーディング・ワークショップをやることは二学期から予告していたということもあるけど、「自由に本を読む時間が欲しい」という意見は思ったよりも多かった。
- 本を読む時間が欲しい…
- 図書室で授業してほしい
- 色々な本を調べながら自由に意見を書きたい
失礼な話だけど「え、この子が本を読むの?」と思うような普段の生活をしている生徒も図書室を使いたいということを書いてきている。
逆に言えば、普段の生活で本を読むということの優先度が低いからこそ、授業で時間を作ってもらいたいということなのか?
意見を言ってみたいとは思うらしい
授業をやっておいてなんだけど「意見を持つ」ということを強要されるのってきついし面白いことじゃないといつでも授業計画を立てるときに悩んでいるのだが、思ったよりも生徒から「自分の意見を言いたい」というような旨のコメントは多かった。
- 一人一人が自由に意見を持てる授業
- 色々なメディアを読み比べて自分の好きなものを選んでみたい
- ジグソー法のようにバラバラの意見が生かせるような授業
- 黒板を使って全体で討論をしてみたい
- もう少し疑問点の解説を待ってほしい。まだ考えられる。
これらの意見は、後述するけど「普通の」授業を望む生徒とはやはりぶつかるんだよなぁと思う。というよりも先に書いた通り、自分自身が「意見を持て」と強要されることがやっぱりしんどい。でも、その一方で「意見を持つ」という訓練をしなければいけないだろうという発想もあるわけで、そのはざまに落ち込むことが苦しい。
抽象的に言うのであれば真正の課題を設定せよということなんだろうけど、高校ともなると生活の文脈のみを真正の課題とも言っていられないという発想もあるけど、生徒の方の成長度がああああああああああ(以下略)
書くことをめぐる個人差
意見が大きく割れたなぁと思うのが「書くこと」に対するコメントだ。
肯定的な意見としては
- 二学期にやったようにミニレポートを書いて交流したい
- たくさん添削をしてほしい
- 「女か虎か」の続きを考えるのが楽しかったから、また物語を書いてみたい
- 今のように毎回の授業でミニレポートを書くのを続けたい
- 小論文を書いてみたい
- 先生の意見と比べてみたい
このような意見が出る背景としては、課題として与えたテーマがその生徒に大きく引っかかる何かがあったのだろうなぁと思う。書いてきた子どもたちとテーマを照らし合わせるとやはり普段の興味と深く結びついているなぁという感覚はある。
一つのテーマで全員の興味に当てはまればそれはそれでいいことなのだろうけど、そうも簡単にはいかない。
- 何を書いたらいいかわからないときにもう少しヒントが欲しい。
- もっと板書を書いてほしい。
- 鉛筆を持たないで済むような授業がいい。
このようなネガティブなコメントがでる理由としては、やはり課題になじみがなかったり生徒には魅力に映らなかったりということの側面は大きいだろうなあと思う。一方で、魅力的な課題を全員に設定できるのかという迷いもあるんだが……大村はまなら「できる」というんだろうか。…いいそうだなぁ。
普通の授業を望む声
やっぱり無視できないこととして「普通の」授業を望む生徒は少なからずいる。
自分の授業は別に「アクティブ・ラーニングの授業をしています!」なんて看板を掲げる気はないが*1、結果的に自分が一斉に何かを講義するということはほとんどしない。
もちろん、「国語総合」という科目の性質を考えての対応だし、学年が上がれば学校の事情を考えても講義型になる部分もあるんだけど、今年一年は基礎と興味を固める時期だと思って授業を進めている。だが、それでもやっぱり色々なことが気になる生徒もいる。
- 普通の授業をして欲しい。解説は分かるけど考えるのはキツイ。
- 今の授業で受験に対応できるのか不安だ。
- 来年、教科担任が変わるのにこれで大丈夫なの?
- 先生がさぼりすぎだと思う。
- 先生が教えたほうが早いしもっとたくさんの問題解けるのでは?
どれもその通りだと思う。自分としては根拠をもって計画している授業なので、この手の意見が教員から降ってきたのであれば、あらゆる根拠を挙げて反論するのだけど、授業を実際に受けて、今後、自分でさまざまな課題を引き受けていかないといけない生徒からすれば、反論して意見を押し込めるような対応をするのは理不尽だと思うので、曖昧な対応になりそう…。
「先生がさぼりすぎ」というのは書いてきた生徒との関係からしても、半分くらい冗談で書いているのは分かっているのですが、そういうコメントが冗談として成り立つのは、自分がどれだけ授業で何もしていないかの現れですね(笑)本当に、最近は授業にいるだけで、たまに茶々を入れる人…くらいな扱いなんです(笑)
まあ…授業に入るまでの段取りです。走り出したら声をかけないというのが最近の方針です。
しかし、受験についての意見は少なからずあるのは頭が痛い。
- 模試の解説授業をして欲しい。
- センターでよくでるテーマを紹介してほしい。
- 記述問題のコツを教えて欲しい。
- 授業で記述の添削を黒板を使って見せて欲しい。
- 国立の記述問題を練習させてほしい。
生徒のニーズとして誠実に受け止めたいとは思うけど、ある意味で贅沢に時間を使えること時期にテクニカルな話に走ることはしたくないのだよなぁ……。もちろん、入試問題で、面白いことは工夫次第でいくらでもやれるのだろうけど、入試問題というエサで釣らずに、「自分で対象との関わり方を決める」という態度も示しておきたいとは思う。入試で釣るのは簡単なんだって……。
全部はできないけど誠実に答えていきたい
生徒から意見を聞いたものの、そのすべての意見に応えるような授業はやはりできない。結局、最後に「これをやる」「こうやってやる」というように決めるのは授業者である自分の責任だ。生徒に意見を聞いてもそれを言い訳にして授業を決めたということの責任を逃れる気はない。
やれることとしては数多くはないけど、丁寧に授業をしていきたいなぁとは思う。
おまけ「俺に何を望むのだ!?」シリーズ
生徒からの回答で「!?」となったものがいくつかあったので紹介
- 体を使う授業
体育の授業でどうぞ。
- うぐぁーとならない授業
…どういうこと?
- トビキリ全開楽しい授業
Ah もう 子どもらも辛いよね!…ゴ・メン
- 話していると自然に(ギャグではなく)笑いが生まれるような授業
ギャグばっかり言っててごめんさい。
- 楽しくてドキドキして退屈しないでラクして大学に受かる授業
ちょっと欲張りすぎじゃありませんか!
- 初めから終わりまで先生が一言もしゃべらないで終わる授業
そんなに俺うるさいですか!?
- 喧嘩しないでください。
約束はできない。
- 家で勉強しようと思わない授業
これは一見すると「!?」と思いましたが、教室でみんなといるからできる勉強がしたいそうです。
何も期待していません。
これも「!?」となったが「自力でやるのが大切なんでしょ?」ということをわかっているよという意図の発言だそうです。
まあ、頑張ってください。
はい、頑張ります。
*1:一方で「言語活動の充実」は意識するけど。