休みで時間があるからこそ普段は自分では手に取らない本を手に取ろうという企画。
最近、はてなブログ界隈で何度か目にしたので、普段であれば自分からは手に取らないであろうこの手の本を手に取ってみた。
taka-ichi-sensei.hatenablog.com
正直、この手の本は「安かろう悪かろう」というか「お手軽さのために本質を欠いている」というかそんなイメージがあったので、自分ではあまり進んで読もうとは思わない。直接、研究書を読んだほうが早い…なーんて傲慢なことも思ったりする訳です。
でも、食わず嫌いしていると見落とすこともあるので、せっかくの機会なので購入して読んでみることにした。
欲張りもせず、慎ましく
この手の本を読んでよくうんざりさせられるのは、「一冊でなんでもかんでも解決できる」かのように言い出すことだ。しかも、その説明の仕方が色々なことをすっ飛ばしていたりそれによって起こる問題を見ないふりしていたりと、自分たちの方法の凄さを恥ずかし気もなく延々と書いてあることが多いからだ。まあ、自称教育学者もいい加減なことをいうくらいだから、いわんやこの手の本をや。
しかし、今回紹介する『まんがで知る教師の学び』シリーズは、そのようないい加減さはなかった。
内容としては、「まんが」ということもあるので決して多くはないものの、「少ない内容についてできるだけわかりやすく」という姿勢がよく分かります。
漫画の中で登場人物たちの対話を中心に話が進んでいきますが、その内容もできるだけケーススタディとして分かりやすく語られています。また、それぞれの内容の主要な考え方については参考文献を注釈に載せており、興味がある人がきちんと原典に当たって勉強できるようにという配慮がされている。
「教師こそがアクティブ・ラーナーになる!」というメッセージが何度も出てきている本シリーズらしく、この「まんが」をスタートに色々なことを勉強してもらいたいという著者の声が聞こえてくるようです。
指導法の議論ではなくマネジメントを考える
このシリーズの面白いところは、積極的にビジネス書が紹介され、ドラッカーなどの「マネジメント」の考え方などを紹介しつつ「どうやって学校という場所で、教員が成長していき、学校という組織全体が成長していくか」ということ(本文に言及はないけど、センゲの『学習する学校――子ども・教員・親・地域で未来の学びを創造する』が参考文献にあるあたりに「ニヤリ」としました)が論じられていることだ。
つまり、「一人の教員」の成長ということと「学校という組織」の成長ということが両輪となって実現されることで、より「子どもを幸せにする教育」が実現できるというメッセージを感じるのだ。
教員の世界は、油断すると非常に孤独だ。基本的に授業についての責任は教員個人が負っていることが多いし、お互いの授業や考え方については意外と「不干渉」であることが多い。しかし、例えば次のようなビジネス記事を読むと、そのような教員の慣習が「異様だ」ということに気づく。
「摩擦が生まれる」はネガティブな比喩だけど、摩擦がないコミュニケーションがあまりにも多すぎる。ろくに吟味しないでその人への好意で肯定したり否定したり、事を波立てないために言葉を飲み込んだり、あるいは言われたことを黙々とやっていればいい......というスタンスであったり。
そんなものはコミュニケーションが上手いのではなく、良い仕事をするつもりがないだけだ。チームメンバーへの敬意がまったく感じられないと俺は思う。
いやはや…教員には耳が痛い言葉だ。
学校という場所の停滞感を打破するための一つの可能性として、「ビジョン」を教員同士で共有することがあるのだろうけど、そのために必要な「対話」や「お互いを知り合う」ということを始めることの重要性を気づかせてくれるという意味で、今回紹介する二冊は優れていると言える。
新卒とビジネスと縁遠い教員におすすめ
本シリーズには様々な立場や年代の先生が出てくる。実際の職員室のような雰囲気を意識しているのだろう。
だからこそ、いろんな立場の人が読んでも、それなりに共感できると思う。
個人的には、この四月から教員として働く人が読むのによい一冊だと思うし、また、教員として働いているがドラッカーなどのビジネス書を読んだことがないという人が読んでみるとよいのではないかと感じる。
漫画だけに読み流せば2時間もあれば2冊を読み切ることができます。お手軽に新学期始まる前に読んでみてはいかがでしょうか。