ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

【書評】『まんがで知る未来への学び』でスタートに戻る

 

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出版ラッシュシリーズの一冊。まんがなのでサクサクと読めます。

まんがで知る未来への学び――これからの社会をつくる学習者たち

まんがで知る未来への学び――これからの社会をつくる学習者たち

 

以前のシリーズも出来が良かったが、今回の本もやはり読みごたえがあった。タイトルが微妙に変更になっている意図もよく分かる内容であった。

学習指導要領の総則から始めよう

この本のコンセプトは帯に記されている言葉に象徴される。

教育改革とは何か?

我々は問題意識を共有しているか!?

「社会に開かれた教育課程」だとか「資質・能力」だとかだいぶ人口に膾炙した感じはあるが、その内実は決して足並みがそろっていない。

結局、いつも話題になることは学校の中も外も「入試がどう変わるか」ということや「新しいことを何かやらなければならない」」ということなど、対処療法的な観点ばかりである。

だからこそ、上の引用文のような問題意識から書かれている本書が示唆することは多い。

(新しい学習指導要領の)中核となる考え方は、「よりよい学校教育を通してよりよい社会を創る」という「社会に開かれた教育課程」です。(中略)しかし、実現するためには学校教育現場の努力だけでは困難であり、多くの人々の理解と協力が必要だと考えています。

そこで、学習指導要領とその基となった中央教育審議会答申をベースにし、自分なりの解釈でストーリーを作り、学校関係者以外の方にも読んでいただこうと考えて書いたものが本書です。(P.4)

とあるように、今回の教育改革が散々に「内容の改革ではない」「戦後最大の改革だ」などと言われる点をかみ砕いて解説する内容となっている。

筆者としては「学校関係者の方以外にも」と書いてあるものの、学校関係者にとっても全体像の見えにくい答申などをかみ砕いて要領よく把握できる一冊になっているので、目を通す意義はあるだろう。実際問題、よほど趣味でなければ答申を全部読むのは骨が折れるわけである。

社会の変化の一面から

本書のストーリーとしては、「地方の過疎地域」と学校の関係が中心に進んでいきます。

内容については実際に読んでもらいたいところであるが、地域の課題が子ども、大人、それぞれにとっての自分の課題として受け止められていくということ、その過程で必要となる学びの姿とは何か、ということが説明されていく。

人口が減っていく地域、足並みのそろわない人々など、実際にどこかで誰かが直面している問題に感じられる。

本書の中で起こった出来事は些細なことでしかなく、根本的な問題解決がされないままに本書は終わってしまう。そして今までのシリーズとは異なって、最後が非常に……。

本書の終わりからその先は、我々の問題なのである。

教育観を鍛えていく時代のために

根本的に、これからの激動の時代は、教育観を鍛え直し、自分の中に持って日々の実践に当たるしかない。色々な価値観が露骨に表れる時代である。どうやって、様々なステークホルダーのいる中で、自分の教育が正当なものであると実践しうるのか……。

好き勝手な議論から段々と収斂化していく時期のようにも思う。移行期間が始まり、いよいよ実施されていく時期なのである。

その一歩手前に、問題意識の共有から始めよう。そのときに、本書は示唆が多い。

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